読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

五人の恋人への決別が心地よい「バイバイ、ブラックバード」(伊坂幸太郎著/2010年刊)

2013-08-18 17:37:44 | 本;小説一般

<主な登場人物>

星野一彦:30歳前後。短い髪に、高い鼻、目と耳が大きく、整っているとは言いがたいものの、個性はある。

繭美:26歳。身長190cm体重200キロ、体型はアブドラ・ザ・ブッチャーそっくりで金髪のハーフの女性。凶悪で粗暴で喋れば全ての人に毒を吐き散らす。

 

<一彦が別れを告げる女性たち>

廣瀬あかり、霜月りさ子(銀行員、シングルマザー)、如月ユミ(秋田出身、ロープ愛好家)、神田那美子(30歳、税理士事務所勤務、フェルミ定数を駆使)、有須睦子(20代後半、女優)

 

本作は太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」のオマージュ作品とのこと。「何人もの女性と同時に付き合っていた男が、その関係を清算するために、全く恋愛関係のなかった女性の協力を得て、一人ひとりを訪ねて歩く」ところが踏襲されているそう。

 

本書で、繭美にマツコ・デラックスさんを重ねて読み進めた人は少なくないと思います。そんな強烈なキャラに、「誰かに声をかけて、助けたりしてな、で、自分の価値をどうにか維持してほっとしたいんだよ」と言い切られる一彦。

 

~彼は単に、だれとでも調和的に、仲良くするのが好きなのであり、五股をかけているのも「誰か一人を選ぶつもりなんてなかった」、「どの人と一緒にいるのも楽しかった」というへなちょこな理由によるものでしかない~「憎めない感じ」、全ての行動に計算がない、それが一彦。

 

本書は、一彦と繭美が別れを告げる恋人のもとを訪れ、各章の冒頭部にその元恋人からの「あれも嘘だったということなのね」という台詞が組み込まれたテンプレート作品。「死神の精度」にも使われていますね。

 

ところで、股に掛けるとは、本来は、「諸方を歩き回る、各地を飛び歩く」こと。このときの股は股間ではなく、木から枝別れした部分をだそう。「どちらが幹になるかは、太くなった方が通常幹と呼ばれるので、別れた時点では決まっていません。もちろん枝から枝分かれした部分も『股』と言う由。二股をかける、なんて誰が最初に使ったんでしょうね。

そして、タイトルに使われる「ブラックバード」はスズメ目ツグミ科クロウタドリのことのよう。但し、米語で「Blackbird」といえばムクドリモドキを指すとのこと。一般に幸福の青い鳥(bluebird)に対して、不幸の黒い鳥(blackbird)。

 

個人的には「Blackbird」といえば、ポール・マッカートニーの曲が思い起こされます。この曲もクロウタドリだそう。

 

~その歌詞の直接的な内容は、女性を「鳥」になぞらえて、「傷ついた翼のまま、夜の闇の中にある光を目指して飛んでゆく」などと描写した内容であり、ポール本人は「黒人女性の人権擁護や解放について歌った内容」と言っている。~(ウィキペディア)

 

また、ジャズのスタンダードにGene Austinの「Bye Bye Blackbird」(1926)があり、この曲では「売春婦稼業から足を洗って、母親のもとに帰る」ことを唄っているとか。

 

Bye Bye Blackbird(バイ・バイ・ブラックバード)、歌詞と日本語訳

http://camoq.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/bye-bye-blackbi.html



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