わたしの名前はミー。
福岡で暮らすようになってから3度目の夏です。
以前わたしは熊本で何不自由なく幸せに暮らしていました。
ところがある日、大変なことが起きました。
ご主人がわたしを置きざりにして引っ越してしまったのです。
それからずっと、わたしはアパートの玄関先に座りご主人を待ち続けました。
きっと帰って来ると信じて。
1年ほどたった時、アパートに知らない人が引っ越して来ました。
その時分かったのです。ご主人はもう帰ってこない…
わたしは住み慣れた家を離れて近所のゴミ置き場に移り住みました。
一人で生きていかなければなりません。
いきさつを知る近所の人たちがかわいがってくれました。
誰とでも仲良くなれるわたしに、みなが声をかけてくれます。
「ミーちゃん元気?」「ミーちゃんお腹すいてない?」
わたしはそれまで家の中から1歩も出たことがなかったので
自由きままなこの新しい生活がすっかり気に入りました。
自慢のキレイな毛はみすぼらしくなってしまいましたが
近所の殿方と仲良くなって2度ほど子供も産みました。
我ながら上手に育てたんですよ。
ところがなんということでしょう!
かわいい子供たちは軒並み捕まり里子に出され
わたしは無理やり避妊手術をされてしまったのです。
それが今のご主人でした。
その後、車で100kmも離れた福岡という町に連れて来られ
昔のようにまた外に出られない毎日が始まりました。
妹もできました。
ここだけの話・・・わたしは妹だと思っていますが
彼女はわたしを母親代わりと思っているようです。
時々、以前の自由な生活が懐かしくなります。
時間ごとに移り変わる空の色
風が運んでくる季節の香り・・・
その中で走り回ることはもうできなくなりました。
幸せか?・・・ですって?
ご主人はよく言ってますよ。
「ミーちゃんとは不思議なご縁だね」って。
わたしも、さまざまな体験をしてきましたが
いろんな縁があったこと自体が
幸せの条件かもしれないな・・・と思っています。
ほら、毛並もすっかり元通り。