京鹿子二人娘道成寺
道行より鐘入りまで
歌舞伎座二月夜の部は坂東玉三郎・尾上菊之助という美しい女形二人が「娘道成寺」を踊る華麗な舞台で、2004年1月の好評に応えての再演です。
美しい僧・安珍に恋した清姫が、その執心から大蛇となり、道成寺の鐘に逃げ、隠れた安珍を鐘の上から巻きつき焼き殺すと言う、凄まじい『安珍清姫伝説』をルーツにもつ「道成寺もの」です。歌舞伎の
『京鹿子娘道成寺』は、女性のさまざまな表情を踊り分ける女形随一の華やかな舞踏として定着しています。
美しい二人の女形の競演を趣向とする本作はつややかさも一入で、
円熟の美貌・玉三郎と
時分の花・菊之助、二人の白拍子花子が熱望に応えて期待に違わぬ評判の舞台となりました。
私は歌舞伎が大好きですが、どちらかと言えば、しっとりした関西の世話物より、ど派手な江戸歌舞伎の荒事のほうが好きです。いつも三階席から
耳で見るイヤホンガイドと双眼鏡を手に観劇しています。
玉三郎と菊之助の白拍子がどちらがどちらか分からなくなるほどで、着物の美しさは元より人形のようで、しかも艶めかしい女形二人の息の合った舞踏に酔わされた貴重な一幕でありました。今夜一人での観劇が本当にもったいなかった想いです。こんな舞踏の一幕は外国のお客さまには、いちばん喜ばれる出し物でしょう。これこそ、一幕見席を利用するに打ってつけです。
きもので行きましょう・娘道成寺で「桜解禁」大久保信子(芝居茶屋かわら版)