歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ヤーコプス『バッハ/ロ短調ミサ』

2008年11月09日 | CD バッハ
Bach
Messe in h-moll
Martinpelto, Fink, Köhler, Prégardien, Görne, Selig
RIAS-Kammerchor
Akademie für Alte-Musik Berlin
René Jacobs
TKCC-15186

1992年録音。55分47秒/54分16秒。Deutsche Schallplatten。『ロ短調ミサ』はパロットで聴いていました。あれはあれですばらしい演奏なんですが、もうすこし普通のスタイルで演奏したものも聴いてみたくてヤーコプスを買いました。ヤーコプスのバッハはこれのほかには『モテット集』しか知らないんですが、どちらもじつに「標準的な」名演です。わたしはヤーコプスのヘンデルやモンテベルディはわざとらしくて好みに合わないのが多いんですが、この人のバッハはすんなり受け入れられます。解釈は穏当。やや遅めのテンポでじっくり聴かせるところが多いです。

ソロも合唱も万全。リアス室内合唱団はむかしからNHK-FMで耳にすることがありました。ベルリン・フィルとの『ロ短調ミサ』とか。近年ヤーコプスに呼ばれるようになって、古楽器オケとの仕事も増えてます。ヤーコプスの『モテット集』もリアス。

"Agnus Dei"はベルナルダ・フィンクが歌っています。この『ロ短調ミサ』のアニュス・デイは譜面がこってりした作りになってるんで、歌うときはあっさりめのほうがいいと思うんですが、フィンクはなかなかよろしいです。

南木佳士『阿弥陀堂だより』

2008年11月07日 | 本とか雑誌とか
森繁久弥と加藤道子の『日曜名作座』で聴いて、それで気に入った話だったので買った本です。有能な勤務医である妻が心の病を得、売れない作家である夫は退職した妻を連れて故郷の信州の谷中村に移り住む。その土地の風土と、そして人びととの出会いによって妻はしだいに回復していく。

都会生活で傷ついた人間が自然によって癒される話、と一言でまとめるとそうなってしまいますが、実際にはもっと奥行きのある作品になってます。回復途上の妻が治療に携わることになる難病に冒された若い娘・小百合ちゃんの初々しさもいいのですが、村の阿弥陀堂の堂守りとして暮すおうめ婆さんの存在感がすごい。信州の土にどっしりと根を張った、揺るぎのないみごとな生き方。

南木佳士は現に信州で勤務医をしながら小説を書いている人。あまり器用な作家ではなく実体験が創作の基盤になっているようです。誠実な作風は好感が持てます。

この小説は寺尾聰、樋口可南子、北林谷栄、小西真奈美で映画化されてそれで有名になりました。わたしは映画は見てないですが、おうめ婆さんはもう北林谷栄のイメージそのもの。

田辺聖子の車椅子

2008年11月06日 | メモいろいろ
3日の文化勲章の授与式で、田辺聖子さんが車椅子に乗って、みかどから勲章を手渡される写真がどこかの新聞に載っていました。でもあの車椅子は病院によく置いてある質実剛健なタイプのやつだったから、田辺さんが自分でふだん使っているのぢゃなくて、宮内庁で?貸してくれたんだと思います。あの車椅子を押していた人は宮内庁のお役人なんでしょうね。そういえば車椅子で文化勲章もらいに来た方はこれまでにもいましたね。そりゃ文化勲章ですからね、みんないい年だもの。式のあとにみんなで横一列に並んで座って撮った例の記念写真も見ました。授与式に出てきたのは、ついこの前ノーベル賞を受けて勲章をもらわれた益川さんと小林さん、小澤さん、田辺さん、古橋さん、キーンさん。田辺さんの左が小澤さんで、右隣が古橋さんなんですが、田辺さんは小柄で、古橋さんの半分くらいの大きさでした。