歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

キング『ヘンデル/ヨシュア』

2008年11月24日 | CD ヘンデル
Handel
Joshua
Kirkby, Bowman, Oliver, Ainsley, George
Choir of New College, Oxford
The King's consort
Robert King
CDA66461/2

1990年録音。65分19秒/58分53秒。Hyperion。ロバート・キングが録音したヘンデルのオラトリオ・シリーズの一作。これはおすすめです。強くお勧め。曲そのものはさほどの大作とは言えないけれどよくまとまっています。演奏は爽快かつ開放的。ソリストも揃い、合唱も出来がよく、目立つ金管をはじめとしてオケも文句なし。

この『ヨシュア』、1747年に書かれ、48年に初演されたそうです。後期のオラトリオですわね。出典は『ヨシュア記』。異民族の皆殺しの記事なんかがあって、そうとう生臭いテキストです。しかしモレルの台本はヨシュアに鼓舞されたイスラエル民族の勝利の物語として簡潔にまとまっています。

わたしは少年合唱は積極的には聴かないほうですが、このニュー・カレッジのクワイヤは評価しています。表現力がある。ここはホグウッドの『アタリア』でも好演していました。なお合唱団のテナーに、現在ソリストとして活躍しているトビー・スペンスの名前がありました。

ソリストではエインズリーのヨシュアがすばらしい。出番はそんなに多くはないけど、旧約聖書の英雄をいかにもそれらしく歌いきってくれます。もちろんカークビーもいいですよ。こんなマイナーなオラトリオにカークビーってなんかもったいない気もするけど。このオラトリオで有名なアリアは"Oh, had I Jubal's lyre"くらいですが、カークビーは文句のつけようもなく歌ってくれます。

キングは、90年代、ヘンデルのオラトリオのなかでもほかの指揮者があまり録音してこなかった不遇な作品をいくつか連続して取り上げました。わたしはそのすべてを聴いたわけぢゃないんですが、この『ヨシュア』はそのシリーズ中でもすぐれたものの一つです。

第3幕で"See, the conqu'ring hero comes!"(見よ、勇者は帰る)が聞こえてきたときはびっくりしましたけど、あの合唱の初出は『ユダス・マカベウス』ではなくてこの『ヨシュア』なんだそうですよ。原曲は意外と繊細な感じさえするさわやかな曲でした。この合唱のあと、すぐにカークビーの"Oh, had I Jubal's lyre"です。

オーボエ4、バスーン2、フルート2、トランペット3、ホルン2と管が充実。ヘンデルらしく金管が高らかに響き渡る行軍シーンなどはスカッとしますね。