歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

マッケラス『サリバン_戦艦ピナフォア』

2010年06月02日 | CD 古典派以後
Gilbert & Sullivan
H.M.S. Pinafore
Suart, Allen, Schade, Evans, Palmer, Adams, Van Allan
Orchestra & Chorus of the Welsh National Opera
Sir Charles Mackerras
CD-80374

1994年録音。73分30秒。TELARC。1878年初演のコミック・オペラ『戦艦ピナフォア』。ギルバート&サリバンの作品群のなかでも傑作との評があり、指揮はマッケラスだし、かつアレンとかパーマーとか知ってる人が出てるし、いろいろ気を引かれる条件が重なってたもんで、つい買っちゃいました。

なんとまあ、ふわーっと華やかな音楽ですわ。深みはないけど洒落ていて、エンターテイメントとしてすぐれたものだと思います。パーセルの劇音楽だって、ヘンデルのオペラだって当時としちゃエンターテイメントだったわけですからね。サリバンはパーセルのような天才ではないけれど、でもあの17世紀の天才の直系の弟子筋だと言える。ここにあるのはパーセルの繊細な叙情ではなく、19世紀イギリスの天真爛漫な能天気。たとえばアガサ・クリスティはこういう文化圏に育ったんですよね。

マッケラスの指揮は闊達なキビキビしたもの。ウェールズのオケと合唱もみごと。楷書の喜劇、って雰囲気だけれど、われわれ異邦人にはあまりくだけた草書の演奏よりもこのマッケラスくらい端正なのが馴染みやすくていいのではないでしょうか。それにしても、トーマス・アレンをはじめ、マイケル・シェイド、フェリシティ・パーマー、リチャード・バンアランなど、けっこう豪華キャストですよこりゃ。パーマーはバロックものしか聴いたことがなかったけど、こういうのもこなせる器用な人なのですね。あでやかですわ。バリトンのリチャード・スワートはクリストファーズ指揮の『妖精の女王』で酔っ払い詩人を演じていた人。彼のホームグラウンドがサリバンなのでした。

男声合唱が活躍するのも、経験者としてはやはりうれしいです。そういや、キングズ・シンガーズはギルバート&サリバンものでアルバム一枚リリースしていたし、ハーバードのグリー・クラブ・アルバムにもサリバンの男声四部の曲の楽譜がいくつか載ってたです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿