歌わない時間

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タリス・スコラーズ『ジョスカン_ミサ・マルール・ム・バ, ミサ・フォルトゥナ・デスペラータ』

2010年08月26日 | CD ジョスカン
Josquin des Prés
Missa Malheur me bat
Missa Fortuna desperata
THE TALLIS SCHOLARS
Peter Phillips
CDGIM 042

2008?年録音。75分23秒。Gimell。タリス・スコラーズによるジョスカンのミサ4作め。1作目の『ミサ・パンジェ・リングァ』のころからするとほんとによくなったなあ。ちゃんとジョスカンのミサらしく聴こえますもん。カッチリとした印象は相変わらずながら、このグループの表現が、収まるべきところにたおやかに収まりつつあると思います。ソプラノが突出することもない。もう少しニュアンスの陰影が出ればさらによい。でもジョスカンの演奏で満点というのは誰の演奏であれ考えにくいからね、ここまで歌ってくれたらじゅうぶんですよ。

Tessa Bonner、Sally Dunkley、Caroline Trevor、David Gould、Andrew Carwood、Steven Harrold、Nicholas Todd、Mark Dobell、Christopher Watson、Donald Greig、Robert Macdonald、Tim Scott Whiteley、ほか。最上声が3人で下3声は2人、を基本にして、Agnus Deiで増員しています。こういうやりかたははじめてですね。歌い手は見た憶えのない名前が多い。タリス・スコラーズも世代交代していくのでしょうか。しかしテッサ・ボナーが亡くなりましたし、サリー・ダンクリーが歌えなくなったらそこでタリス・スコラーズは幕引きになるかもしれない、って気もするんですけど。

《Missa Malheur me bat》は最上声がボナー、ダンクリー、トレバー。ボナー&ダンクリーの最強タッグにトレバーが入ると声が変わるね。そりゃま当然だけど。柔らかい音になって、いい感じ。声部が少なくなる〈Pleni sunt coeli et terra gloria tua.〉 とか〈Benedictus qui venit in nomine Domini. 〉の掛け合いは、ジョスカンのミサではいつもながらやっぱりうっとりする。このミサ曲、〈Agnus Dei I, II, III〉が計11分と長大。歌い甲斐がありそう。最後はあっさりと終わりますけどね。《Missa Fortuna desperata》のほうはタリス・スコラーズぢゃなくてザ・シクスティーンを聴いてるような気がちょっとしました。けっこう開放的な歌いっぷりも聴かせてくれる。〈Benedictus〉は下降音型が特徴的。歌うと気持ちよさそう。

タリス・スコラーズは、このCDが出たときにジョスカンのミサ全曲録音を完成すると伝えられましたけど、その話は、おそらく、もうないね。でもいいよ。彼らはジョスカンのCDを4枚、しめて8曲のミサのすぐれた録音を残してくれた。グラデーションのように少しづつ演奏の質が異なっていて、『ミサ・パンジェ・リングァ』のように物議を醸すものもあったけれど、それぞれに特色のある演奏だった。

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