歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ロンドン中世ens.『ジョスカン_ミサ・ディ・ダディ/ミサ・フザン・ルグレ』

2010年01月10日 | CD ジョスカン
JOSQUIN DESPREZ
Missa di dadi
Missa "Faysant regretz"
The Medieval Ensemble of London
PETER DAVIES & TIMOTHY DAVIES
475 911 2

1984年録音。52分14秒。L'Oiseau-Lyre。あまり期待せずに聴いたんですが、思いのほかいいですよこれ。もうあと1枚か2枚、このグループでジョスカンのミサを聴いてみたかった。ブレット、チャンス、ペンローズ(以上Ct)、コーンウェル、カビィクランプ、エリオット、キング(以上T)、ジョージ、ヒリアー(以上Br)。と言うことは最上声をカウンターテナー3人で歌い、下3声は2人づつということですね。全曲ア・カペラ。楽器は使っていません。

よく見ると、歌い手たちはほぼそのまま、ヒリヤード・アンサンブルと重なってます。ヒリヤードの名盤として名高いジョスカン作品集(「アベ・マリア」ほか)は1983年の録音で、つまりこのミサの録音のほうが後。それにしても、メンバーも重なり、録音時期もごく近いのに、同じ作曲家の曲とは思えないほど違って聞こえるのはおもしろい。ヒリヤードのジョスカンのような精緻をきわめた精密機械のような響きはここにはありません。ここにあるのはもっと素朴で能天気な、しかし安心して聴いていられるジョスカン。

ヒリヤード・アンサンブルのリーダーだったヒリアーがここではバリトン歌手として参加しています。ヒリアーのびのび歌ってますよ。9人とも、ほかにソリストとしての録音があるので、わたしは9人全員、どんな声の人か知ってます。1982年に録音されたガーディナーの『メサイア』では、ブレットはカウンターテナーのソリストとして、チャンスはモンテベルディ合唱団員として参加していました。しかしチャンスは、モンテベルディ合唱団時代もそうだったけどどうもスタンドプレーっていうか、自分だけ目立とう目立とうって顕示欲がいつも耳につくのでキライです。

このジョスカン、演奏の雰囲気はパロット指揮の『ミサ・アベ・マリス・ステラ』に似ている。足腰がしっかりしていて、自信に満ちたゆるぎのない演奏。テクニックを誇示するわけでもなく、時代考証を突き詰めるわけでもなく、ただただ、ジョスカンの音楽のよさがストレートに伝わってくる。こういうスタイルのジョスカンが個人的にはいちばんしっくり来るなあ。ごく当たり前に演奏してるように聞こえるけど、それでこの充実度。曲も演奏もいいです。ただ、多少一本調子でないこともない。そこだけ、ちょっと惜しい。

オワゾリールにこんな上質なジョスカンの音源があったなんてね。ちょっとびっくりした。ロンドン中世アンサンブルとして再末期の録音だと思われます。それにしても、ピーターとティモシーと2人で指揮している、ってのは具体的にはどうやってるんでしょうかね。

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