歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』

2011年02月08日 | 本とか雑誌とか
三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』(文春文庫)読了。

東京郊外の中都市(著者の念頭にあるモデルは町田市らしい)の駅前のビルにある便利屋さんの話。この設定ならエピソードはいろいろ考えられまさあね。あとは筆力。で、この作者は筆力ある人でした。読みやすい。半日で読んぢゃった。映画をノベライズしたかのように、映像が目に浮かぶ。現に、今年映画が公開になるそうで、文春文庫のカバーが、映画で主演する瑛太と松田龍平のツーショットの写真に変更になっていた。ただね、小説の設定としては、本作の主人公はもっと年の行った、中年を意識しはじめつつあるバツいちオッサンのはずだ。けれど、本作中での人物の動き方は作者の設定年齢よりも若い。むしろ瑛太や松田龍平あたりの年格好(二十代の後半?)ならしっくり受け入れられる。筋立ては面白いけれど、多田、行天の人間像がもう一つピントが合わない感じで、ちょっとぼんやりしている。まあとくに行天のほうはつかみ所のない人物として作られているわけだけれど、それにしたって。

第135回直木賞受賞作。初出は『別冊文藝春秋』。