歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

『図書』2011年2月号

2011年02月01日 | 本とか雑誌とか
『図書』2011年2月号。表紙版画は1585年の「アンリ三世の暗殺を伝える瓦版」。異時同図。フランス王位をめぐる三人のアンリの抗争。日本では安土桃山、秀吉の時代。文学ではお伽草子の時代。なお、この年、シュッツが生まれたとのこと。

丸谷才一『無地のネクタイ』は第10回「松竹の歌舞伎」。丸谷さんは海老蔵の団十郎襲名をすすめている。「験直しに持つて来いではないか。今の団十郎は、柄の大きさといふ古風な歌舞伎の味を発揮する点では今どき珍しい人だが、彼のためには、代々の俳名、白猿があるから心配はいらない。」という。「心配はいらない」ってあんた。丸谷さんは海老蔵の藝を高く買い、団十郎の藝は買ってないってことがよく分かる。まだ団十郎さんが若いころに、丸谷さんは彼の藝を評して「中器晩成」と言いました。つまり年をとってベテランになっても大成はしないだろう、って予言をしたわけですよ。それほどストレートな言い方ではないとはいえ、団十郎の名前は息子に譲れ、っていうのはやっぱりきついなあ。丸谷才一くらいえらい人ぢゃないとこんなことは書けない。それから、丸谷さんは、猿之助歌舞伎にもあまり関心がないらしい。

坪内稔典「柿の木問答」は加賀の千代について。

新刊案内。『貧困都政』、とはまあなんと岩波的な。『大阪城の男たち』『ルネサンス都市フィレンツェ』『食のイタリア文化史』あたりは興味あるけど、買わんでしょうな。岩波文庫『鶉衣(上)』『コロンブス全航海の記録』は買うかも。春のリクエスト復刊は『松浦宮物語』『愚管抄』『十六夜日記』ほか。『松浦宮』はむかし授業で読んだときにも使った懐かしいもの。蜂須賀笛子さんというかたの校訂なんですが、このお名前、なんか、横溝正史に出てきそう。