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アートネタなど日々のあれこれ

鳥獣戯画

2021-06-27 12:29:53 | 美術
東京国立博物館で「国宝 鳥獣戯画のすべて」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。鳥獣戯画も部分的には何度か見ているのですが、全巻それも全シーンを一度に見るのはこれが最初で最後かも、と。実際、通期で全4巻全場面を展示するのはこれが展覧会史上初めてのことだそうです。が、開催後間もなく、緊急事態宣言により休館…このまま見られないのかもと地団駄を踏んでいたら、幸い会期延長して再開してくれたので、会期終了近くに行ってまいりました。

展示は鳥獣戯画の甲巻からスタートします。巷で話題の歩く歩道…じゃなくて、動く歩道にもちゃんと乗ってきましたよ。これ、秀逸ですよね…。隣の方との間隔を適度に保ちながらも最前列で作品を見ることができます。こういう展覧会は数年前だったら何十分、いや何時間も行列に並んだ挙句、押し合いへし合いしながら見ることになっていただろうな、と思うと展覧会のシステムも進化したものだと、感慨深かったです。とんだりはねたり、生き生きと擬人化された動物たち。やはり巻を最初から最後まで通してみることで見えてくるものはあるなぁ、と思いました。流れのようなものが見てくるのですよね…。乙巻はさながら動物図鑑。前半は日本の動物、後半は異国の動物や霊獣が描かれています。この巻は描写がよりリアルに。霊獣も本当にいそうに見えてきます。丙巻は遊びの巻。前半に人間、後半に動物が遊ぶ姿が描かれています。この巻を見ていると、本当に人も動物も昔からしょーもないことして遊ぶのが好きだったのだなぁ、と思わずしみじみしてしまいます。最後の丁巻はもっぱらヘタウマで話題ですが、私はうまい人が酔っ払って描いた説に一票入れたいと思います。やはり筆の緩急の付け方やフォルムのとらえ方が巧みな感じ…。そうこうしているうちに全四巻あっという間に見終わってしまったような気がするのですが、実は全長44mもある長大な絵巻だったのですよね。なのに、こんなにも楽しくさくさく見られてしまうのはなぜだろう…。

第2章は「鳥獣戯画の断簡と模本」。断簡は絵巻のおいしい所をピックアップして作られるものだそうですが、やはり描き込まれた場面です。さまざまな模本のなかには狩野探幽が描いた縮図も。第3章は「明恵上人と高山寺」。明恵上人の座像には不思議なオーラが漂います。なぜか像の右側が陽の面、左側が陰の面のようにも見えてきます。穏やかな表情からは修行のために自分の耳を切るような激しさは窺えませんが、右耳には欠けた跡が。最後は、明恵上人が手元に置いて大事にしていたという子犬の像。そのもの静かで思慮深げな瞳ははるか遠くの世界を見通しているかのようです…。

そんなわけで鳥獣戯画の世界を堪能してまいりました。人と動物がひたすら楽し気に遊ぶという、ある意味シンプルな絵巻がおそらく日本一有名な絵巻として何百年も君臨(?)してきたことを思うと、「楽しきことは、よきことなり!」という言葉がついつい頭に思い浮かんでしまいます。そして人も動物も同列のような独特の感覚…そういえば、明恵上人が再興した華厳の教えには「一切衆生悉有仏性」というのがありましたね…。
コメント
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