「生誕130年 松岡映丘 -日本の雅-やまと絵復興のトップランナー」に行ってきました。
以前に山種美術館で見た、通常の2倍の幅のある絵巻で松岡映丘は大好きになったのです。
これは絶対に行かねばと思ってたのです。
今回はこの「千草の丘」のビジュアルが大活躍。もちろんチラシも。
なんと!縦に2つ折でひろげると大きなポスターになるのです。
イエローとグリーンがなんとも映えています。
○鵯越
これで「ひよどりごえ」と読みます。
今回の展示の一番最初にあった作品。
もっと近くで鑑賞したいと思いました。大きさはほどほどなのですが、かなり細かいのです。
断崖絶壁、逃げ場のないところ。
ぎりぎりのところでふんばっている武者たち。
そして、この翻る旗印のフォルムの美しさに眼がいきます。
○浦の島子
浦島太郎の図。背後におぼろげな竜宮。
乙姫との別れを躊躇する感じ。この人物たちの表情がとまどいや悲しみ不安といった感情の入り混じった複雑な感じがよく出ているなあと。
○道成寺
ご存知、道成寺。
六曲一双の屏風。サイズが大きいのですがトーンがぶれずとても丁寧な仕上げ。
清姫はやはり妖しい雰囲気。よく見るとその着物はくもの巣の柄。
○宇治の宮の姫君たち
シーンは源氏物語から。
左もよいのですがやはりこの右隻がよいです。
琴と琵琶を奏する二人の姫君。この髪の線と着物の色とライン。
○伊香保の沼
湖に身を投じた木部姫伝説による。
この目のあやかし。足は水につかってて、下手な幽霊画よりもよっぽど恐い。
○千草の丘
初代・水谷八重子が21歳だった大正15年にモデルを勤めている。
女性の美しさはもちろんだが、この背景の黄色から空の青へのグラデーションの美しいこと。
足元に生える春の草花がかわいらしい。脇役なんだけども相当な存在感。
着物が黄色、背景にも黄色。通常だったらやらないだろう。
でも、春の浮き立つ季節の感じはよく出ているしバランスがいいので上手くまとまっている。やはりこれが超一流の力量ですね。
○厳島詣
特筆すべきは海の表現。
薄く青を横に引いて色を乗せている。
神秘的な雰囲気をかもし出すことに成功している。
鳥居近くを飛び行く鳥の列がかわいい。
○さつきまつ浜村
風景画のコーナーはいまひとるピンとこなかったのですがこれだけは別。
エメラルドグリーンの海、山々と雲。
かと思うと遠くの海の青はまた違う印象。
同じくくりのものが異なるアプローチで同じ画面にあるのが素晴らしい。
○みぐしあげ
色がなんともキレイ。
関東大震災で消失し再制作されたものだという。
着物はもちろん、屏風、御簾にいたるまでカラフル。
○右大臣実朝
黒の多い画面に白き雪。
実朝の表情がなんともよい。
乗る車の上方の格子は整然としてて気持ちいい。
○矢表
平家物語のシーンから。
鳥、飛んでくる矢、それを見やる武者、守られる義経、お付の武者は立ち向かうもの、うろたえるもの。
左隻の空間の空いた感じに対して、右隻の密な画面は混乱なイメージが上手く出ている。
このほかにも映丘の写真などの資料もたくさん展示されていました。
なんと映丘は自身で甲冑を着てポーズを写真に収め、それを資料にして絵画制作に役立てていたとは。
あと、以前に山下先生の講演会でちょこっと出てきた映丘の生人形の写真パネルもありました。これ、実物見つかったんだそうか?気になるところです。
日本画好きならこれは必見です。
11/23まで。