国立新美術館で開催されている「光 松本陽子/野口里佳」に行ってきました。
松本陽子さんは絵画、野口里佳さんは写真と異なるメディアで表現されているのですが、タイトルの「光」というタームで結ぶとは面白いなあと思っていたのです。
入口に入るとさらに2つの方向に分かれています。
左へいくと松本陽子の展示。右へ行くと野口里佳の展示。
どちらを先に見てもいいようになっているのです。
わたしはどちらかといえば野口さんの写真が見たいなあと思ってきたので、まずは松本さんの絵画から見ることに。
いきなりピンクの緩やかなカオスのキャンバス
この筆のリズムと構成が自然に出来てるのか、作品毎にそれぞれ異なる音色を奏でていました。
最初はカオティっクで具象な感じはなかったものが徐々に具体に近いフォルムへとつながっていきます。
植物のシルエットみたいなふうに見えるんですよね。
特に「宇宙エーテル体Ⅰ」が顕著。
見てて空間を満たすっていう部分で自分の頭の中に「エーテル」というタームが浮かんでたのでこの絵を発見した時にはつながった!と。
これらのペインティングは白いキャンバスを彼女の頭の中で満たしてく行為に等しいのだと思います。
さらに進むと筆の使い方も変わり、どちらかというと垂直へと流れるラインが増えているなあと。
水彩が数点ありましたがどれも今年になって製作された作品。
こちらも植物的なフォルムが立ち上がっています。
ドローイングコーナーの冒頭に出現する作品がとても好きだなあと思いました。
重厚な面持ち、どす黒い何者かが現れる様がなんともよいのです。
線のもつ力が出ていることと、そこに何かあるなあと思わせてくれる空気感。
あまり予備知識とかなく触れた松本さんの作品でしたが十分に堪能させていただきました。
さあ、続いて野口さんのコーナーです。
野口さんを先に見ていたとするとラストになるところからスタートです。逆に見るとまた印象が違うのでしょうね。
「飛ぶ夢を見た2」の中のワンカット。プリズム分解したかのような原色カラーの鳥
たち。
キラキラしてて、どうやって撮ったのだろうと。
圧巻だったのは「太陽」。
これ、ドストレートで好きですね。
この展示空間から基本、部屋は暗くしてあって、作品を照明で浮かびあがらせている。
この太陽の写真に当たるライトが微妙に揺れて、計算かどうか分からないのだが、影のフチにプリズム分解された虹色がキラキラと揺れて光る。
これは素敵でした。主役の太陽が一番なのですが、こういう部分でも雰囲気が楽しめるのは大事です。
暗い部屋のコーナーの初めにあった「白い紙」。
雪山のゲレンデの白い写真を平坦な低い台に乗せて、上から照明を当てています。
ぼやあとした写真は好きなのでこういうのいいなあと。
そして、「フジヤマ」。
我々が富士山と聞いてイメージするのは、青く左右均等ななだらかな山で登頂が白い。というものだと思うのです。
ところがこのフジヤマはのっけから茶色のごつごつした岩。
対象を遠巻きに見るのではなくその場所で撮った景色なのです。
山から撮ってていいなと思ったのは、眼下に広がる雲!
これは美しいのひとこと。
こうした畏敬の念は信仰へと繋がるのだなあと実感です。
あと、「無題(アニカ)」も好き。
窓辺の女性なのですが、ぼやけててシルエットが浮かんでるのです。
やはり、実像ままもよいのですが、雰囲気とか空気がある写真はよいですね。
10/19まで。