府中市美術館で江戸絵画のタイトルを冠する展示であれば間違いなく面白いだろう。
2007年の「動物絵画の100年 1751-1850」、2009年の「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」、2012年の「三都画家くらべ-京、大坂をみて江戸を知る」とどれも楽しめる内容だったので今回の展示も期待しておりました。
既に会期は終盤(※本日5/6まで)。前期・後期に分かれてたものの前期は見逃しておりました。
(リストを見ると前期、後期のいずれかで前後期通しでの展示されている作品はなし。しまった~)
連休中ということで府中駅からの小さな100円バスは大混雑!
ほとんどの方が美術館で降りられていました。
まずはショップをチェック。
一枚の張り紙があり、なんと図録は5/1に売切となっていました。
残念!でも、それだけ人気というのは展示内容に胸躍らせてしまいますね。
見終わって思ったのはとにかくニコニコしちゃうなあと。
描かれている動物、人物がかわいく可笑しく招福イメージのものも多く素直に楽しめました。
さて気になった
「虎図」
一発目がこれ!墨の青い線ともりもりしたフォルムとユルい漫画ちっくなタッチがどことなくドラえもん!
見てたひと複数からこの感想が出てきててすごく納得。
実際の虎を見て描いてたらまるで違ってたんでしょうねえ。
リストの作者のところには「伊年印」とありましたが作者は不詳で、「伊年」の印があることでこう書かれていたのでした。
「狗子図」俵屋宗達
墨の黒のぬらっとした感じ。
フォルムも実際の犬とは違ってこれは宗達ならではの独特なテイスト。
「三猿図」森狙仙
狙仙の猿は一番しっくりとくる。
見ざる、聞かざる、言わざる。
「見ざる」は猿が腕で顔を覆い、水面に映った月を見ないというもの。
「聞かざる」は耳に掌をあてて、上方の鳥の声を塞いでる。なんとなく昔のウォークマンのCMで猿がイヤフォンして気持ちよさげに佇む様が頭に浮かんだ。
「言わざる」は花の下で口に手をあてている。猿がつぐんだ言葉、いや叫びは何だったのだろう?
「蛙図扇面」与謝蕪村
蛙が三匹。
描いた線はもう記号みたい。
実にシンプル、かつミニマム。
書画を両方こなす蕪村であることでなお響くなあと。
「唐獅子図押絵貼屏風」曾我蕭白
表情がマンガなんだけども実にいい味が出てる。
あと、顔の目と鼻と口の構成が可笑しい。特に向かって左の獅子の顔の構成が建築的だなあと。
画面全体も勢いで描いただけではなく画面構成がきちんと出来ている。
崖の上の獅子、突き落とされた獅子、這い上がる獅子が同一のもののようにも見えるし親子のようにも見える。
「東方朔図」伊藤若冲
人物の絵なんだけども筆使いに魅了される!
着衣のアウトラインの濃い墨の筆運びに気持ちいいこと。
かと思うと同じ画面上に描かれた桃の繊細な描写も楽しめる。
「狗子図」円山応挙
こちらを向いて座ってる子犬とその横で背中を向けて座ってる犬。
お互いを見ているのだろうけどもなんとなくこの二匹が鏡向かいにようになってるかのように思えた。
自画像みたいなイメージもちょこっとだけ入ってるのかなあなんて思ってしまった。
「群猿図屏風」長沢蘆雪
猿というとどうしても前述した森狙仙のがパッと浮かぶのだけども蘆雪のも負けていない。
モノトーンの画面が美しい。
こちらのほうが仕草の感じが人に近い?からか?描写自体の落とし込みなのか。
画面右の山の墨の塗りがワイルド。
白い部分の残し加減がなんともいえずよい感じ。
「豊干禅師図」円山応挙
目を閉じて安らかな顔の禅師のその下いは、、、虎が!
虎も同じく目を閉じているのだけどもこの丁寧に描かれた表情はなんだろう!?
かわいい猫がそこに寝てるかのよう。
とても愛らしい。
いつまでも眺めていたくなるほど。
「河豚と蛙の相撲図」伊藤若冲
うわー!!!
こんな面白い絵も描いていたとは!
蛙の目と河豚のぬぼうとした表情がなんとも可笑しい。
しかし何でまたこの両者?と思ってたところキャプションを見て納得。
河豚とヒキガエルは毒を持つもの同士とのこと。
意味は納得。賛もその辺りが触れられているのだろうか。
しかし絵の面白さに惹き付けられるほうが勝ってしまってる。
見終わってやっぱりにんまりとしてしまった。
よい絵を見た満足感、そして何よりもかわいいものを見てにこにこしちゃう高揚感と。
図録の売切はある程度想像してたのですがまさかポストカードも大半が売切になろうとは。
またこういった江戸絵画シリーズの展示、期待していますね。
※本日5/6まで。
<関連記事>
・三都画家くらべ-京、大坂をみて江戸を知る(府中市美術館)
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・動物絵画の100年 1751-1850(府中市美術館)