酒井抱一と江戸琳派の全貌に行ってきました。
会期は10/10~23、10/25~10/30、11/1~11/13と分かれていて展示替があるのですが、真ん中の二期だけの展示の作品はないので一期、三期に行けばOK!
というわけで、10/16に前半を見てて、11/5に後半を見てきたのです。
にしてもびっくりするくらいに作品の点数が多い。
実は前半で3時間半オーバー、後半は2時間弱でそれでもまだまだ見足りないくらい。
7階、8階のスペースをフルで使っててこれでもかというくらい。
抱一はもちろんのことその弟子たちまでを網羅。
掛け軸、屏風の他に下絵を手がけた蒔絵や杯まで。
というわけでなかなかにまとまらずにようやく書いたというわけです。
もうあとちょっとで終了してしまいますが、土日もありますし、金土は20時までの夜間開館を実施しています。
日本美術が好きであれば絶対に行ったほうがいいです!!
それくらいによい内容の展示です。
120.酒井抱一/亀田鵬斎 賛「寒牡丹図」
牡丹を守る傘になってる藁のかすれた筆致に味わいあり。
111.酒井抱一「播州室津明神々事棹歌之遊女行列図」
こんな行列があったのですね。なんとなく珍しいモチーフなのではと思いました。
男のような髷を結い男装した女性が笛や太鼓を叩いてるのを先導に後ろを行列する遊女たち。
着物のラインがとても柔らかく描かれているのが特徴あって印象に残っています。
82.酒井抱一「西行図」
その目は細く鋭い。とても癖のありそうな人物に描かれている。
飛ぶ鳥の足が長かったり、笹の塗りがなんとなく印象的に残っていたり。
74.酒井抱一「四季花鳥図屏風」
眩いばかりの金を背景に浮遊するかのような植物と鳥たち。
雉はわりとそのまんまですが、鷺はこれでもかとフォルムがデフォルメされている。
金て下手に使うとけばくなりますが、そうならないで品のある感じになっています。
理屈抜きに楽しめる美しさ。
86.酒井抱一「風神雷神図屏風」
ご存知、出光所蔵。宗達が描き、光琳も同様に描き、光琳のを見て抱一は描いたと思われるとのこと。
以前に3点並べて見た時に、抱一のはちょっとぎこちないなあと感じましたが1点のみでの展示だとそういう印象は薄いように思いました。
87.酒井抱一「風神図」
今回、新出。「風神雷神図屏風」にほぼ近いのだが背景が金箔ではないので印象が異なる。
墨のぼやけた感じが深くて雲っぽくてよい。
158.酒井抱一「夏秋草図屏風」
絵としてのよさとデザイン的なセンスがばっちりのバランス。
左隻の葉の緑色の薄いと濃いの分けた使い方は洗練されている。すすきの風に流される様は気持ちいい。
右隻の百合の存在が異様。普通ならその美しい白い大きな花を描くだろう。
でも、ここでは名もない草の後ろにあえて遮られるようにして描かれている。
右上方に流れる濃い青の流水。
中の金のラインは洗練された表現に一見、見えはするのだけども、よく見てみると少しだけ小さく乱れているのがわかる。
なんだろう、この心の乱れみたくほんの微かにざわめいてるのは。
銀の箔は劣化してるもののまだまだキレイな状態を保ってる。
当初の光琳の「風神雷神図屏風」の裏に描かれたよう状態で見たらどんなふうに見えるだろうか?
157の草稿が横にあって見比べることが出来る。こういう機会はなかなかないのでは?
79.酒井抱一「波図屏風」
まず見て思ったのはなんとワイルドなんだろうと。
すごく気になったのは左の波の間の丸く空いたところ。
これがなんとも口のように洞窟のように。なんというか咆哮をあげているかのように見えたのです。
133.酒井抱一「雀児図 倣徐崇嗣」
こちらも新出。
雀が獣として描かれてりるのだけどもむしろそこがかわいい。
籠の中、まるまるとしたのがいいな。
106.酒井抱一「河豚蘿蔔図」
大根と河豚のぽっこりした丸みを帯びたラインが似てて面白い。
水墨の素朴なトーンも合っててほのぼのとする。
177.酒井抱一 下絵 /原羊遊斎 作「式草花螺鈿蒔絵茶箱」
鋭い三角のエッヂの効いたデザイン。
面白いのは蒔絵とかのってどちらかというと黒と金と銀のどちらかといえばしっとりとしてイメージ。
ところがこれは三角で区切られたエリアに描かれた花のところがに赤と期と緑が配されていてなんともカラフル。
浮くことなくきちんと調和が保たれている。
244.鈴木守一「白衣観音図」
描表装が見事。中廻しの金泥の観音経に見立てと本図に侵入してくる描表装の白い蓮の花!
142.酒井抱一「妙音天像」
緑の蓮の葉に乗る緑の着物の妙音天。
周囲に描かれた波頭が見事。
152.酒井抱一「日課観音像(六月朔日)」
抱一が毎日描いていたという同じ観音像。シンプルな筆致は書、そのもの。
線のフォルムが全体でサンスクリットに見えてくる。
147.酒井抱一「倶利伽羅剣二童子像」
不動明王の剣が化身として独立したもの。
こういうものまで信仰の対象になっているのですね。
剣にからみつく龍の表情がユーモラス。キャラっぽくて、抱一にしては珍しいような気がしました。
176.酒井抱一 下絵 /原羊遊斎 作「蔓梅擬目白蒔絵軸盆、下絵、書状一式」
中央に空白を空けてそれを囲むようにつたう蔓、その上に2羽の目白。
目白の青が美しい。
なんと下図も並べて展示されていて抱一がデザインしたものと羊遊斎によって製品として完成された姿との違いを比べることが出来る。
下絵の目白は普通の色なので、青くしたのは羊遊斎なんですよね、きっと。
170.酒井抱一「月に秋草図屏風」
すすきがにやにやしてるかのよう。表情があるのです。
月は黒く、妖しい面持ち。
他の草花の茎のカーブがなんとも踊っているかのよう。
277.松山交山「朝顔夕顔図扇」
派手!
金バックに鮮やかな銀と緑。そして朝顔の青。
こんなにいいコンディションで残っていようとは。
これこそ、江戸琳派っていう感じがしました。
210.鈴木其一「松島図戸袋」
新出。波の描写が生っぽくエロティック。
なんか妙な色気があるいのです。そして波の渦の描写もくらくらしちゃうかのよう。
視線移動だけで楽しめます。
273.田中抱二「三十六歌仙屏風」
抱一のお弟子さん。知りませんでしたが、とてもよい。
人物の表情がなんとも楽しい。
抱二の作品は他にも仏画やスケッチがありましたがどれもなかなかで他にも見てみたいなあと思いました。
221.鈴木其一「芒野図屏風」
これは異様でした。
なんだか近代の絵画のよう。反復するパターン。
画面の位置で表面のトーンを変えて変化を持たせている。
他にもこのテイストの屏風とか発見されたらいいなあと思ってしまいます。
231.鈴木其一「雨中菜花楓図」
対幅。菜の花に降る雨は垂直でグレーのライン。
楓のほうは斜めで平行ではなくそのラインは交わってて雨の激しさと風が描かれている。
破線ではなく実線で描かれる雨。
208.鈴木其一「風神雷神図襖」
屏風ではなく襖。ワイド画面、金バックの縛りもなく、水墨で描かれた雲と風の描写に深みがあってよいのです。
この墨のにじみ加減、気持ちよい。
235.鈴木其一「牡丹図」
視界に入った瞬間、ぱあっと開けるかのよぷな感じ。
とにかくこの花びらが息づいているのです。
248.市川其融「百鶴百亀図」
百鶴のほうはまあ普通なのですが、百亀が異様。
頭は肌色だし、手足が長くて、なんとも人のようで気持ち悪いくらい。
303.鈴木其一「歳首の図」
描表装のが多い本展の中でも特に素晴らしい構成。
本図は正月飾りと鶯。
中廻しに描かれた咲いた梅の枝がなんと本図に侵入してくる仕掛け。
314.鈴木其一「抱一上人遺像」
丸に描かれた抱一は特徴を捉えて描いてて皺や鼻の描写に特徴がある。
他の肖像と比べるとこのシンボリックなのが一番しっくりとくるような気がしました。
いずれも11/5に見た感想です。余裕があったら前期のほうも書きたいところですがさてさてどうなるやら。
11/13まで。必見です!!
↓図録は書籍としても販売されています
会期は10/10~23、10/25~10/30、11/1~11/13と分かれていて展示替があるのですが、真ん中の二期だけの展示の作品はないので一期、三期に行けばOK!
というわけで、10/16に前半を見てて、11/5に後半を見てきたのです。
にしてもびっくりするくらいに作品の点数が多い。
実は前半で3時間半オーバー、後半は2時間弱でそれでもまだまだ見足りないくらい。
7階、8階のスペースをフルで使っててこれでもかというくらい。
抱一はもちろんのことその弟子たちまでを網羅。
掛け軸、屏風の他に下絵を手がけた蒔絵や杯まで。
というわけでなかなかにまとまらずにようやく書いたというわけです。
もうあとちょっとで終了してしまいますが、土日もありますし、金土は20時までの夜間開館を実施しています。
日本美術が好きであれば絶対に行ったほうがいいです!!
それくらいによい内容の展示です。
120.酒井抱一/亀田鵬斎 賛「寒牡丹図」
牡丹を守る傘になってる藁のかすれた筆致に味わいあり。
111.酒井抱一「播州室津明神々事棹歌之遊女行列図」
こんな行列があったのですね。なんとなく珍しいモチーフなのではと思いました。
男のような髷を結い男装した女性が笛や太鼓を叩いてるのを先導に後ろを行列する遊女たち。
着物のラインがとても柔らかく描かれているのが特徴あって印象に残っています。
82.酒井抱一「西行図」
その目は細く鋭い。とても癖のありそうな人物に描かれている。
飛ぶ鳥の足が長かったり、笹の塗りがなんとなく印象的に残っていたり。
74.酒井抱一「四季花鳥図屏風」
眩いばかりの金を背景に浮遊するかのような植物と鳥たち。
雉はわりとそのまんまですが、鷺はこれでもかとフォルムがデフォルメされている。
金て下手に使うとけばくなりますが、そうならないで品のある感じになっています。
理屈抜きに楽しめる美しさ。
86.酒井抱一「風神雷神図屏風」
ご存知、出光所蔵。宗達が描き、光琳も同様に描き、光琳のを見て抱一は描いたと思われるとのこと。
以前に3点並べて見た時に、抱一のはちょっとぎこちないなあと感じましたが1点のみでの展示だとそういう印象は薄いように思いました。
87.酒井抱一「風神図」
今回、新出。「風神雷神図屏風」にほぼ近いのだが背景が金箔ではないので印象が異なる。
墨のぼやけた感じが深くて雲っぽくてよい。
158.酒井抱一「夏秋草図屏風」
絵としてのよさとデザイン的なセンスがばっちりのバランス。
左隻の葉の緑色の薄いと濃いの分けた使い方は洗練されている。すすきの風に流される様は気持ちいい。
右隻の百合の存在が異様。普通ならその美しい白い大きな花を描くだろう。
でも、ここでは名もない草の後ろにあえて遮られるようにして描かれている。
右上方に流れる濃い青の流水。
中の金のラインは洗練された表現に一見、見えはするのだけども、よく見てみると少しだけ小さく乱れているのがわかる。
なんだろう、この心の乱れみたくほんの微かにざわめいてるのは。
銀の箔は劣化してるもののまだまだキレイな状態を保ってる。
当初の光琳の「風神雷神図屏風」の裏に描かれたよう状態で見たらどんなふうに見えるだろうか?
157の草稿が横にあって見比べることが出来る。こういう機会はなかなかないのでは?
79.酒井抱一「波図屏風」
まず見て思ったのはなんとワイルドなんだろうと。
すごく気になったのは左の波の間の丸く空いたところ。
これがなんとも口のように洞窟のように。なんというか咆哮をあげているかのように見えたのです。
133.酒井抱一「雀児図 倣徐崇嗣」
こちらも新出。
雀が獣として描かれてりるのだけどもむしろそこがかわいい。
籠の中、まるまるとしたのがいいな。
106.酒井抱一「河豚蘿蔔図」
大根と河豚のぽっこりした丸みを帯びたラインが似てて面白い。
水墨の素朴なトーンも合っててほのぼのとする。
177.酒井抱一 下絵 /原羊遊斎 作「式草花螺鈿蒔絵茶箱」
鋭い三角のエッヂの効いたデザイン。
面白いのは蒔絵とかのってどちらかというと黒と金と銀のどちらかといえばしっとりとしてイメージ。
ところがこれは三角で区切られたエリアに描かれた花のところがに赤と期と緑が配されていてなんともカラフル。
浮くことなくきちんと調和が保たれている。
244.鈴木守一「白衣観音図」
描表装が見事。中廻しの金泥の観音経に見立てと本図に侵入してくる描表装の白い蓮の花!
142.酒井抱一「妙音天像」
緑の蓮の葉に乗る緑の着物の妙音天。
周囲に描かれた波頭が見事。
152.酒井抱一「日課観音像(六月朔日)」
抱一が毎日描いていたという同じ観音像。シンプルな筆致は書、そのもの。
線のフォルムが全体でサンスクリットに見えてくる。
147.酒井抱一「倶利伽羅剣二童子像」
不動明王の剣が化身として独立したもの。
こういうものまで信仰の対象になっているのですね。
剣にからみつく龍の表情がユーモラス。キャラっぽくて、抱一にしては珍しいような気がしました。
176.酒井抱一 下絵 /原羊遊斎 作「蔓梅擬目白蒔絵軸盆、下絵、書状一式」
中央に空白を空けてそれを囲むようにつたう蔓、その上に2羽の目白。
目白の青が美しい。
なんと下図も並べて展示されていて抱一がデザインしたものと羊遊斎によって製品として完成された姿との違いを比べることが出来る。
下絵の目白は普通の色なので、青くしたのは羊遊斎なんですよね、きっと。
170.酒井抱一「月に秋草図屏風」
すすきがにやにやしてるかのよう。表情があるのです。
月は黒く、妖しい面持ち。
他の草花の茎のカーブがなんとも踊っているかのよう。
277.松山交山「朝顔夕顔図扇」
派手!
金バックに鮮やかな銀と緑。そして朝顔の青。
こんなにいいコンディションで残っていようとは。
これこそ、江戸琳派っていう感じがしました。
210.鈴木其一「松島図戸袋」
新出。波の描写が生っぽくエロティック。
なんか妙な色気があるいのです。そして波の渦の描写もくらくらしちゃうかのよう。
視線移動だけで楽しめます。
273.田中抱二「三十六歌仙屏風」
抱一のお弟子さん。知りませんでしたが、とてもよい。
人物の表情がなんとも楽しい。
抱二の作品は他にも仏画やスケッチがありましたがどれもなかなかで他にも見てみたいなあと思いました。
221.鈴木其一「芒野図屏風」
これは異様でした。
なんだか近代の絵画のよう。反復するパターン。
画面の位置で表面のトーンを変えて変化を持たせている。
他にもこのテイストの屏風とか発見されたらいいなあと思ってしまいます。
231.鈴木其一「雨中菜花楓図」
対幅。菜の花に降る雨は垂直でグレーのライン。
楓のほうは斜めで平行ではなくそのラインは交わってて雨の激しさと風が描かれている。
破線ではなく実線で描かれる雨。
208.鈴木其一「風神雷神図襖」
屏風ではなく襖。ワイド画面、金バックの縛りもなく、水墨で描かれた雲と風の描写に深みがあってよいのです。
この墨のにじみ加減、気持ちよい。
235.鈴木其一「牡丹図」
視界に入った瞬間、ぱあっと開けるかのよぷな感じ。
とにかくこの花びらが息づいているのです。
248.市川其融「百鶴百亀図」
百鶴のほうはまあ普通なのですが、百亀が異様。
頭は肌色だし、手足が長くて、なんとも人のようで気持ち悪いくらい。
303.鈴木其一「歳首の図」
描表装のが多い本展の中でも特に素晴らしい構成。
本図は正月飾りと鶯。
中廻しに描かれた咲いた梅の枝がなんと本図に侵入してくる仕掛け。
314.鈴木其一「抱一上人遺像」
丸に描かれた抱一は特徴を捉えて描いてて皺や鼻の描写に特徴がある。
他の肖像と比べるとこのシンボリックなのが一番しっくりとくるような気がしました。
いずれも11/5に見た感想です。余裕があったら前期のほうも書きたいところですがさてさてどうなるやら。
11/13まで。必見です!!
↓図録は書籍としても販売されています
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