Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 208

2021年03月28日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

鏡面異性体のお話をしようと思います。

 

まず、朝日新聞2020/12/4から、

『有機物はもともと、宇宙を飛び交うチリの表面で、炭素や酸素などに高エネルギーの粒子が当たって合成された。初めは一酸化炭素や水など簡単な分子だけだったが、合成を繰り返すうちにアミノ酸など複雑な有機物も出来たとされる  中略

 ところが、地球のような惑星は、大きく成長する過程で惑星全体がマグマに覆われるような極めて高温の時期があった。地球はその後、冷えて海ができ、生命が誕生するのだが、有機物は高温になると壊れるため、生命のもとになった材料は、地球が冷えたあとに改めて小惑星などからもたらされたのではないかという説がある。』

   

2020年12月6日(カプセル着地予定)に向かって進む(?)はやぶさ2http://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/current/hayabusa2.html 

 

これまでこのブログでは、IUPAC命名法による右旋性を(+)で左旋性を(-)で表し、立体配置を不斉中心の4個の置換基の命名上の優先順位によりSまたはR(R、S はラテン語の右、左を意味するRectus、Sinister)を用いるRS表示法で表してきました。また、歴史的経緯から、d, l (dextro-rotatory(右旋性)、levo-rotatory(左旋性)も用いました。これらの表記方法は、いずれも化合物の立体構造を明確に表す手段で深い意味合いはありません。

               

ネットをみていたら分子模型がありました。https://wowma.jp/item/353991526 から

        

十字の交差しているところに不斉炭素原子があると見なします。太い楔形は手前に位置することを。波線は後ろにあることを示しています。

https://rikei-jouhou.com/fischer-projection/ から透視式立体構造式

 

分子モデルは勿論、透視式立体構造式で化合物を表すことは非常に手間がかかります。そこで色々と考えた末に編み出されたのが上記の記号を使った表記方法です。表記にはあまり気をせずに次からの文章をお読み下さい。

 

これまで、リナロール、ゲラニオール、ネロールといった光学異性体を説明してきましたが、そこで気になるのが左と右の差だけで香りが異なる点です。他に例を挙げれば、カルボンは片方がミントの香りで、もう片方はキャラウェイの香り、そしてリモネンは、レモンとオレンジです。

加えて、地球上のほとんどは左利きのアミノ酸だけからできあがっていることも驚きです。生物の中で、糖はほとんどの場合右利きで存在していることや、それに、左利きのアミノ酸は、右利きの糖は、どこから来たのだろうという疑問も湧いてきます。

   

猫の手星雲、NGC 6334 さそり座の方角にあり 

欧州南天天文台(European Southern Observatory、ESO)が公開した、「Cat's Paw Nebula(猫の手星雲)」(NGC 6334)の画像(2012年7月9日提供)

 

太陽系からはるか遠くにある分子雲からやってきたのではないかという説が有力です。2013年4月23日に、総合研究大学院大学、国立天文台、東京大学、名古屋大学、京都大学などの研究者を中心とする研究チームは、「猫の手星雲」(NGC 6334)と呼ばれる星、惑星形成領域を赤外線で観測し、22%という高い円偏光を検出することに成功しました。さらに研究チームは、世界で初めて系統的に星、惑星形成領域の円偏光を観測し、同様の円偏光を合計9つの星、惑星形成領域において検出しました。つまり、円偏光は星、惑星形成領域で普遍的であり、この円偏光がアミノ酸に偏りを引き起こし、宇宙におけるアミノ酸の鏡面性を引き起こしたという仮説に繋がります。 http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/frontiers/case05/ 

 

星の寿命が尽きた後の残りくずのような分子雲に私たちの右利き左利きの謎が隠されているのではないかという説があります。その信頼性を高める報告として、オリオンOMC-1にある星で偏光性が確認されたと言われています。つまり、ここでは一方に偏った分子が存在しているというのです。

 

2010年、国立天文台の福江らは、大質量星形成領域周辺※において、赤外線円偏光領域が太陽系の 400倍もの広さで広がっていることを 観測しました。中性子星モデルでは、太陽系が中性子の極方向に位置した場合に限って大量の円偏光を浴びることができるが、今回の結果は、原始太陽系がこのような円偏光領域にどっぷりとつかっていた可能性を示唆するものでした。以上の知見から、次のような生命の起源へのシナリオを描くことができます。『分子雲でアミノ酸(前駆体)などの有機物が生成する。これに星間の円偏光 の作用によりL-アミノ酸の過剰が生じる。これらは太陽系生成時に隕石母天体や彗星に取り込まれ、やがて地球に運び込まれる。原始海洋中で、このエナンチオ過剰は、“Soai反応”(エナンチオ過剰を増幅するような自己触媒反応)により増幅され、ほぼL体のみとなる。』このようにしてできたホモキラルなアミノ酸を用いて地球上に生命が誕生したというのです。

 

総合研究大学院大学のKim Junghaらの研究チームは、たて座方向の約1万6000光年彼方にある大質量星団形成領域「G25.82-0.17」について、ガスの流れや構造に関する研究を行いました。G25.82-0.17では様々な速度で運動するガスから強いメーザー(水などの分子ガスによって増幅されたマイクロ波)が放射されていて、アルマ望遠鏡による高感度な観測データがあり、大質量原始星の周辺環境を詳細に調べるのに適していたのです。

      
アルマ望遠鏡で観測された大質量星団形成領域「G25.82-0.17」。波長1.3mmの一酸化ケイ素からの電波放射で手前に向かって吹き出すガス(青)と奥に遠ざかる方向のガス(赤)が示されています。南北(上下)に加えて、北西(右上)と南東(左下)方向にも淡く伸びるアウトフローが見えます。中心のオレンジ色に輝く場所は大質量原始星「G25.82-W1」です。中心の星間塵からの放射(緑色)には弱い放射のピークがいくつかあり、星団が形成されつつあることがわかります(提供:国立天文台) https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11413_g2582 

 

鏡像異性体の例として、サリドマイドという鎮静、催眠薬が知られています。この薬が合成された当時、服用した妊婦から身体に障がいのある子どもが生まれたという薬害で話題になりました。サリドマイドには、立体化学的にR体とS体の鏡像異性体が存在します。R体は鎮静、催眠作用があり、S体には催奇形性を生じさせる作用があります。サリドマイドが開発された当初はこの2つの鏡像異性体を分離することが難しく、完全に分離されることなく2つが混じった状態で販売されたため、不幸な薬害が起こってしまいました。サリドマイドに限らず医薬品の中には鏡像異性体が存在するものが多く、この事件をきっかけに医学、薬学の分野では鏡像異性体に注意が払われるようになりました。 現在の技術ではサリドマイドの2つの鏡像異性体を分離することは可能です。また、R体またはS体だけを合成することもできます。

 

ところが、R体のみを患者に投与しても生体内でR体の一部がS体に変換されることが最近わかったため、R体とS体の生体内における機能が疑問視されています。だがさらに研究が進むと、生理条件下でサリドマイドはキラル反転を起こし、R体とS体が相互に変換してラセミ化することが報告されました。さらにサリドマイドは様々な代謝を受けることが知られており、特に水の存在下では比較的速やかに加水分解され複数の代謝産物が生成します。このように、キラル反転と様々な代謝が組み合わさって同時に起こることで、サリドマイドの詳細な薬理作用メカニズムの解明は非常に困難なものになっています。

http://asahi-lab.jp/research/thalidomide.html を参考にさせていただきました)

                                                                       

R体とS体のお話は如何でしたでしょうか。

人間の数が増えすぎたのでしょうか。この宇宙に生き物は人間しかいないのではないかと錯覚をしているのかも知れません。今までのお話で、その妄想が吹っ飛んだのであれば、私のお話もお役に立ったということになるのですが。

人間は宇宙の中でバランスを取って存在することで生きていけるのだと思っています。これまでの生き方の視点を変えれば、コロナとの共生方法もわかるはずなのですが。

                      

 

 


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