Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

パン~モラヴィアンコーヒーケーキ

2016年07月21日 | パン

Moravian Coffee Cake

ジェームス ビアード ( James A. Beard ) が1973年に著した ”ビアードさんのパンの本 ( Beard on bread ) ” の中にモラビア風コーヒーケーキ ( Moravian Coffee Cake ) のレシピがあります。日本でも翻訳( 1976年に根田春子訳で )され、その後10年余りの間に十数刷発行されているのでこのパンを作られた方も多いと思いますが、皆さんはどのようなモラヴィアンコーヒーケーキを焼かれたでしょうか。

レシピ通りに膨らませた生地の上にブラウンシュガー1/2カップとシナモン2tsを混ぜて振りかけ、溶かしバター1/2カップを上から注ぎ、2倍の大きさに膨らませて、177℃で30-35分焼くと、パンは次のような姿になります。



このパンを作った方はパンを作ることに慣れていてうまく焼いていますが、それでも表面が焦げているのがわかります。彼は自身のサイトhttp://www.brooksbakesbread.com/?cat=4 の中で「全体に甘すぎて、レシピに書かれているトッピングのブラウンシュガー以下は不要なのでは。」と述べています。私も何回か試みましたが、甘くて、そして砂糖が焦げて苦くて食べられませんでした。

本に書かれているレシピは ( 中型食パン型2個分 ) で次の通りです。

強力粉                 3~5 1/2カップ
ドライイースト             14g
水                   1/2カップ
グラニュー糖              1/2カップ
バター                 1/4ポンド
塩                   小さじ1/2
卵                   2個
マシュトポテト(インスタントでもよい) 1/2カップ
ブラウンシュガーまたは赤砂糖      1/2カップ
シナモン                小さじ2
溶かしバター              1/2カップ

粉2カップとイーストを混ぜ合わせます。鍋に水、グラニュー糖、バター、塩を入れて、38℃~46℃に温め、粉とイーストに加えて混ぜます。ここにマッシュポテト、粉1カップを加えて混ぜます。これをつやが出るまで焼く8~10分こねます。暖かいところにおいて発酵させます。
発酵したらガスを抜いて2等分し、10分休ませます。たたきのばすか、めん棒で伸ばして巻き上げます。22.5x12.5x7.5センチの型2個にバターをぬって生地を入れ、ブラウンシュガーとシナモンを混ぜ、生地の上から振りかけます。溶かしバターを上から注ぎ、温かいところに置いて、2倍の大きさにふくらむまで約1時間発酵させます。
あらかじめ177℃に熱しておいたオーブンに型を入れ、30~35分焼きます。型の中で5分ほどさましてから取り出します。

生地を電動ミキサーを使って撹拌する行程ともっと甘いのが好きな方は、シュガーアイシングをかけてくださいという ”粉砂糖を1 1/4~2カップ使ったシュガーアイシングのレシピ” は省略しました。

このレシピはJames A. Beard ( 1903/5/5—1985/1/21 、アメリカ料理界の長老で、新聞、雑誌、テレビで活躍し、料理学校を経営、数多くの料理書を著した ) のものであるということで様々な方が作られたと思いますが、レシピを疑問に思った方は少ないようです。
レシピに先立って ”これは甘みを控えた、コーヒーケーキの典型的なもの。モラビア人たちが定住している、ペンシルバニアなどでよく見かけられます。焼きたてに、バターやプリザーブを添えていただくとすばらしい味です。“ と前置きされた「モラビアンコーヒーケーキ」の本当の姿はどのようなものなのでしょう。一度作った経験のある方は、このレシピに対してかすかな疑問を抱かれているのでは?と思います。

ネットで偶然、両親がシカゴに住むモラビア人から「モラヴィアンシュガーケーキ」の情報を得ることができました。
彼は次のように述べています。『現在アメリカには二通りのモラビア人が住んでいます。それは宗教の自由を求めて1700年代に現在のチェコのモラヴィアからドイツを経てアメリカのノースカロライナとペンシルバニアに移り住んだペンシルベニアドイツ語を話すモラヴィア兄弟団 ( Moravian ) と最近になってアメリカのシカゴ、ウイスコンシン、ミシガン、オハイオ、ニューヨーク、カナダに移り住んだ人達です。モラヴィアンコーヒーケーキは、もともとはイースターの朝のために作られたものです。』

この情報がきっかけでネット上から次の3つのレシピを得ることができました。

ミネソタ州、ワコニアにあるワコニア モラヴィアン教会 ( Waconia Moravian Church ) のサイトから引用しました。http://www.waconiamoravian.org/multipage.php?id=15121&



これがモラヴィアンシュガーケーキだと言うのです。

Recipe #1 - TRADITIONAL MORAVIAN SUGAR CAKE ( 伝統的なモラヴィアンシュガーケーキ )

材料:
マシュポテト          1C
ポテトを煮た湯         1C
ドライイースト         14g
ぬるま湯            1/4C
バター             1/2C
ショートニング         1/2C
砂糖              1C
卵               2個
塩               1ts
中力粉             6C

トッピング:
ブラウンシュガー        2/3C
シナモン            1TBS
バター             1/2C

作り方:
ポテトを約25分間柔らかくなるまで煮る。煮汁を1C取っておく。イーストをぬるま湯に入れて溶かす。バター、ショートニング砂糖をボールに入れてクリーム状に練る。卵を加える。順次、マッシュポテト、取っておいた煮汁、塩、イースト液を入れて混ぜる。小麦粉を混ぜて柔らかいドウを作る。ドウをボール状にして脂を塗ったボールに入れる。タオルをかぶせて暖かい場所に置いて2倍の大きさになるまで(2-3時間)寝かせる。軽く粉を打ったボード上でパンチし、軽く練って2分割する。33 x 23 x 5cm大きさの脂を塗った型に入れる。均一に型に入れて軽くタオルをかぶせて2倍の大きさになるまで膨らませる。親指と人差し指を使って大きな凹みを全面に作る。その穴の中にトッピングを入れる。180℃ で約25分間表面がきつね色になって真ん中まで火が通るまで焼く。
四角に切って熱いうちにサーブする。

Recipe #2 - Winklers ※ Moravian Sugar Cake ( モラヴィアンシュガーケーキ )
※Winklersというのはノースカロライナ州中北部のウィンストン・セーラムの旧市街にあるベイカリーの名。

材料:
ドライイースト          14g
砂糖               1/2ts
水(110F)           3/4C
水                3/4C
砂糖               1/2C
ノンファット粉ミルク       2TBS
インスタントマシュポテト     2TBS
塩                1/2ts
バター              1/2C
小麦粉              3C

トッピング:
ブラウンシュガー         1C
シナモン             1ts
バター              1/2C

作り方:
暖かい水の中に砂糖1/2tsとイーストを振り入れて泡立つまで置いておく。
材料を7種類と粉を1C入れて木杓子で混ぜる。残りの粉を入れてブレッドのドウの固さになるように必要であれば粉を足す。脂を塗ったボールに入れて返し、脂で覆う。バターを少量ずつドウの中に埋め込む。2倍の大きさに約1時間かけて膨らませる。パンチして脂を塗った浅い型(43 x 30 cm)の中に入れて30分間かけて膨らませる。ブラウンシュガーとシナモンを振る。表面を軽くへこませて残りのバター1/2Cを振りかけて180℃で12-15分間きつね色になるまで焼く。熱くして又は室温でサーブする。

Recipe #3 - LAZY MORAVIAN SUGAR CAKE (quicker to make, but still very good)( 怠け者のモラヴィアンシュガーケーキ;素早く作れてしかも味がよい)

材料:
小麦粉              3 3/4C
砂糖               1 1/2C
ベイキングパウダー        2 1/2ts
バター              6TBS
ミルク              1 1/2C

オーブンを180℃に予熱する。23 x 33cm又は 5 x 23cmの型に脂を塗る。粉類を混ぜる。バターを入れてミルクを混ぜる。スプーンで型の中に入れてブラウンシュガーとシナモンを混ぜて作ったトッピングを全面に振る。バターを所々に置く。20-25分間焼く。

三番目のレシピは詳細が不明ですが、一番目と二番目のレシピからモラヴィアンシュガーケーキの内容 ( 中力粉を使ったお菓子のレシピであったこと。砂糖、卵、バターの量が多い柔らかい生地であること。粘度が高く、保水性に優れた馬鈴薯デンプン(マシュポテト)を入れてモチモチ感を狙っていること。生地と相性に良いブラウンシュガーとシナモンを使ったこと ) が把握できたと思います。

又次のサイト https://anguksuar.wordpress.com/2009/07/25/setting-the-table/morsugcake/ には次のようなコメントがありました。絵と一緒に紹介しておきます。



これが有名なモラヴィアンシュガーケーキです。小さいときにはよく食べたものです。プディングの入ったケーキとしてよく知られています。ドウの全面に凸凹を作って、溶かしバター、シナモンとブラウンシュガーをその中に盛り入れてプディングにしたものです。

ビアードはモラヴィアンケーキを食べてこれをパンにしようと思ったのでしょう。シュガーケーキを焼く型の1.5倍の深さの型を使ってその中にドウを入れたのですが、型の深さに比例して、焼き時間を1.4倍にしなければならなくなりました。砂糖を180℃で35分間焼けば上の絵のようになります。ちょっと強引過ぎた?ようです。彼はレシピの粉の量を3~5 1/2Cと幅を持たせて書いています。3Cの場合はトッピングは焼いている途中で生地の中に埋もれて焦げませんが、5 1/2Cの粉でドウを作った場合は最初の絵のように、トッピングはドウの上を滑って周りのクラストを焦がしてしまいます。しかも絵からも分かるように柔らかい生地のために、まるでパウンドケーキのように真ん中が割れます。

モラヴィアンシュガーケーキの長所を持ったパンを作るにはいくつかの工夫が必要になってきます。モラヴィアンケーキの内容を踏襲しつつ新しいモラヴィアンコーヒーケーキ(パン)を作ってみることにしました。

新しいお菓子や料理を作るには幾つかの方法があります。その中で手始めに試みることは、”内の物は外に、外の物は内に”という方法です。「何それ?」といわれるかもしれませんが、これがなかなかいい方法なのです。
ここでは、外にかけた物を中に入れて巻き込むだけの事ですが、フィリングの一部を取り出してトッピングにすることもアイデアの一つとしてとりあげることができます。(その逆も可能です)幾つかの例はこれまで教室で実際に作ってお見せしてきたので、「あれの事!」と思い出されることでしょう。それでは私の作ったモラヴィアンコーヒーケーキの絵を張り付けておきましょう。砂糖の量を減らすためにクルミのみじん切りを一緒に入れました。食べる前に厚くスライスしてラップに包み40秒ほど電子レンジにかけると焼きたてのフカフカした風味が味わえます。







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