こうして、棚田の案山子ロードの連載の最終日、あの案山子たちが、どうか倒れたり壊れたりしないようにと、願いながら、しっかり踏ん張って欲しいと思う。
案山子として好きというよりも、この新見南吉のお話が大好きなのだ。
ごんぎつねは、多分このような風景の中に展開していったお話だろうと、高台に立って稲渕の里を見下ろしていた。
その日から、ごんの償いが始まった。
夜のうちにそっと兵十の家の前に、償いの品を置いてきていたごんだったが、
ある日、それを兵十に見つかって「いたづらぎつねめ!」といって、鉄砲で撃たれてしまった。
傍においてある栗や柿を見た兵十は、「ごん、おまえだったのか。」と倒れたごんに声をかけた。
兵十の鉄砲の先から青い煙が・・・。
死を持ってしか分かり合えなかったごんと兵十の気持ちの悲しみが青い煙に象徴された最後の場面の、このごんぎつねを見つめていると、涙が出そうになった。
案山子ロードは、見る人の連想をこのように自由にしてもらえる空間である。
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