猫の友情を描いた『ルドルフとイッパイアッテナ』(2016年東宝制作)という、長編CGアニメ映画を見た。この作品を見て、本当に友情はいいなあと心に染みたのである。ルドルフの声を、女優の井上真央、ボス的な野良猫イッパイアッテナの声を鈴木亮平が担当したことでも話題となったアニメ映画である。
この映画のストーリーは、岐阜で飼われていた黒い子猫が、ふとしたことから外に飛び出し、飼い主を追いかけていく中で長距離移動の車の荷台に乗ってしまったことで、東京の江東区までやってきてしまうことから始まる。そこで、この小岩を寝城にしている大型のトラ模様の野良猫イッパイアッテナと知り合い、1年もの間共同で生活をしながら、イッパイアッテナのインテリな知識を教え込まれる中、岐阜の飼い主の所に戻ろうとする、言わば「母を訪ねて三千里」的な物語展開ということになる。ボス的な「イッパイアッテナ」という名前は、ルドルフに名前を聞かれたとき、「いっぱいあってな(名前がいっぱいあって、どれが名前かはむずかしい)」と答えたことから、ルドルフがこれが名前であると勘違いしたことから、名前となってしまったのである。また、このボス猫「イッパイアッテナ」は、元は飼い猫だったが、飼い主がアメリカに転勤することになってしまい、連れていけないことから野良猫になってしまったという経緯がある。元飼い主は、1匹になっても困らないように、日本語を1年間に渡って教え込んだことで、文字(漢字も含め)を読めるという、素晴らしい猫なのである。図書館等で本を読みあさり、人間と同等の知識を持ったスーパー猫なのであった。この猫に、文字を教わったルドルフは、人間の文字を解読でき書けるレベルにまでなる。これが、そのあとの展開に大きな役割を果たすのである。
この作品の感動な点がある。商店街の景品旅行で岐阜への秋の味覚バスツアーが商品であると分かってルドルフはバスに紛れ込み、故郷の岐阜の戻ることを決意する。この走行会を前夜開くにあたり、食べたい肉をイッパイアッテナは、天敵であるブルドッグに提供依頼に行くのであるが、その時にブルドッグ犬デビルに攻撃され瀕死の重傷を負う。何も言わずにどこかへ行ってしまったイッパイアッテナの行動は、実は最後の送別晩餐会にルドルフが食べたかった肉の調達に行っていた、しかも天敵のところへ。イッパイアッテナが重症になった経緯を聞いたルドルフは、恋焦がれていた岐阜への帰省をやめ、イッパイアッテナの仇討にブルドッグ犬デビルのところに向かい、泳げないデビルを池に放り込み、復讐を敢行するのである。イッパイアッテナの「絶望は愚か者の答え」という格言を終始自分に言い聞かせる場面があり、感動するのである。2匹の猫の友情が、じんわりと心に染み入る良い作品だと感じた。
- 作者の斉藤洋が後に執筆した自伝『童話作家はいかが』によると、この話の舞台は斉藤が育った江戸川区北小岩の、主に京成線北側の地域だという。また後に母と子のテレビ絵本内で放映されたアニメでは、ルドルフ達がよく行く商店街の名前が『ちよだ通り商店街』と出ていたが、実際に北小岩と隣接する葛飾区鎌倉に『千代田通商店会』という名前の商店街が存在する。なお、続編ルドルフといくねこくるねこにて電車に乗って浅草へ行く描写で、浅草方面へ行く地下鉄直通に乗っていることからもルドルフたちの舞台の最寄駅が京成線の駅であることがうかがえる。
- ルドルフが岐阜の話をしたときに出てくる「赤い市電」とは2005年に廃止された名鉄岐阜市内線のことである。また、発表当時はまだ名鉄電車(特に路面電車)は赤色が主流であった。
- ルドルフが自分の故郷が岐阜市だと分かるきっかけとなった岐阜商業高校は、作品が執筆・出版された1986年(昭和61年)、及び1987年(昭和62年)に、実際に甲子園へ出場している。
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