横山由依さんがチームKメンバーに昇格して初めての劇場公演を見て来た。と言っても、私としては横山さんを絶対推さないことに決めているので、たまたま私が仕事を無理やり切り上げて電車に飛び乗って秋葉原から走って劇場に行ったら開演にどうにか間に合っただけであって、メンバー昇格直後の喜びに満ちているであろう姿をぜひ見たいとか、特にそういった理由ではないわけでもない。
廊下の壁では、すでに横山さんの写真がチームKに移されていた。ただし、この日は研究生公演。こういう場合、歴史というか過去の事例では、自己紹介に先立つ全員挨拶で、たとえば「チームA、藤江れいなとチーム研究生です」といった挨拶の仕方をしていたのだが、今回は普通に「チーム研究生です」だった。とりあえず今回は昇格の挨拶をする前だからそうしただけで、次回からは「チームK、横山由依とチーム研究生です」に変わるかも知れないが、変わらないかも知れない。
横山さん自身は、良い笑顔ではあったけれど、もともと全力投球で、素晴らしい笑顔でステージを務めている人なので、普段の何割増しということもなく、いつも通りに良いステージングであったと思う。研究生公演全体として見ても、非常に良かった。もちろんこれまでも、研究生一人一人は劇場公演を頑張っていただろうけれども、それでもなお「劇場公演で頑張れば、きちんと見ている人はいて、ステップアップへにつながるのだ」という道筋が明らかになったことで、モチベーションがさらに高まったのだろう。
横山さんは劇場であれだけ頑張っても「ミニスカート」ユニットには入れてもらえず、「カスペルスキー研究所」サイトでも、他の9期生5人はCMを模した動画つきなのに、横山さんは10期生4人と同列でその動画がない、といった扱われ方だった。しかし、そういった「外向け仕事での序列」とは別に、AKB48本体を担う一員として、スタッフおよびファンからの信頼を得たのは、劇場公演に貢献した努力家、横山さんだったのである。以前のエントリで述べたことの繰り返しになるけれども、横山さんが真っ先にメンバーに昇格したことで、AKB48の原点が劇場にあり、その劇場が「頑張った人が報われる場所」であり続けているということを、実例を以て示せたと思う。いろいろな意味で、本当に良かった。
加えて言うなら、メンバーの枠に空きができたあと、それを放置しなかったのも良かった。もちろん、タイミングの良し悪しは多少の運も働く。とは言え、現状でメンバーをも感心させるほどの努力家であり、メンバーに匹敵する実力を身につけつつある人を、いつまでも研究生に留めていたら、飼い殺し状態になってしまう。意識の高さに見合った、高いポジションで遇して、さらなる進歩を促すというのは、大切なことなのだ。
少し話を戻すが、公演を見ていると、他の研究生にとっても、今回の横山さん昇格は良い刺激になったことが窺われた。あくまでも私の妄想だが、研究生によって、単純に同期あるいは身近な先輩の昇格がうれしくて仕方のない子もいれば、「私も頑張ろう」という感じの子もあり、そして「次こそは私が」と対抗心を燃やしている人もいるように見えた。そうした思いが、自分でも意識しないうちに、普段より一段上の力を引き出してくれることがある。そういう「一つ上に突き抜けた経験」を持つことで、表現者としての実力はさらに伸びていく。
あくまでも私の見た印象では、うれしくて仕方のない感じは、阿部さん、加藤さん、入山さんあたりと、9期生では永尾さん。自己紹介MCで喜びのあまり泣いてしまった阿部さんについては、ファン仲間が「阿部さんがああいうところであんな喜び方をする子だとは思わなかった」と言っていたけれども、そのMCに限らず、とにかくステージ全体にわたって、喜びと前向きな意欲が満ち溢れていた。このところ目に見えて力を伸ばして来ている一人ではあるのだけれど、さらにこれでグンと伸びそうな気配。永尾さんについては、私の偏見では、もっと対抗心を持った方が良いんじゃないかくらい、素直に喜んで祝福している印象。実は永尾すっごい良いやつだろお前~、などと内心思ってしまったのだが、あくまでも私の妄想なので念のため。
一方、私も頑張ろう風に見えたのは、山内さん、中村さん、金沢さんあたり。ただ、らんらんもこまりこも、普段から全力でしっかり踊り切っているから、今日だけ特別に良いというわけではなかった。ただ表情というか、いわゆる「目からオーラ」が、いつもよりは少し多めだったかなと思う。この2人も劇場公演で特に頑張っている人たちなので、遠くないうちに良いことがあって欲しいなぁと思う。金沢さんは、いつもかなり良いパフォーマンスであるにも関わらず、「最後の一適」を搾り出せていなかったのが、この日は出し切れていた印象。
そして「次こそは私が」に見えたのは(くどいようだが私の印象であり妄想である)、大場さん、市川さん、仲俣さん。特に大場さんがあんなにステージにのめりこんでいる表情は初めて見た。大場さんはステージ上でいつも非常に冷静で、ミスも少なく非常にソツのないパフォーマンスをする。確実さ、堅実さと言う意味では大変良いのだけれど、ともするとそれが醒めた印象にも見えて、ステージパフォーマーとしての面白みに欠けるきらいがあったのだが、この日は違った。いつもの冷静さ、正確さは保ちつつも、客の眼を惹きつける情熱を垣間見せた。ああいうステージングを日々重ねていけば、大場さんはさらに一皮むけて、表現者としての階段をまた一段、いや何段も上ることができるだろう。
そんなわけでチーム研究生は今、どの子も伸び盛りで、本当に見ていて楽しい。やはり希望というものは、成長のための最良の栄養素なのだ。
しかし、横山さんについては、あえてここで、厳しいことを言っておかなければならない。昇格に浮かれるような人でないことは百も二百も承知だが、それでも心のどこかでホッとする部分はあるだろう。だが、そこで気を緩めるようなことがあると、あっという間に魔が入り込んで来るのが、芸能界という場所だ。メンバーを目指すというのは「研究生としての」目標ではあっただろうが、それが果たされた今、アイドルとして、芸能人としての本当のスタートを、むしろここから切ることになる。そして横山さんの行く手は、必ずしもバラ色の未来ではない。
今回、横山さんは9・10期生から最初に一人だけ昇格し、一緒に昇格する仲間はいない。比較的良くまとまっていた今のチーム研究生から、いわば9・10期生のトップランナーとして駆け出したことになる。おそらくはこれから、これまで親しかった9・10期生と、微妙に立場が違って来て、話がうまくかみ合わない場面が出て来て、悩みを打ち明けたくても相手に分かってもらえない寂しさを感じることが増えるだろう。もっとも、これについては、チームKの中にも、そして他チームにも、研究生からメンバーに昇格して来た先輩が山ほどいるのだから、そういう人たちと話し合えるようになれば問題はなさそうだ。
しかし、もう一つ問題がある。研究生でいる間は、研究生同士の中で相対的に上位でいられたとしても、ここから先は、メンバー48人中の48番目として再スタートを切ることになる、という点だ。一方では前述のように、トップランナーの孤独に近いものを感じながら、視点を変えれば、たった一人、一番後ろから走り出さなければならないのだ。しかも、7期生までと、9期生である横山さんの間には、少し開きがある。この差を一人で追うことに気がついた時は、おそらく、昇格の喜びの大きさが、そのまま裏返して一気に不安となって押し寄せて来るほどの衝撃を受けるだろう。そしてもちろん、AKB48だけがアイドルの、芸能界のすべてではない。多くのアイドルが地の底を這うような努力を重ねながら、いつかAKB48に取って代わろうとしている。
横山由依さん、あなたはこれから芸能界という、魑魅魍魎の棲むオソロシイ世界に、足を踏み入れることになった。あなたがこれから上っていく道は細く、険しく、そしてちょっと足を踏み外せばすぐに断崖絶壁が待っているような道だ。ここからがますます大変であり、本当の頑張りどころになる。今まで以上に辛く、寂しく、悔しい思いもするだろう。それらを内に秘め、輝きに変えていくのが、これからのあなたの仕事になる。それが出来る人だと見込まれたからこそ、あなたはメンバーに選ばれたのだ。どうかそのことを、あえてこの喜ばしい時に、胸に刻んでもらいたい。メンバー昇格、本当におめでとう。
廊下の壁では、すでに横山さんの写真がチームKに移されていた。ただし、この日は研究生公演。こういう場合、歴史というか過去の事例では、自己紹介に先立つ全員挨拶で、たとえば「チームA、藤江れいなとチーム研究生です」といった挨拶の仕方をしていたのだが、今回は普通に「チーム研究生です」だった。とりあえず今回は昇格の挨拶をする前だからそうしただけで、次回からは「チームK、横山由依とチーム研究生です」に変わるかも知れないが、変わらないかも知れない。
横山さん自身は、良い笑顔ではあったけれど、もともと全力投球で、素晴らしい笑顔でステージを務めている人なので、普段の何割増しということもなく、いつも通りに良いステージングであったと思う。研究生公演全体として見ても、非常に良かった。もちろんこれまでも、研究生一人一人は劇場公演を頑張っていただろうけれども、それでもなお「劇場公演で頑張れば、きちんと見ている人はいて、ステップアップへにつながるのだ」という道筋が明らかになったことで、モチベーションがさらに高まったのだろう。
横山さんは劇場であれだけ頑張っても「ミニスカート」ユニットには入れてもらえず、「カスペルスキー研究所」サイトでも、他の9期生5人はCMを模した動画つきなのに、横山さんは10期生4人と同列でその動画がない、といった扱われ方だった。しかし、そういった「外向け仕事での序列」とは別に、AKB48本体を担う一員として、スタッフおよびファンからの信頼を得たのは、劇場公演に貢献した努力家、横山さんだったのである。以前のエントリで述べたことの繰り返しになるけれども、横山さんが真っ先にメンバーに昇格したことで、AKB48の原点が劇場にあり、その劇場が「頑張った人が報われる場所」であり続けているということを、実例を以て示せたと思う。いろいろな意味で、本当に良かった。
加えて言うなら、メンバーの枠に空きができたあと、それを放置しなかったのも良かった。もちろん、タイミングの良し悪しは多少の運も働く。とは言え、現状でメンバーをも感心させるほどの努力家であり、メンバーに匹敵する実力を身につけつつある人を、いつまでも研究生に留めていたら、飼い殺し状態になってしまう。意識の高さに見合った、高いポジションで遇して、さらなる進歩を促すというのは、大切なことなのだ。
少し話を戻すが、公演を見ていると、他の研究生にとっても、今回の横山さん昇格は良い刺激になったことが窺われた。あくまでも私の妄想だが、研究生によって、単純に同期あるいは身近な先輩の昇格がうれしくて仕方のない子もいれば、「私も頑張ろう」という感じの子もあり、そして「次こそは私が」と対抗心を燃やしている人もいるように見えた。そうした思いが、自分でも意識しないうちに、普段より一段上の力を引き出してくれることがある。そういう「一つ上に突き抜けた経験」を持つことで、表現者としての実力はさらに伸びていく。
あくまでも私の見た印象では、うれしくて仕方のない感じは、阿部さん、加藤さん、入山さんあたりと、9期生では永尾さん。自己紹介MCで喜びのあまり泣いてしまった阿部さんについては、ファン仲間が「阿部さんがああいうところであんな喜び方をする子だとは思わなかった」と言っていたけれども、そのMCに限らず、とにかくステージ全体にわたって、喜びと前向きな意欲が満ち溢れていた。このところ目に見えて力を伸ばして来ている一人ではあるのだけれど、さらにこれでグンと伸びそうな気配。永尾さんについては、私の偏見では、もっと対抗心を持った方が良いんじゃないかくらい、素直に喜んで祝福している印象。実は永尾すっごい良いやつだろお前~、などと内心思ってしまったのだが、あくまでも私の妄想なので念のため。
一方、私も頑張ろう風に見えたのは、山内さん、中村さん、金沢さんあたり。ただ、らんらんもこまりこも、普段から全力でしっかり踊り切っているから、今日だけ特別に良いというわけではなかった。ただ表情というか、いわゆる「目からオーラ」が、いつもよりは少し多めだったかなと思う。この2人も劇場公演で特に頑張っている人たちなので、遠くないうちに良いことがあって欲しいなぁと思う。金沢さんは、いつもかなり良いパフォーマンスであるにも関わらず、「最後の一適」を搾り出せていなかったのが、この日は出し切れていた印象。
そして「次こそは私が」に見えたのは(くどいようだが私の印象であり妄想である)、大場さん、市川さん、仲俣さん。特に大場さんがあんなにステージにのめりこんでいる表情は初めて見た。大場さんはステージ上でいつも非常に冷静で、ミスも少なく非常にソツのないパフォーマンスをする。確実さ、堅実さと言う意味では大変良いのだけれど、ともするとそれが醒めた印象にも見えて、ステージパフォーマーとしての面白みに欠けるきらいがあったのだが、この日は違った。いつもの冷静さ、正確さは保ちつつも、客の眼を惹きつける情熱を垣間見せた。ああいうステージングを日々重ねていけば、大場さんはさらに一皮むけて、表現者としての階段をまた一段、いや何段も上ることができるだろう。
そんなわけでチーム研究生は今、どの子も伸び盛りで、本当に見ていて楽しい。やはり希望というものは、成長のための最良の栄養素なのだ。
しかし、横山さんについては、あえてここで、厳しいことを言っておかなければならない。昇格に浮かれるような人でないことは百も二百も承知だが、それでも心のどこかでホッとする部分はあるだろう。だが、そこで気を緩めるようなことがあると、あっという間に魔が入り込んで来るのが、芸能界という場所だ。メンバーを目指すというのは「研究生としての」目標ではあっただろうが、それが果たされた今、アイドルとして、芸能人としての本当のスタートを、むしろここから切ることになる。そして横山さんの行く手は、必ずしもバラ色の未来ではない。
今回、横山さんは9・10期生から最初に一人だけ昇格し、一緒に昇格する仲間はいない。比較的良くまとまっていた今のチーム研究生から、いわば9・10期生のトップランナーとして駆け出したことになる。おそらくはこれから、これまで親しかった9・10期生と、微妙に立場が違って来て、話がうまくかみ合わない場面が出て来て、悩みを打ち明けたくても相手に分かってもらえない寂しさを感じることが増えるだろう。もっとも、これについては、チームKの中にも、そして他チームにも、研究生からメンバーに昇格して来た先輩が山ほどいるのだから、そういう人たちと話し合えるようになれば問題はなさそうだ。
しかし、もう一つ問題がある。研究生でいる間は、研究生同士の中で相対的に上位でいられたとしても、ここから先は、メンバー48人中の48番目として再スタートを切ることになる、という点だ。一方では前述のように、トップランナーの孤独に近いものを感じながら、視点を変えれば、たった一人、一番後ろから走り出さなければならないのだ。しかも、7期生までと、9期生である横山さんの間には、少し開きがある。この差を一人で追うことに気がついた時は、おそらく、昇格の喜びの大きさが、そのまま裏返して一気に不安となって押し寄せて来るほどの衝撃を受けるだろう。そしてもちろん、AKB48だけがアイドルの、芸能界のすべてではない。多くのアイドルが地の底を這うような努力を重ねながら、いつかAKB48に取って代わろうとしている。
横山由依さん、あなたはこれから芸能界という、魑魅魍魎の棲むオソロシイ世界に、足を踏み入れることになった。あなたがこれから上っていく道は細く、険しく、そしてちょっと足を踏み外せばすぐに断崖絶壁が待っているような道だ。ここからがますます大変であり、本当の頑張りどころになる。今まで以上に辛く、寂しく、悔しい思いもするだろう。それらを内に秘め、輝きに変えていくのが、これからのあなたの仕事になる。それが出来る人だと見込まれたからこそ、あなたはメンバーに選ばれたのだ。どうかそのことを、あえてこの喜ばしい時に、胸に刻んでもらいたい。メンバー昇格、本当におめでとう。