監督:森田芳光
原作:磯田道史 『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書刊)
脚本:柏田道夫
《キャスト》
猪山直之:堺雅人
猪山駒(直之の妻):仲間由紀恵
猪山 直吉(直之の息子・少年時代役):大八木凱斗
猪山成之(直之の息子・元服後の青年時代役):伊藤祐輝
猪山信之(直之の父):中村雅俊
猪山常(直之の母)松坂慶子
詳細は「武士の家計簿・オフィシャルサイト」でどーぞ。
時代劇というものに、あまり興味のなかったわたくしですが、この映画を観た後の気持は
真っ当に生きる加賀藩の「後算用者=藩の会計処理の専門家」である猪山家三代の下級武士のつつましい物語に
いたく感動しました。
刀を振り回すシーンや、戦闘シーン皆無の時代劇は、ほのぼのと静かに生真面目に展開されていました。
原作者の磯田道史は、金沢の加賀藩のそろばん侍一家の詳細な家計簿を発掘し、調べあげて小説化しているようです。
時代の波に流されながらも(江戸時代から明治時代に跨る。)つつましやかに、現実を見つめ、正義を貫いた三代の物語である。
詳しいストーリーについては書きませんが、トピックス2つを書いておきます。
まずは、家族の食事の時に繰り返された、直之の父親信之の「赤門の自慢話」です。
現在の東大赤門は、もとは旧加賀屋敷御守殿門であり、輿入れする将軍家のお姫様がくぐる門でもありました。
その輿入れの際、予算不足ゆえ赤門の塗り替えは前面のみとされたのだそうです。
何故、前面のみでよろしいのか?それは輿入れするお姫様は、門をくぐったら後を振り向いてはいけないという約束事があったからです。
このような加賀藩の財政困難の乗り切り方があったとは!
猪山直之は父親と同じ職務に従事することになりました。
算盤と筆だけの地味な仕事ながら、几帳面に努めるうちに「御蔵米」の勘定役に任命される。
ここで、飢饉に苦しむ農民への「お救い米」の量と、供出米の量との数字が合わないことに気付く。
中間で私腹を肥やす城の役人の悪事を独自につきとめ、左遷されそうになるが、人事は刷新された。
城の財政の倹約は殿様の食事にまで及ぶが、これもクリアー!
身分昇進したものの、下級武士の家計も苦しい。
主人自ら家計簿をつけて、さまざまな工夫を凝らして、家計立て直しもはかるのだった。
直之の息子成之の時代には、ついに大政奉還の時代に入る。
しかし、直之の子供時代からの成之への「算盤侍」としての厳しい教えと、その才能は
近代海軍のなかで花開くことになっていった。
時代は変わる。しかし、つつましく生きる人間の清明さは、変わることはないのでは?