物語:アク・トンバ その4
「では、王様はいつかはこの世を去るのですか…」
国王ケサルはザラに目をやった。眼差しは冷たく鋭かった。
ザラは数日の間、自分がこの問いを口にしたのを後悔した。
国王も自分の目がどのような光を発していたのかが気になっていた。
亡くなった兄ギャツァの息子、リン国の王位の継承者をこのように不安にさせてしまったのは、もしかして自分も人間界の国王と同じように誉れ高い王位を捨てるのが惜しいからだろうか。
もし人々がそれを知ったら、物語を一つ創り出し、アク・トンバに自分を風刺させるのだろう。
幸いなことに、国王もまたユーモアの持ち主であり、こう考えて自分を笑い種にしたのである。
それから、自らを揶揄するような口調で言った。
「この問題はアク・トンバのところへ行って尋ねたほうが良いかもしれぬ」
「物語の中の人物に?」
「私は一度だけ彼と会った。だがその後、彼は姿を隠してしまった。私の何かが彼に嫌われたのだろう。お前は愛すべき若者だ。彼はお前を避けることはないだろう。もしお前が彼の物語の中に現れ、彼から風刺されたり弄ばれたりされなかったら、それは、お前が良い国王ということだ。だから、お前は私のことを心配しなくてよい。ただ、彼を恐れなくてはならない」
「王様も物語の中へ入って行くのですか」
「多くの者が私の物語を語るだろう。だがアク・トンバの話と一緒にされることはない。多くの者が私の物語を語る。千年を超えて語られるだろう。お前は私の言ったことを信じるか」
「信じます。王様は神です。神は未来を予知することが出来るのですから」
「物語を語る者すべてを私が選ぶわけではない。だが、自分でも幾人かは選ぶことが出来る。私はアク・トンバに似た者を選ぶだろう」
ここまで言って国王は笑った。
目の前にひょろひょろと痩せた人物の姿が浮かんだからである。
「その者は、この世に何か借りがあるような姿をしている。仕打ちを受けているようなのだが、何の仕打ちなのか分からない様子をしている」
こう考えて、国王は気持ちが高ぶって来た。
「戻りなさい。眠らねばならない。夢で彼に会えるような気がしてならないのだ」
「それは、アク・トンバですか?」
「違う、千年後の人間だ。アク・トンバによく似た人物だ」
「では、王様はいつかはこの世を去るのですか…」
国王ケサルはザラに目をやった。眼差しは冷たく鋭かった。
ザラは数日の間、自分がこの問いを口にしたのを後悔した。
国王も自分の目がどのような光を発していたのかが気になっていた。
亡くなった兄ギャツァの息子、リン国の王位の継承者をこのように不安にさせてしまったのは、もしかして自分も人間界の国王と同じように誉れ高い王位を捨てるのが惜しいからだろうか。
もし人々がそれを知ったら、物語を一つ創り出し、アク・トンバに自分を風刺させるのだろう。
幸いなことに、国王もまたユーモアの持ち主であり、こう考えて自分を笑い種にしたのである。
それから、自らを揶揄するような口調で言った。
「この問題はアク・トンバのところへ行って尋ねたほうが良いかもしれぬ」
「物語の中の人物に?」
「私は一度だけ彼と会った。だがその後、彼は姿を隠してしまった。私の何かが彼に嫌われたのだろう。お前は愛すべき若者だ。彼はお前を避けることはないだろう。もしお前が彼の物語の中に現れ、彼から風刺されたり弄ばれたりされなかったら、それは、お前が良い国王ということだ。だから、お前は私のことを心配しなくてよい。ただ、彼を恐れなくてはならない」
「王様も物語の中へ入って行くのですか」
「多くの者が私の物語を語るだろう。だがアク・トンバの話と一緒にされることはない。多くの者が私の物語を語る。千年を超えて語られるだろう。お前は私の言ったことを信じるか」
「信じます。王様は神です。神は未来を予知することが出来るのですから」
「物語を語る者すべてを私が選ぶわけではない。だが、自分でも幾人かは選ぶことが出来る。私はアク・トンバに似た者を選ぶだろう」
ここまで言って国王は笑った。
目の前にひょろひょろと痩せた人物の姿が浮かんだからである。
「その者は、この世に何か借りがあるような姿をしている。仕打ちを受けているようなのだが、何の仕打ちなのか分からない様子をしている」
こう考えて、国王は気持ちが高ぶって来た。
「戻りなさい。眠らねばならない。夢で彼に会えるような気がしてならないのだ」
「それは、アク・トンバですか?」
「違う、千年後の人間だ。アク・トンバによく似た人物だ」