語り部:師匠
さて、これから物語を進めていく助けとなるように、神の子が人間界に降ったばかりの今、複雑な一族の関係を少しばかり整理しておこう。
羊飼いジンメイはここ暫く、頭の中が混乱し、ぼんやりしていた。それでもやはり、その関係をはっきりさせなくてはならない、と考えていた。
幸い、草原には英雄物語を語る語り部がいつもどこかに出没していて、その問題について必要な情報を手に入れることが出来る。
後に、彼が放送局に語りを録音に行き、無線電波がその語りを乗せ、毎日決まった時間に草原の牧人のテントのラジオから流れるようになった時、人々はそのラジオに向かって言った。
「あいつは始めっから語り部になると決められていたんだ。
だから、あんなに短い間に、あんなにたくさんの夢を見て、あんなにたくさんの不思議な人物たちと知り合ったんだ。夢の中の空白を埋めるために」
その日、草の上の露はとても重かった。羊は露を多く含んだ草を食べると胃腸を壊しやすい。そこでジンメイは遅めに出発した。
羊を追って山に上がった時、太陽はすでに高く昇り、鳴き疲れた画眉鳥はすでに歌うのをやめ、トカゲたちは体の中の冷たい血がすでに暖まり虫を捕まえようと走り回っていた。
その時、はるか遠くの道の、太陽から降り注ぐ目を射るばかりの光の後ろに、一人の語り部が現れた。
まず見えたのは人ではなく、高く挙げられた旗だった。その後、腰をかがめ背を丸めた老人が、地平線からゆっくりとせり上がって来た。
挨拶が終わると、老人は笑いながら言った。
「まだ語っていないのに、舌も唇もからからだ」
ジンメイは魔法瓶から茶を注ぎ、言った。
「さあ、オレに語ってください」
「さて、どの一段を語ろうかな」
「オレがまだはっきりと分かっていない一段を」
「若者よ、おまえも語りを学びたいのか」
「オレが夢で見るのはどれも完全じゃないんです」
「どの一段だ」
「神の子が生まれた一族について。入り組んでいて、まるでこんがらかった羊の毛みたいで…」
老語り部はジンメイの答えを聞くと、羊が草原に散って行ったのを見て腰を下ろし、語らずに、言った。
「そういうことなら、ワシはお前の役に立つかもしれん」
「それなら、オレの師匠だ」
「それなら、ワシはお前の師匠だ」
さて、これから物語を進めていく助けとなるように、神の子が人間界に降ったばかりの今、複雑な一族の関係を少しばかり整理しておこう。
羊飼いジンメイはここ暫く、頭の中が混乱し、ぼんやりしていた。それでもやはり、その関係をはっきりさせなくてはならない、と考えていた。
幸い、草原には英雄物語を語る語り部がいつもどこかに出没していて、その問題について必要な情報を手に入れることが出来る。
後に、彼が放送局に語りを録音に行き、無線電波がその語りを乗せ、毎日決まった時間に草原の牧人のテントのラジオから流れるようになった時、人々はそのラジオに向かって言った。
「あいつは始めっから語り部になると決められていたんだ。
だから、あんなに短い間に、あんなにたくさんの夢を見て、あんなにたくさんの不思議な人物たちと知り合ったんだ。夢の中の空白を埋めるために」
その日、草の上の露はとても重かった。羊は露を多く含んだ草を食べると胃腸を壊しやすい。そこでジンメイは遅めに出発した。
羊を追って山に上がった時、太陽はすでに高く昇り、鳴き疲れた画眉鳥はすでに歌うのをやめ、トカゲたちは体の中の冷たい血がすでに暖まり虫を捕まえようと走り回っていた。
その時、はるか遠くの道の、太陽から降り注ぐ目を射るばかりの光の後ろに、一人の語り部が現れた。
まず見えたのは人ではなく、高く挙げられた旗だった。その後、腰をかがめ背を丸めた老人が、地平線からゆっくりとせり上がって来た。
挨拶が終わると、老人は笑いながら言った。
「まだ語っていないのに、舌も唇もからからだ」
ジンメイは魔法瓶から茶を注ぎ、言った。
「さあ、オレに語ってください」
「さて、どの一段を語ろうかな」
「オレがまだはっきりと分かっていない一段を」
「若者よ、おまえも語りを学びたいのか」
「オレが夢で見るのはどれも完全じゃないんです」
「どの一段だ」
「神の子が生まれた一族について。入り組んでいて、まるでこんがらかった羊の毛みたいで…」
老語り部はジンメイの答えを聞くと、羊が草原に散って行ったのを見て腰を下ろし、語らずに、言った。
「そういうことなら、ワシはお前の役に立つかもしれん」
「それなら、オレの師匠だ」
「それなら、ワシはお前の師匠だ」