黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

読書の今

2022年08月05日 13時22分39秒 | ファンタジー
 今、手許に置いて読んでいる本と言えば、
 「なぜ古典を読むのか」(I・カルヴィーノ=河出文庫)を26ページ、「第二次世界大戦秘史」(山崎雅弘=朝日新書)を222ページ、「予告された殺人の記録」(G・ガルシア・マルケス=新潮文庫)を1行半、「あいたくてききたくて旅にでる」(小野和子=PUMPQUAKES)は最終章の前の章まで。
 「なぜ古典を読むのか」は、いったん中断した。
 「第二次世界大戦秘史」は、気を入れて読んでいるさなか。まさにプーチンの戦争を理解するための必読書と言える。
 「あいたくてききたくて旅にでる」は、多くの書評で激賞されているが、それらの書評にどうも納得しかねるところがあったので、通販で取り寄せて読んでみた。民話採訪の旅の本なのに、読み進めるほどに背筋が冷たくなってくる本だった。と言っても、民話採訪者の小野氏は優しい母さんみたいな人だし、語り部のお年寄りたちも真摯な態度で語っている。民話とは、妖怪話も子殺し話もどれもこれも本当のこと、つまり人々の体験そのもので、そのような真実だけが語り継がれる、という氏の言葉が心に刺さる。
 「予告された殺人の記録」は、約40年前に邦訳本が出版されたとき、その本の冒頭の一行『自分が殺される日‥‥』の鮮烈さにうたれて、心から読みたくなるまで封印した本。まだ日本ではマイナーな作家だったが、私が興味を持ったきっかけは、安部公房がマルケスの「族長の秋」はすごい小説だと周囲に吹聴していたことを何かで読んだから。
 この「予告された殺人」は、1951年にコロンビアで実際に起きた殺人事件を基に書かれたもの。当時、彼の家族がその町に住んでいたことから、事件からちょうど30年後、関係者の大半が死没してから発表されたという。つまりノンフィクションなのだ。マルケスの人間や物事への割り切った見方は、古い日本の民話の冷徹さと共通するのではと感じられる。
 私も発表の時を待つテーマをひとつ、心の奥に隠し持っている。しかし、30年もの時の経過に耐えられるかどうかまったく自信はない。私本体がそれまで持たないのではないか。(2022.8.5)
コメント
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