BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

徒弟制度

2013年03月19日 | その他
 先日の夜のことだった。

 この雪融け時は道路が所々穴ポコだらけになる。冬の寒さでアスファルトに浸み込
んだ水が凍って体積を膨らませ、車が走行する振動で剥れ散る。舗装の継ぎ目などが
特にひどく、かの国の道路は年中こんなものかと思う。
 タイヤの半分ほどが丁度埋まる穴があった。濡れた舗面は黒くて見えづらい。そこ
を時速40キロくらいのアタシの車が通過した。あっ!まずいと思った。ダーンとい
う衝撃音だった。左前車輪のタイヤ周りが壊れても不思議じゃないのだが、そのまま
数百メートル走った。すると段々とハンドルが左にとられ、重くなった。車から降り
て左前輪をみると、空気圧が半分ほどになっている。うむーやっぱりやられたのだ。
ほぼ鋭角に瞬間の圧力が加わって側面にヒビでも入ったのかも知れない。
 そこは暗いところだったので、明るいところを走って探した。4階建ての1階に美
容室店舗がある明るい道路際に車を停めた。お店は閉店間際で、若い人が掃除などし
ていた。お店の前は駐車場になっているので、一言パンクタイヤ交換で停めさせてほ
しいとお願いした。店長らしき人が、まぁいいでしょうと言った。
 車に積んである標準工具で、ほどなくスペアタイヤに交換した。パンクしたタイヤ
はくの字に凹み、円形という形状記憶をなくしていた。
 ふとあの深い穴ポコを通過した車は、みなこんな憂き目に遭ったのではと思った。
出ていたスピードにもよるが、被害車輌は当夜続出したハズだ。こんな時、公の誰に
電話して通報すべきか分からない。通報したところでこんな夜に補修などできないだ
ろうし。
 お店の店長に一言声をかけて去ろうとした。だが店内では終業のミーテングの最中
のようだ。40代半ばの店長と、20代半ばの男女が向かい合って対峙している。
店長の表情は硬く、なにかを説いている。絶対的な立場での訓示説教かも知れない。
若い二人は神妙な表情で姿勢を真直ぐにしていた。今どきの理美容業界もまだ徒弟制
度が残っているかのような光景だった。
 アタシはドアを開けて声をかけることをためらった。さりとてそのままずらかるの
も性に合わない。店長がもし店外のアタシに気付いた瞬間に頭を下げれば、意味は伝
わるはずだ。しかし話しがなかなか終わらない。やがて5,6分は経ったろうか、店
長がこちらの目線に気付いた。アタシは素早く頭を下げ、その場を離れた。
 うむー、あの見事な今もあるのか、徒弟制度的主君的丁稚奉公的雰囲気。いまの
アタシにはもう馴染めない。
 翌日、中古タイヤ販売店に行って見てもらうと、タイヤ内にある細いワイヤー群が
列断していて、案の定修理不能と。しょうがないので中古タイヤ一輪6,000円也。
 トホホでした。

 ※写真、冬道を走るとタイヤハウスは氷つく。