先日のことだが、あんな光景を見たのは初めてだった。
近くの片側二車線の交差点で、アタシはセンターライン内側に赤信号で停まった。
すると上手からひとりの歩幅が小さく足取りのおぼつかない年輩の紳士が横断歩道を
渡り始めた。舗道は雪が融け濡れている状態だった。しかしその足取りに比べ上体・
風貌は矍鑠としている。しゃれた丸いサングラスをかけ、頭髪は少しだけ白くオール
バック、着こなしのコートは品よく姿勢もいい。泰然として前を向き歩いている。
アタシの下手に一台の乗用車が停まった。そのハズミなのか屋根に載っていた雪が
ボンネットにナダレをうった。ただそんなに大量でもなく運転席の視界を大きく遮る
ほどでもなかった。運転していたのは若い女性で、降りて雪をどかすことはなかった。
雪国ではそんな経験は誰にでもあり、特に支障がなければ大概そのままだ。
するとどうだ、横断中だったあの紳士が気を利かせたのか、右手でその女性のボン
ネットに載っていた雪を一瞬のうちに払いのけた。
女性は苦笑いをしてちょこんと頭を下げ、アタシは呆気にとられながら見ていた。
紳士は何事も無かったように飄々として歩道を渡りきった。信号が替わってアタシと
彼女の車は同時に走りだした。
あの紳士、きっと若いころは随分と女性にモテたに違いない。いやいや、いまだって
きっとモテモテなんだろう(笑)。
近くの片側二車線の交差点で、アタシはセンターライン内側に赤信号で停まった。
すると上手からひとりの歩幅が小さく足取りのおぼつかない年輩の紳士が横断歩道を
渡り始めた。舗道は雪が融け濡れている状態だった。しかしその足取りに比べ上体・
風貌は矍鑠としている。しゃれた丸いサングラスをかけ、頭髪は少しだけ白くオール
バック、着こなしのコートは品よく姿勢もいい。泰然として前を向き歩いている。
アタシの下手に一台の乗用車が停まった。そのハズミなのか屋根に載っていた雪が
ボンネットにナダレをうった。ただそんなに大量でもなく運転席の視界を大きく遮る
ほどでもなかった。運転していたのは若い女性で、降りて雪をどかすことはなかった。
雪国ではそんな経験は誰にでもあり、特に支障がなければ大概そのままだ。
するとどうだ、横断中だったあの紳士が気を利かせたのか、右手でその女性のボン
ネットに載っていた雪を一瞬のうちに払いのけた。
女性は苦笑いをしてちょこんと頭を下げ、アタシは呆気にとられながら見ていた。
紳士は何事も無かったように飄々として歩道を渡りきった。信号が替わってアタシと
彼女の車は同時に走りだした。
あの紳士、きっと若いころは随分と女性にモテたに違いない。いやいや、いまだって
きっとモテモテなんだろう(笑)。