BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

圧 倒

2010年02月08日 | 古本
 古本屋さんの入口で、何度も手に取り2週間は迷った。
以前さんざん悪口を書いた、例の入り口の棚に在ったからだ。しかしわが偏狭な読書
傾向は、このところすっかり収穫が少ない。この際仕方なく、しかしそれでもひょっと
すると、これは掘り出しもんかも知れないと覚悟を決めた。
 定価は1575円だった。それが945円になっている。まだ発行されて3ヶ月と思
えば納得出来ないことも無い。(常々作家さんの印税にはなんの貢献もしていないこと
が後ろめたい)しかもカバー写真は美人で、しっかりこちらを向き、目を逸らさず捕え
て離さないのだ。ここまで美人に見つめられると、写真とはいえアタシは弱いのだ。
そしてその写真を撮ったのは、インパラも含めてあの小林 紀晴さんだ。そんなことの
偶然が(必然かも)が嬉しくて、レジカウンターへ持って行くことにした。

 カバー帯で開高 健賞の5人の選考委員が、推奨言葉を書いている。佐野 眞一さん
は「―ここまで深い世界観を持った日本人女性を生み出した」と書いている。そうだ、
若い日本の女性もついにここまで来たのだ。こんな作品に出会うと、芥川賞受賞の若
い ヘナチョコ バカネエチャン作家どもなど、クソくらえと思わせてくれる。(笑)

 中国大陸を渡る列車のなかの便器、彼女は先人の残した山のようになった糞を棒で
倒し、その上にまた糞を重ねた。その力強い振る舞いに敬服の涙がでるのだ。(笑)
 早くもアタシの本年度圧倒的ナンバー1候補だ。 これはもう現代の純文学だ!

 「インパラの朝」 著者 中村 安希(なかむら あき) 集英社 定価1575円
  ( 2009年11月18日 第1刷発行 )
  ※ 第7回 開高 健 ノンフィクション賞 受賞作