帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの新撰和歌集 巻第一 春秋 (十九と二十)

2012-03-29 00:18:36 | 古典

  



          帯とけの新撰和歌集



 言の戯れを知らず、貫之の云う「言の心」を心得ないで、解き明かされてきたのは和歌の清げな姿の
み。藤原公任の云う「心におかしきところ」を紐解きましょう。紀貫之の云う「艶流、言泉に沁みる」を実感できるでしょう。帯はおのずから解ける。



 紀貫之 新撰和歌集 巻第一春秋 百二十首(十九と二十)

 梅が枝にきゐるうぐひす春かけて なけどもいまだ雪はふりつつ 
                                     (十九)

 (梅が枝に来ている鶯、春だと声に出して、鳴くけれども、未だ雪は降りつづいている……おはなの枝に気入る、浮くひすひと、心の春を思って泣けども、未だ白ゆきはふりつづく)。


 言の戯れを知り貫之のいう「言の心」を心得ましょう。

 「梅…木の花…男花」「枝…木の枝…身の枝…おとこ」「きゐる…来て居る…気入る…心が入っている…その気になる」「うぐひす…鶯…鳥…女…浮く漬す」「春…春情」「かけて…声に出して…願って…めざして…強く思って」「なく…鳴く…泣く」「雪…白…おとこ白ゆき…おとこの情念」「つつ…してはまたする…反復を表す…し続ける…継続を表す」。



 ちぎりけん心ぞつらきたなばたの 年にひとたびあふはあふかな 
                                     (二十)

 (契った心ぞ、気の毒で心苦しい、七夕星が年に一度、逢うのは合うのだなあ……ちぎり結んだ心ぞ薄情、七夕星のように、疾しにひととき合うは、和合なのかあゝ)。


 「ちぎり…約束…誓い…男女の交わり」「つらき…薄情だ…他人ごとながら辛抱できない…心苦しい」「たなばたの…七夕星が…七夕星のように」「あふ…逢う…合う…一つになる…和合する」「かな…だなあ…だことよ…感動の意を表す」。



 清げな早春の景色に包まれてあるのは、和合の艶なる情況。対するは、清げな七夕の夜の景色に包まれてあるのは、疾しひと時ながら和合の感動的情況。



 伝授 清原のおうな


 鶴の齢を賜ったという媼の秘儀伝授を書き記している。

 聞書 かき人しらず