帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子(拾遺二十四)清げなる童の

2012-03-06 00:07:16 | 古典

  



                     帯とけの枕草子(拾遺二十四)清げなる童の


 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、この時代の人々と全く異なる言語感で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」だけである。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。

 
清少納言枕草子(拾遺二十四)きよげなるわらは

 文の清げな姿

 けがれなき童子の髪麗しい者、また、大きいので髭は生えているが意外に髪が麗しい者、丈夫そうで髪は気味が悪いほど多くあるなど多く居て、暇なく(招かれて)あちこちで尊いと信望あってこそ、法師もそうありたいと思う、業(加持祈祷)である。

 
原文
 
きよげなるわらはべの、かみうるはしき、又、おほきなるが、ひげはおひたれど。おもはずにかみうるはしき、うちしたゝかに、むくつけゞにおほかるなどおほくて、いとまなう、こゝかしこに、やむごとなうおぼえあるこそ、ほふしも、あらまほしげなるわざなれ。

 
心におかしきところ
 
清よげな子の君の、下身の立派な、また、大きくて、引けは感極まるけれど、思いの外に彼身立派な、射ちしたたかで、気味わるいほどに多いなど多情で、暇なくここかしこに、止むことないと感じられてこそ、奉仕も、そうありたいわざである。

 
言の戯れ言の心
 
「きよげ…清げ…けがれなく美しい…きっちり整っている…萎えていない」「わらはべ…童子…童髪の子…子の君…おとこ」「かみ…髪…彼身…下身…彼見…あの媾」「うるはし…麗しい…立派だ…端正だ(心や姿がきっちり整っている)」「ひげ…髭…大人の男…ひけ…引け…果て際」「うち…接頭語…射ち…発射すること」「したたか…しっかりしたさま…強そうなさま」「やむごとなう…貴く…尊く…止むことなく」「ほふし…法師…奉仕…おとこの奉仕…女を山ばの頂上に送り届けること」「わざ…術…業(加持祈祷)…行為」。


 「文の清げな姿」は、加持祈祷するのを業とする法師とその使用人たちの望ましいありさま。
 
添えてある「心におかしきところ」は、女に奉仕する男の「子の君」の望ましいありさま。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。