時期に後れた攻撃防御方法(建物買取請求権)

2014-11-29 15:39:03 | 司法試験関連

「訴訟の完結の遅延」につて、最判昭和30年4月5日をどう考えるか問題となる。

この判例の判断は、買取請求権は、それが行使されると同時に建物所有権移転の効果が生ずるのであり、このための特段の証拠を要するものではなく、建物買取請求権の行使に関する主張が訴訟の完結を遅延させるものとは言えないから却下したのは違法である、と言うものである。

確かに、買取請求権の行使部分だけを見れば、その通りであろう。所有権移転の効果しかないからである。しかし、これを一般化してしまうと、買取請求権の訴訟上の行使は、いかに時機に遅れても却下されることはないことになってしまいかねない。この立場に対しては、買取請求権があれば、原告は建物収去ではなく、建物引渡請求に訴えを変更するのが常であり、これに対して被告は、買取代金支払まで同時履行の抗弁権ないし留置権を主張することになり、そのためには結局、建物の時価の鑑定が必要となるという理由から、訴訟が遅延する可能性は否定できないという指摘がある。

<応用事例>

詐欺取消権の場合と建物買取請求権の場合で比較事例。共に、前訴で時機に後れた攻撃防御方法として却下され(157条)、その後、後訴たる請求異議訴訟で持ち出すことの可否。

詐欺取消権は請求原因にならない、建物買取請求権はなる、というのが座りが良い。

建物買取請求権について、請求異議原因になるという理由付けをまずしっかりすること。

前訴の請求権とは別の実体法上の権利であること、その権利が事実上行使し得なくなる(却下されても実体法上の権利まで無くなるわけではない)というデメリットがあることなどを強調する。建物買取請求権の場合は、手続保障の意味合いが、攻撃防御方法として却下される場面と、既判力の遮断効を受けるかどうかと言う場面では異なるということである。詐欺取消権の場合は、前訴請求権に附着した抗弁であり、正に前訴でけりがつけられるべき問題である。そして前訴で抗弁としての行使を否定された以上、後訴で持ち出せなくても手続保障は満たされており、不都合はないのである。

 

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