『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

私たちは、どこから来てどこへゆくのか?    ゆうでん流ブログ・マガジン(エッセイ・旅行記・小説etc)

奥出雲紀行1

2009年06月25日 12時45分11秒 | 未知への扉
出雲へ旅立った6月22日は、朝から天気が不安定でした。羽田空港のアナウンスでは、出雲空港へ着陸できない場合は、大阪伊丹空港へ降りる可能性もあるとのことでした。私はいつもの、成るようになると腹を決めていました。で、有り難く無事、出雲入り。レンタカーで奥出雲町へ向かいましたが、1時間半の道中どしゃ降りです。「鬼の舌震」という渓谷景勝地に寄ると、濁流が逆巻き、まるでオロチの流れのように感じました。

奥出雲町は、船通山(せんつうざん)を中心とした出雲神話の里です。大昔、その山にスサノオ尊が天降りて、ヤマタノオロチを退治したという場所です。里の娘をさらい、最後のひとり稲田姫がさらわれそうになっていたところを、スサノオ尊が助けて、夫婦になったと語り継がれています。オロチを退治したさいに、尾から宝剣の天叢雲剣が出て、それがのちに三種神器の一宝とされる、草薙剣です。船通山一帯は古くからの「たたら製鉄」の里で、今も、産出される砂鉄で古式にのっとった刀剣づくりが行われています。

船通山の麓に砂鉄採集された「金流し場」跡があり、砂金を取るのと同じようなやり方で土砂を流して採集していたのがわかります。その近くの山県集落には、国の重文指定を受けている「日刀保たたら」という工場がありました。そこで刀剣が打たれていますが、野中の黒壁の工場が、宮崎アニメの「もののけ姫」に描かれた「たたら場」のように見えて、古代の風景にいざないます。私は、その景色の中に佇み、さらに意識を古代の時間へと泳がせました。すると、日本神話で語られているような、おどろおどろしい様子とは違う、ヤマタのオロチ族たちの営みが見えてくるのでした。

つづく