『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

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貧女の一燈

2009年06月13日 09時36分32秒 | 航海日誌
高野山の弘法大師御廟(即身成仏・入定の場)の拝堂「燈籠堂」には、参拝者の献じる無数の蝋燭(ろうそく)の火が灯っています。その中に、およそ1000年、灯り続けている「貧女の一燈」があります。お照という名の女人が、献じた一燈です。その当時、蝋燭は大変に高価なものでした。お照は、早くに亡くした両親を弔いたい一心で自らの髪の毛を切って売り、その金で蝋燭を買ったのだといわれます。

この貧女の一燈に伝説が残っています。ある長者が万の数の蝋燭を献上することになり、時同じくお照さんも一燈献じたいと願った。さて、その万燈祭の日のことです。僧侶の配慮で万燈より一段高い所に、一燈灯る蝋燭がありました。それを見た長者が、なぜ万を献じたのに、その上に一燈があるのかと、不平を口にしました。すると、さーっと風が巻き起こり、万燈の火がすべて消え、お照さんの一燈だけが燃えていたという。長者は万燈を献じたが心を置き忘れた。お照さんは一心の一燈が叶った。その伝説が、燈籠信仰の中心となっているそうです。