知る喜びと、撮る喜びのつぶやき通信  (読める限り読み文章にする。 歩ける限り撮り続ける『花鳥風月から犬猫太陽』まで)

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『チャイニーズ・タイプライター 1(漢字と技術の近代史)』 ―そこにアルファベットはないー

2021-09-15 09:16:08 | 読書

チャイニーズ・タイプライター 1(漢字と技術の近代史)』

              『そこにアルファベットはない』

ウェブ情報から引用

 

先ず、この本、A5版・390頁の冒頭の謝辞に、7ページにわたって、数百人に御礼を申し上げております。 本のタイトルは『チャイニーズ・タイプライター(漢字と技術の近代史)』ですが、とにかく、この本の内容と取材範囲の広さと、奥深さに驚きます。 以前から表意文字と表音文字、漢字とアルファベットの違い、それぞれの発生とその後の進歩には何か不思議なものを感じていました。

 

半世紀も前のことですが、香港に赴任直後に、中国の漢字の簡体文字に初めて接したときに、これでも表意文字かと驚きました。 日本語には『平仮名・片仮名・漢字(国字・本字・正字・異体字・俗字・略字・古字等)・ローマ字』等々とあり、優れた文字で詩歌・文学には『ぴったり』と、再認識した記憶があります。

 

また、余談ですが、文章の伝達能力で面白い記事を読んだことがあります。 『算数の問題を英文、日本文、中国文で表現すると、問題の文章の長さは、英文―日本文―中国文の順になるそうです。 スペイン語、ドイツ語、フランス語等は英語よりもう少し長いようです。 その上に、おまけがついていました。 わかりやすい順は、日本文―中国文―英語の順序と言われていました。

 

この本は、ウェブ情報で、このように紹介されています。

『中国語タイプライターを作ろうとした人びとの知的・技術的葛藤と格闘を、西洋、中国、日本を舞台にダイナミックに辿る圧巻の文化史。 製品開発やその宣伝を跡づける興味深い図版多数収載。

 

著者について

トーマス・S・マラニー
スタンフォード大学歴史学部教授。専攻は中国史。ジョン・ホプキンス大学で修士号、コロンビア大学で博士号を取得。 著書に、Coming to Terms with the Nation: Ethnic Classification in Modern China(University of California Press, 2010)などがある。

 

本書の主軸をなすのは、西洋のラテン・アルファベットを基にして作られた「近代」の象徴としてのタイプライターと、中国語との間にある距離感である。 その隔たりゆえに中国語そのものに「問題」があるとみなされ、それを克服するための「パズル」が形作られることになる。 常に西洋の「本物」のタイプライターを意識しつつ、この「パズル」を解こうとしていく人々の群像を描いていくなかで、漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源に至るまで、さまざまな話題が展開されている。タイプライターというモノを起点としつつ、それの単なる発明史をはるかに超える射程を持った本であり、関心や専門を問わず広く読まれるべき一冊である。

目次

謝辞
序論そこにアルファベットはない
第1章近代との不適合
第2章中国語のパズル化
第3章ラディカル・マシン
第4章キーのないタイプライターをどう呼ぶか?
第5章漢字圏の支配
第6章QWERTYは死せり!QWERTY万歳!
第7章タイピングの反乱
結論中国語コンピューターの歴史と入力の時代へ』

 

半世紀前・当時は文章の通信手段は、テレックス(テキストデータ)からファックス(イメージデータ)に変わる転換時期でした。

 

  • 『テレックス』は、『電話回線を使い、タイプした文字を信号化して相手に送るシステムのこと』。 テキストデータ(アルファベット)の文章が有利.

 

  • 『ファックス』は、『電話回線を使い、画像を信号化して相手に送るシステムのこと』。 テキストデータもイメージデータも大差はありません。

 

ここで、ファックスの便利さが分かった時に、やはり一番の心配は、表音文字のアルファベット圏も、表意文字の漢字圏でも『イメージデータ』の電送回線容量の問題があると思っていました。

 

当時は、日本は表意文字と表音文字の混合ですが、中国と一部の漢字圏は表意文字だけでした。 通信理論・技術と機器の発達が、この『表意文字の漢字圏での「イメージデータ」の電送回線容量の問題』全くハンデキャップにならなかったことを、現在の中国が証明しています。

 

この事実がむしろ中国にはプラスであり、日本にはマイナスであったのか、ここ数十年の中国の進歩と発展と、日本の実態をこの本、『チャイニーズ・タイプライター 1(漢字と技術の近代史)―そこにアルファベットはないー』で、勉強していきたいと思っています。

 

先ずは、冒頭のこの文章から、

『中華人民共和国の目を見張るほどの台頭において、2008年のオリンピックの開会式は、一つの活気を成すものとなった。 この国の過去20年間の及ぶ経済の実績、そしておそらくは科学や医学、技術の進歩については、中国通であれば既によく知られたことであった。

 

しかし、21世紀における中国の強さと自信を全面的に世界に見せつけたというのは、これまでになかったことだ。 8月8日は、類まれなる劇場であった。 オリンピック史上最長となった聖火リレー(18万5000マイル=13万7000キロメートル)129日間のクライマックスとなるこの式典には、約1万5000人の演者が動員され3億ドル(およそ330億円)の制作予算を誇った。 この開会の見世物だけに。 もしも大会のすべてと、北京などの都市での大規模なインフラ整備を含めるならば財政支出の総計は4400億ドル(およそ48.4兆円)に上る。』

今回の東京オリンピックの開会式では、国・地域名の50音順で入場行進が行われた。 前回の1964年のオリンピックではアルファベット順だったが、本書の序には2008年の北京オリンピックでは前代未聞の漢字の画数順で入場行進が行われたと記されている。IOCではホスト国で使われているアルファベット順という規定がある。 仮名は厳密にいえばアルファベットではないが、表音文字ではある。ところが中国の漢字は表語文字でアルファベット的な語順はないので、各国・各地域の漢字表記を画数順に並べるという異例の入場行進となったのである。

本書は、近代における西洋のラテン・アルファベットによる情報技術のグローバル化にあって、アルファベットを持たない中国の文字体系がどのような位置付けにあるのかを、タイプライターをモデルにしてつづっていく言語技術文化史である。

アルファベットは26文字、それに数字やその他の記号を合わせてもタイプライターのキーの数は40~50あれば事足りる。ところが漢字の数は何万とあり、使用頻度の高い文字に絞っても2000はある。これをキーボードに組み込むとなればとてつもなく巨大なキーボードが必要となる……。 そこから中国語タイプライターは不可能の代名詞となってしまう。 さらには、アルファベットを持たない中国語は進化論的に「不適格」であり、こんな効率の悪いものは不要だという
漢字廃止論が内外から出てくる。

要するにラテン・アルファベットが主導する情報技術(モールス信号、速記、タイプライター、ワードプロセッサー、光学文字認識、デジタルタイポグラフィー等々)の「普遍性」にとって、中国語の文字体系は無視・度外視すべきものとされていたのだ。

本書は、この圧倒的な四面楚歌(そか)状態の中でさまざまな試行錯誤の末、中国語タイプライターが完成する経緯を丁寧に跡づけていく。そこには和文タイプライターも深く関与しており、ローマ字入力を当たり前としている日本人にも考えさせるところ大である。

 

ここまで読んで、この本の『タフさ』が分かりかけてきました。 じっくりと腰を据えて、『この超情報化時代の表意文字と表音文字、漢字とアルファベットの違い、それぞれの発生とその後の進歩と、今、そこにある実態「英語と、その他外国語をどん欲に、カタカナで取り込み、進化続ける日本語の凄さと複雑さ」を、この本をテキストに』勉強したいと思っています。

 (記事投稿日:2021/09/15、#382)


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