湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

1月の合評会パート2

2016-01-23 18:24:00 | 
1月9日の合評会で残ってしまった分を、今日パート2を開いて合評しました。その中からAの下記の詩について話し合ったことを投稿します。

今日の富士

背後から追われていることに
慢心して気付かずに
最後に蹴落とされる
おかしな屈辱
情けなく笑いふと思い出した
中腹に靴を忘れた

裸足で猿山を登る
安直に傷付いた心より頼もしい
山肌を捕えては放す足指
背後にはもう誰の気配もない
心地よく笑いふと思い出した
尾根に服を忘れた

小突きあう人間たちにはわかるまい
欠伸が出るお前たちの正しさ
裸で立つ山頂の空気
今日の富士は低く見える

:作者の弁 :評者の弁
情景も感覚も伝わってくる詩です。いつものAの詩よりも落ち着いた感じ。
何となく暗くて白黒映画の心地よさ。総天然色ではないところが味。
2連目の「山肌を捕えては放す足指」という表現は、読んでいて本当に山肌を踏んでいる気になるくらい感触がよく伝わってきて好き。
この詩の主人公は、こうやって猿山を登りながら成長していく訳です。
第1連と第2連の後ろで表現を揃えているけれど、第2連は「忘れた」にせず別の述語にして、変化を表した方がよかったのでは?
確かにそうですね。主人公は変化していっているんですからね。
最後の行「今日の富士は低く見える」で、日常と違う所に入り込んだ感覚が穏やかに表わされています。
そういえば雪をかぶっていない富士を見て「今日は痩せて見えるわ」と言った人がいました。
本当に、日々の気象や時間や季節や見る時の心理状態によって違って見えるんですよ。
でも、実際に登って富士山頂まで行ったら寒くて岩がごろごろして、こんな悠長なこと言ってられないわよ。
やっぱり逗子湾あたりから見てる方がいいね。まあ、観念で猿山を書いている詩だから。平沢進の「山頂晴れて」という曲も、イメージの下敷にしています。
哲学的深さも備えているし、形も上手にデザインされていると思います。

富士登山の話まで出て、何だか盛り上がってしまいました。
今日は毎月の合評会の日時の話もしました。3月からは原則として第1土曜日14時からに固定しようという話になりました。
2月は、第1土曜日の13時~です。ではメンバーの皆さん、2月4日までにお題の詩の提出をよろしくお願いします。
コメント
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