静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

【書評182-1】  信時 潔 音楽随想集  ~バッハに非ず~     信時 裕子 編   (株)アルテスパブリッシング    2012年12月 発刊

2024-01-28 21:04:37 | 書評
  本書は戦後になって書かれた随筆22本、座談会記録3篇、3人による追悼文から成っている。此の内、随筆6本と並び、私が興味深く読んだのは意外にも座談会だ。
其のわけは、座談の相手が音楽界の人であれ、美術界からの場合でも、日本と西洋の文化対置から日本の音楽や芸術全般の将来を案じる信時氏(1887-1965年)の真摯な姿勢が
終始一貫しているからだ。それは、氏の生きた時代背景に照らすと頷ける。77年の生涯最後20年が戦後であり、前の57年は明治期に成人してからの人生であった。

 同時代を生きた山田耕作氏(1886-1965)が東京音楽学校の指揮科を出てドイツに留学したあと、日本初の交響楽団づくりに奔走し、オペラ上演に燃えた生きざまと比べ、
信時氏の歩みは対照的に質素きわまりない。弟子だった高木東六や団伊玖磨によれば「女性関係にルーズで猥談好きだった」という奔放な山田氏と信時氏は対極を生きた。
唯、山田・信時の両氏が残した作品の殆どは歌曲だが、山田と違い信時が遺した作品に映画音楽・管弦楽曲・交響曲はなかった。此のあたり信時には「唱歌」「童謡」「歌曲」の作曲が精一杯のレベルだったと言わざるを得ない。

 戦時中は両氏とも軍部の圧力で戦意高揚歌・軍歌を創らされたが、山田が作った曲の数はここでも信時とは比べ物にならないほど豊富だ。戦後の戦犯追及に際し山田は無言だったが、信時は本書で遠慮した言い回しながら『海ゆかば』が学徒出陣や戦意高揚番組のテーマ音楽に用いられた悲しみを冷たく述べている。
よほど辛かったのか、随筆で饒舌な信時はそこにいない。とかく信時の名前は『海ゆかば』に紐づけられがちだが、それはジャーナリズムの狭量さを示すものだろう。

 さて、次からは、印象に留まった随筆6本から私が感じ取った事について述べてようと思う。           < つづく >
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朝鮮人追悼碑文言をめぐる群馬県知事の判断こそ 恣意的な【政治的発言】ではないか?

2024-01-28 15:27:24 | 時評
◆ 東京新聞:朝鮮人追悼碑 撤去撤回の要望相次ぐ 各種団体や政党が提出 あすから群馬県が代執行 (羽物一隆)
* この件は既に何度か報じられているので覚えている方も多いと想像する。高崎市の県立公園「群馬の森」にある朝鮮人労働者追悼碑に関し、県が行政代執行による撤去を
  29日から予定しているのを受け、各種団体や政党が撤回を求める要望書や署名を相次いで県に提出した。
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★ この争いで私が腑に落ちない事、それは≪「朝鮮人を強制連行して労働させた」との表現が【政治的発言】なので公園に設置するのは適切でない ≫という理屈だ。
  では【政治的発言】の定義とは何? (追悼碑に書かれている事は嘘だというのか?強制では全くなかったと言いたいのか?
   戦前・戦後に多く建立された傷痍軍人や郷里の出征軍人の顕彰碑に書かれている内容をみよ。あれは軍国主精神の称揚であり、戦争の反省を何一つしない姿勢そのものが
  殆どではないか? それは戦後の反省を方向づける反戦平和の価値観からみれば【軍国主義称揚の政治的発言】でしかない。 こちらには何故撤去の声が起きないのか? 
   【政治的発言】とは『正誤は別に置いといて、議論を呼ぶから面倒くさい、横に置いておこう』と逃げる為の免罪符ではない

☆ 次は「強制連行」を【政治的発言】だから排除する姿勢とは<働いた朝鮮人は全員が志願或いは手当目当ての応募だった>と言いくるめるのに等しい暴挙だ。
  本当に全員が自発的応募だったなら【強制連行】の否定は正しいが、そんなことは占領下、日本軍の銃剣と日本警察の監視下にあった全ての朝鮮国民にとり、
  まず有りえない筈だ。 中には朝鮮での生活苦に耐え兼ね、少しでも手当てが高いなら不安だが行くしかない、との思いで赴いた人も居ただろうが、
  圧倒的大多数はイヤイヤ、或いは脅されて連行された朝鮮人だったはずだ。慰安婦にされた女性も似たような状況だったと想像できる。
   圧倒的な軍事力・警察力で支配された当時の朝鮮人&中国人は恣意的に使える安い労働力として連行された。この事実そのものを、まさか群馬県知事は否定できまい?


◎ 広島・長崎の原爆資料館で、例えばアメリカ批判の文言が掲げられたら【政治的発言】だからと撤去するのか? 原爆使用は終戦を早める為との口実で、実はソ連への
  示威・威嚇でもあった。実際、アメリカ政府は日本本土進攻を準備しており、まさか日本がすぐ無条件降伏するとは想定していなかった。これは私の憶測ではなく、
  アメリカ政府の公文書で示された事実だ。 与党政治家は、原爆使用は戦争終結には不要な非人道的ジェノサイドだとする普遍的な批判を【政治的発言】と分類するか? 
   まさかしないだろう?・・・・つまるところ【政治的発言】とは為政者による恣意的な言い回しに過ぎない事の証明である。
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≪ 今朝の3題 ≫   老害目立つメディア出演者   大陸両岸住民の「中国」意識とは?   関西万博延期or縮小を進言する高市氏の計算

2024-01-28 08:11:38 | トーク・ネットTalk Net
【1】スポニチ:音喜多議員「朝生」タブーに切り込む 田原氏に苦言「相手の発言さえぎり、机をバンバン…それが良くない」
* 「若者が政治に興味を持てないのは、政治の話が面白くないから、怖いから。・この番組を見て、若い世代が面白いと思いますか?私は思わない。出ている人は怖い顔をして、相手の発言を遮り、
   机をバンバン叩く。それが良くない(ぜんぜん違うっ!と突っ込みが入るも続ける)・違くないですよ!いくら想いがあっても、人の話を聞かずにバーンと遮ったら駄目なんです
   ・もっとフレンドリーにいきましょう。相手の話を聞いて、建設的な話をすれば、もっと若い人も政治や番組に興味を持つんじゃないですか?」などと、音喜多氏は持論を展開したという。
 ⇒ 若い頃の田原総一朗を私は知らないが、彼は森喜朗と並ぶ” 老害を絵にかいた不快な人物 ”で、私は画面に其の顔が出るやチャネルを切り替えている。
   「夜討ち朝駆け」「突撃取材」を売りにする一昔前のブン屋体質から脱却しない田原の姿勢、それは「言葉を曳き出し吠える」だけで、建設的分析や提言に繋がらない。
   メディアが田原を消費し続ける商算は<傲慢さが絵になる。そして、年長を嵩に着て政治家にも質問を浴びせる痛快感・庶民のガス抜き効果>此の二つだろう。
    だが、田原にとり音喜多氏の言葉なぞ(カエルの面にxx)だ。・・・誰かが引導を渡さねば。


【2】NEWSポストセブン:台湾市民の67%が「自分は中国人ではなく台湾人」と認識 若い世代や女性が高い傾向、「正真正銘の中国人」の回答は3%
* 1月に行われた総統選挙では、独立志向が強い民主進歩党(民進党)の頼清徳候補が、親中色の強い国民党の侯友宜候補を破った。頼氏は約558万票に対して、侯氏は約467万票で、頼氏が侯氏に約90万票の差を
  つけて当選した。
   これを調査結果と比べてみると、台湾ではアイデンティティと政治が密接に結びついており、自分を台湾人だと考えている人々は民進党に同調する傾向が強く、逆に自らを「中国人でもあり、台湾人」、
  あるいは「中国人」と思っていると答えた人は国民党寄りといえそうだ。
* このほか、「中国という国にどれくらい愛着を感じるか」という質問では、全体の11%が「とても思い入れがある」と答えているが、32%は「まったく愛着がない」と回答した。
 ⇒ ここに「社会主義を選ばなかった中華民国の人々」が≪中国≫という民族意識概念のもとに大陸に居る人達と一緒に暮らせるのか? 暮らしたいのか?という問いがある。
  以前も書いたが、内戦に敗れ台湾島に居を構えた「中華民国」は大陸から≪『独立を謀る』のではない。分裂国家のままで居続けたい、それだけなのだ。
  社会主義に合わせる分裂解消には応じたくない、嫌だ!と言っているに過ぎない。では両岸の漢民族にとり「中国」という概念は何か?

  家族の集合から国家へ。これが漢民族に強い国家意識で、「中国」は、紆余曲折を経て梁啓超が中心となって清朝までの領土を中華民国が引き継ぐ意思表明の産物だった。
  中華人民共和国は中華民国から派生した新興国家であり、台湾に住む人にすれば自分たちが誰からの「独立」と言っているというのか?と首を傾げるばかりだろう。
  台湾に住む人が求めるのは中華人民共和国との「並存」であり「独立」ではない。言葉の用い方を我々は気を付けなければならない。
  キッシンジャーは「台湾島は中国概念の一部に属す地理的位置にある」と認めた(Recognize)のであり「中華人民共和国に属すべき領土」とは同意(Agree)していない。


【3】FNNプライムオンライン:高市経済安保相「万博の延期や縮小も」 現職閣僚が首相に異例の進言
* 高市氏は、能登半島沖地震によって、資材不足や人材不足が起きていることにも触れ「復興を優先してやってほしい」と述べ、岸田首相に対し「万博の延期や縮小とかそういうことも、資材や工事をしてくれる
  人員も考えて、総理決断でしか出来ないことだから、ご判断頂けないか」と伝えたことを明らかにした。現職の閣僚が大阪・関西万博の延期に言及することは異例で、今後の国会論戦で焦点となる可能性がある。
 ⇒ 小池ゆりこ氏とは一味違う駆け引きを高市氏は繰り出す。無派閥の強みを駆使した岸田総理への揺さぶりが功を奏するか?・・また外されるのか?
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