静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

現役で働く諸氏へ::外国の会社は“日本企業のように”「気合でなんとかする」ことをしない

2024-01-08 18:36:55 | 時評
〇【日刊Spa】Amazonは“日本企業のように”「気合でなんとかする」ことをしない… 至極真っ当なその理由:【田中謙伍】
* 個人の機転で工夫したら怒られてしまう。その理由は?
  筆者がAmazon倉庫でアルバイトしていたのは、Amazon内定者時代の大学四年生の冬ごろだ。2ヶ月間、棚の商品を補充する「棚入れ」という業務を行っていたが、様々なルールがあった。その一つが、
  マンガ本など同一商品を同時に棚入れしてよいのは、「一つの棚に5冊まで」というものだ。だが、スピーディに仕事を進めたほうが効率的だと考えた筆者は、10冊まとめて本を持って棚入れしたことがあった。
  そのほうが生産性が高い、と考えたからだ。

  ある日その動きがマネージャーに発覚。すぐに「いますぐやめてください」とこっぴどく怒られてしまったのだ。「同時にたくさん棚入れしたほうが効率的じゃないですか?」
  そう口にした筆者だったが、「一つの棚に同一商品は5つまで」のルールが、選択ミスをなくし、かつスピードも確保できる上限個数であることがAmazonで決まっていたから、という説明を受けた。
  「田中くん個人の目線でいったらその行動はGOODです。ただ、田中くんみたいに間違えない人ってどれくらいいるかな?」
  マネージャーいわく、仕組みでルール化しているものは徹底しなくてはならない、秩序が崩壊するのでNGという説明だった。この些細な経験で重要なのは、「ルールを守らないことがNG」ということに加えて
  「なにが問題なのか」までマネージャーが説明したこと
。 ←<Why ?>を説明しない日本社会。だから何も根本から変えられない。

★ Amazonには「Good Intentions don’t work, only mechanism works!」という経営哲学がある。これは、直訳すると「善意は機能しない、仕組みだけが機能する」という意味である。
  「自分が少し無茶してがんばればよい」という“善意の行動”は、すべての社員ができるわけではない。そうではなく、全員が無茶なく、ミスなく適用できる仕組みを整えよ、というのだ。
   元CEOのジェフ・ベゾス氏的に言えば「役立たずの善意」は葬り去るべし、なのである。
  ← これを整えたくないから「仕事の属人化」「個人の善意と努力を評価する報酬体系」が今も続くのであり、これが日本以外の国との根本的な差になってきた。もう、それは強さではなくなっている。
  
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引用が長くなるので田中氏が挙げている他の例は省くが、いずれも「個人ではなく仕組み・システム・ITでKAIZENする」というAmazon の徹底ぶりだ。
此の記事で感心したのは単なる業務効率改善提案ではなく、疑問を抱いた従業員を『汗水垂らして乗り切ろう!』のかわりに『誰もが実行でき、採算性の向上に結び付く
" PLAN-B ! を出そう』の方向に導いていることだ。
  ・・1960-70年代のトヨタグループのKAIZEN 運動が意識改革に留まらず” PLAN-B ”まで出させるレベルだったのか?私は寡聞にして知らない。

私が若い頃に努めた製造会社の創業者は戦前の若き日、アメリカに渡りGMや家電のKelvinator で学んだことで、ホストコンピューターによる生産管理プログラムの導入に努める傍ら「マルチ・ハット」が気に入り、従業員教育のスローガンとした。多くの職場を経験させ管理職に育てる。これが疑いを挟むことなく日本中に浸透していたと思う。
「マルチ・ハット」は望ましい日本型人材育成理念として歓迎されたが、これでは作業標準フローとしてのマニュアルは書けても<Fool Proof>に拠って立つ職掌間を繋ぐ職務定義(JD)には至らない。 日本人は仕事の定義が<Fool Proof>の為に有る、とは考えたくないので<作業者個人と業務記述が1対1対応>にならない。職人技や個人の善意・発意は<Fool Proof>の対極にあるから、いつまでたってもマニュアル作成が採用・評価・教育に結び付かないのだ。

田中氏が述べていることは、Amazon 社単独の固有な習慣ではない。私自身がアメリカで働いた30年前、スタートアップに参加した会社及びつき合った企業との体験で学んだ事そのままだ。 日本型の総合的人材育成は本当に強みだったのか? 今は? 「そうではない」と認めるしかない現実があるのでは? 日本人は自身を変えられるか?
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ヤマハ、中国でのピアノ生産から撤退へ  鶴の一声で習い事も禁じるクニ

2024-01-08 10:09:08 | トーク・ネットTalk Net
【東洋経済オンライン】ヤマハ:「中国ピアノ市場の変調」により曲がり角 2024年は新たな「成長ストーリー」を描き出す年<吉野 月華>
 2023年後半に株価が急落したのは楽器大手のヤマハだ。8月頃まで5000円台前半で推移していた株価は下落を続け、足下では3000円台前半だ。インフレが進んだ欧米で、
低価格帯の電子ピアノを中心に楽器需要が想定よりも弱かった。電子ピアノは利益率が高いため、業績に与える影響が大きい。この修正で株価は一気に800円近くも下がった。
 需要が軟調な中、市中在庫の調整のために楽器の減産を実施し費用が発生したのが主な要因だ。加えて、中国での市況回復が難しいと判断し予想に織り込んだ。
 中国については2024年度も厳しい状況が続くとみる。中国では単に深刻な景気後退で市況回復が遅れているだけではない。

★ 2021年に発表された「双減政策」の影響を受け、教育向けピアノの需要が減衰している。子どもと保護者の負担軽減を目的とし、学校の宿題と学外教育の時間を
  減らすことを定めたのが双減政策だが、結果として教育熱を冷ますこととなった。
  教育向けピアノ需要の減衰がヤマハに与える影響は大きい。なぜなら、ヤマハの過去10年の収益拡大は、中国の高いピアノ需要を前提とした成長ストーリーだったからだ。
  中国では教育熱の高い都市部の富裕層を中心に、アコースティックピアノの需要が強かった。ヤマハは中国市場向けのピアノを現地生産することで利益を最大化できる体制
  を築いていた。


政府の一声で問答無用に政策が翌朝には変えられてしまう、全体主義国家の通弊は教育も例外ではない。ゲーム規制を巡る最近のニュースも全く同じだ。
ヤマハは中国でのピアノ販売に依存する「1本足打法」をやめ、日本国内への製造回帰のほか、ピアノ以外の楽器への注力を含め、新興国むけ開拓にも経営を多様化する。

妥当な戦略転換であるが、ここで改めて日本の産業界全般が心すべきは『カントリーリスク』の重要さだ。事業効率本位なら「選択と集中」だが、相手を吟味しない過度な集中はリスクを伴う。国際経済がこれほど一体化すると【サプライチェーンリスク=安保リスク】に直結するのだ。嘗ての様に悠長な時間的余裕は遺されていない。
 あらゆる資源の自給度が極めて低い日本は、他の諸国以上に素早く取り組まねば生き残れない。アメリカを含め、資源調達に『他力本願』は既に無理だ。
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