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ドナルド・サザーランドさんが死去     映画『普通の人々』

2024-06-21 09:18:55 | 文芸批評
◆【スポーツ報知】ドナルド・サザーランドさんが死去 長い闘病のすえ   88歳 息子キーファー・サザーランドが発表
   カナダ出身の俳優ドナルド・サザーランドさんが20日(日本時間21)、死去した。88歳だった。息子で俳優のキーファー・サザーランドが自身のSNSで明らかにした。
   人気コメディー「マッシュ」(70年)、「普通の人々」(80年)、「ハンガー・ゲーム」(2012年)などで様々な役柄を演じてきた。2017年には米アカデミー賞名誉賞を受賞した。

 私は映画『普通の人々』(1980年作)を映画館で見て涙を流した思い出が今も残る。たぶん、日本での公開は翌年だったろう。英文の原書をわざわざ取り寄せ読破するほど入れ込んだ。
今でもDVDを探せば観られるかもしれない。何せ40年以上も前だ。 恐らく、再び観れば、涙を禁じえないだろう。

 物語は、プールで水死した長男を傍に居た次男が救えず、それがトラウマとなり精神を病んでゆく。高校の成績が良くスポーツにも優れた長男と、大人しくて優しい地味な次男。此の対照が伏線。
其の母は長男を溺愛していただけに、水死で次男になおさら冷たく当たるようになった。それで増々精神の闇に落ちてゆく次男を憐み、父は庇い、妻と争いが募り、ある朝、妻は家を出て戻らなくなった。

 其の父を演じたのがドナルド・サザーランドだった。アメリカ訛りの薄い端正な英語で次男と語り合い、抱きしめる姿は今もハッキリ脳裏に浮かぶ。家の門を閉めて出てゆく妻の後姿を窓から見送る男。
妻を失うが追いかけはしない、哀愁に満ちた表情。次男と向き合う父としての顔。世界のどこでも、いつでも見られる<ごく普通な家庭に生きる普通の人々>に起きる亀裂の恐ろしさが胸に残る。
 映画の設定とは違うが、息子を二人持った私には忘れられない名作だ。
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