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「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え」(第七回) 進化を続けるレッチリ!ヤツらの新作を斬る!

2022-10-22 13:13:34 | 『ハウリンメガネ』コラム集

いやっはァァァ!やりよったわこの人ら!

何を冒頭から奇声をあげているのかと訝しんだ読者諸賢、興奮状態から御機嫌よう、ハウリンメガネである。
ロックファンなら筆者の気持ちもお分かりであろう。
ジョン・フルシアンテ復帰後のレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、まさかの一年以内の新作、それもフルアルバムのリリースである(10/14にリリースされたばかり)。

前作「アンリミテッド・ラヴ」から僅か半年足らずの期間でリリースされたチリ・ペッパーズ最新作「リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン」。
実はこのアルバム、マテリアル自体は前作のセッションの時点で出来上がっていたようで、前作リリース時のインタビューでもリリースの可能性には触れられていたのだ(まさかこんなに早く出すとは思わなかったが)。

前作の出来が良かったので楽しみにしていたのだが、言い切ってしまおう。

最!高!傑!作!だ!!

今回のレッチリは歌心が洪水のように溢れ出している!

ギターマガジン22年6月号で、ジョン本人がこう語っている。
「ロックが始まった時代にフォーカスしたいと思うようになってね。それは50年代後半のロックンロールや、40〜50年代に生まれたエレクトリック・ブルースだったんだ。もし自分がビートルズ、クリーム、ジミ・ヘンドリックスらと同じ時代に存在してたら?と想像してみたんだよ。(中略)エルヴィス・プレスリー、クラレンス・"ゲイトマウス"・ブラウン、フレディ・キング、アルバート・キング、バディ・ホリー、ジーン・ヴィンセント、リッキー・ネルソンなどにフォーカスしてみよう。よし、OK。じゃあそれを超えるものを作るにはどうしたらいいかな?とか、そんな風に考えるようになったんだ」(引用ここまで)

この発言からも分かるとおり、前作、今作でのレコーディングセッション(プリプロ含む)では彼らのバックボーン(の一つ)である60年代の音からさらに一昔遡り、ルーツの更にルーツに接近することを意識していたらしい。
そしてジョンに加えてフリーもフリーでここ10年ほどジャズに熱を上げていた(フリーは元々トランペッターでもあり、ジャズは大きな根の一つなのだが、学びなおしの為に大学まで行くほどの熱の入れようであった)。
つまり、作曲を主導する二人がルーツに接近していたことになる。

結果生まれたのはレッチリが築き上げてきたグルーヴの上で歌もギターもベースもドラムも歌いまくる、ハーモニーに溢れる最高のロックアルバム!
(歌も楽器も歌ってハーモニーを奏でるという意味では非常にビートリーともいえる。60年代以前の音楽を掘ることで結果ビートリーな形に行き着くというのも必然といえば必然なのだが、ビートリーにしようとしたというより、ビートルズと同じルーツを掘ったことによってレッチリらしさを保ったままで、時折フリーのベースラインがポールのように聴こえたり、ジョンの弾くフレーズからジョージのような雰囲気を感じられるのが面白い)

前作も大変良かったが、今作と比較するとジョンの復帰を強調する、つまりジョンの二度目の脱退前の「カリフォルニケイション」〜「スタディアム・アーケディアム」の雰囲気を強く打ち出した、「おおっ!ジョンが帰ってきた!」というアルバムだったともいえる。
前作と今作のレコーディングセッションは同時期のはずなので、今作収録の楽曲も前作発表時点で存在していたはずだ。
それを敢えてこのように分けてリリースしたということはおそらく「いきなりこの楽曲群を出すとジョンの復帰作というファンの期待している作風からズレる。なので昔の雰囲気が強い曲を先にリリースしよう」という意図があったのではないかと思われる。
今回のアルバムは今までのジョンのイメージと異なる音使いも多い。特に今回はエフェクティヴな音は全くといっていいほどないし、トレードマークのワウも筆者が聴いた限り、使っていないと思われる。フレージングもメロディやリフよりベースとのハーモニーを意識したものに変化している。それはジョンが新境地へ達したということであり進化だと筆者は捉えるが、ファンというのは過去のスタイルを期待しがちなものでもあり、今回のジョンの復帰劇を考えるとヘタに曲を混ぜず、キャラクターの異なる楽曲群として2作品に分割したのも理解できよう。

レッチリは今作で間違いなく一皮むけた。
思えばラップ・ロック、ミクスチャー・ロックの雄だったレッチリからメロディックかつ憂いのあるファンクロックへ変化したのが一回目のジョンの復帰だった。
そして今回、二度目のジョンの復帰によってレッチリはその肉体的なグルーヴを維持しながらもアメリカーナ、ルーツミュージックを体現できるバンドへと進化した。
今作は間違いなくレッチリを語る上での必聴盤になると断言しよう。

最後に今回の個人的聴きどころをいくつかピックアップ。

2020年に逝去したエドワード・ヴァン・ヘイレンに捧げられたA4「Eddie」。
エンディングでのジョンの咽び泣くギターソロがいい。エディに捧ぐからといってライトハンドフレーズを入れるわけでもなく、エディへの哀悼の意をジョン自身のスタイルでギターを叫ばせることで表現している。

B1「Fake as Fuck」はこれまでのレッチリでは聴けなかったハードバップなサウンド。フリーのベースもロン・カーターのようにムッチリしており、個人的に今作では一番好きな曲。こういう曲がやれるロックバンドって少ない。

B2「Bella」はZEPの「The Crunge」を彷彿とさせる、踊れそうで踊りづらい変拍子ファンクから突き抜けた青空のようなサビへ突入する不思議な爽快感のある一曲。

B3「Roulette」は一聴するとジョンらしいカッティングに聴こえるが、よく聴くとコードがガンガン変化しており、トレードマークであるファンク直系のグルーヴィに攻めるカッティングからジャズのコードソロのようなカッティングになっているのが分かる。フリーのベースソロもコンパクトにまとめられながらもメロディックでグッド。

D1「La La La La La La La La」でのビル・エヴァンスのようなくぐもったブルーなピアノ(クレジットがないがおそらくフリー)と絡むアンソニーの歌はこれまた新たなレッチリを予感させる。B1「Fake as Fuck」もそうだが、こういうジャズ的な音を持ち込んでいるのは間違いなくフリー。今作でのフリーの音はアップライトベースのようにムチッとした太く丸さのある音なのにフリーらしいゴツゴツした力強さもある素晴らしいベースサウンドが聴ける。

D2「Copperbelly」はワルツのリズムでクラシックなメロディのヴァースから浮遊感のあるコーラス、そしてヘヴィなギターソロへとスムーズに移り変わるのだが、こんな3つの構成をスムーズに移っていけるのもレッチリがこれまで積み重ねてきた歴史がなせる技といえよう。

以上、筆者が一聴して耳に引っかかったのはこれらの曲だが、当然上記した曲以外の曲もグッドメロディ&グルーヴに溢れている。
今回も例によって例の如くアナログで買ったが、やっぱりこの太いルーツに寄ったサウンドはアナログで聴くべきでしょう!
是非!アナログで!神戸三宮のタワレコにはあったから!マストバイ!

というわけで今回はここまで!
いやあ、今年は当たり年だな!んじゃまた!



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