「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

ハウリンメガネが縦横無尽に吠える「メガネの遠吠え!」(第24回) レッチリ来日決定!そして今日もギターを弾く!

2024-02-10 10:47:02 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

え!?来るの!?もう!?

はい!読者諸賢御機嫌よう!

レッチリ再びの来日公演決定に興奮中のハウリンメガネであります!

去年の来日公演は「チケット取れず」で、行った友人の話を指をくわえて、「いいなぁいいなぁ」と聞いていたのだけれど、今回こそは……取れるか?(頑張れ俺。しかし、去年の来日から一年経たずの再来日。正味今の円安を考えると商売っ気だけで来日するとも考えづらく{今の為替から考えれば利益的には他の国を回ったほうが儲かるだろう}、これがレッチリ流の日本のファンへのファンサービスなのだろう)

さて、やはり今のレッチリといえば数年前に二度目の電撃復帰を果たしたジョン・フルシアンテにどうしても目がいってしまう。
現代のギター弾きだとどうしても避けては通れぬジョン・フルシアンテ
私自身はアルバム「バイ・ザ・ウェイ」がリアルタイムだったのだが、このアルバム、ジョンがかなりの主導権を握っていた作品(それこそフリーと険悪な雰囲気になってしまったほど)で、ギターの魅力に溢れたアルバムに仕上がっている(弾きまくるギターではなく、差し引きで魅せるギターの魅力がある)。

そんなジョンのプレイの中でも私が好きなのがワウ捌き。
定番のファンキーなカッティングは勿論のこと、うっすらとフィルター的にゆっくり踏み込んだり、常時オンでトレブルブースター的に使ったりと、ワウの魅力を十全に活かしたワウ捌きは流石の一言。

ジョンがメインで使っているのはアイバニーズがリリースしているWH10(これ、発売当時は人気がなく廃番となっていたのだが、現在はジョンの使用により人気モデルとなり、リシューを重ね現行品としてはバージョン「3」が販売されている)。

実はこのワウ、日本のファンク職人、スガシカオ氏もメインのワウとして使用しているワウで(正確には姉妹機のWF10らしい。氏曰く「スライみたいな音がする」とのコメント)、レッチリファンならずとも一個持っていて損のない、ファンキーな名機なのである(私もバージョン「3」を持っている)

一般的にワウといえばダンロップかヴォックスか、というのが相場だが、この2メーカーのワウは基本的に味付けが濃い。リードプレイにはいいのだが、バッキングでいい具合にスカスカした軽いチャカポコフレーズを弾くにはフィルタの加減が強すぎるし、オンとオフで音の重心が大きく変わるので、リードからバッキングに戻る際に一気に音が重く聴こえるのである(良し悪しあるが)
だが、このWH10オンしても音のレンジがあまり変わらない。トレブルは多少強くなるが、ローも削れず、ヒール側に踏み込んでもダンロップ、ヴォックスのようなローブースト感はなく、いい具合のモコモコ具合に納まってくれる。
これによって原音から大きな違和感なくファンキーなプレイができるのである。

これにドライブペダルを足してやればちゃんとフルシアンテのようなロック的なワウプレイも勿論こなせるし、結構万能なワウペダルだと思うのだが、やはりフルシアンテのイメージが強いせいか、レッチリフォロワーの人以外だとあまり使っている印象がない。もっと使われていいペダルだと思うのだが……

いやぁ、レッチリのことを考えていたらついついワウに思考が飛んでしまった。
でもギタリストの同輩諸賢ならお分かりでしょう?

さあ、5月の来日まで心ワウワウさせながら楽しみに待とうではないか!
そして俺はチケットを取れるのか!?今回も涙を呑むことになるのか!?乞うご期待!(ご期待か!?)

んじゃまた次回!

<ハウリンメガネ筆>

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毎週火曜日は『今週のハウリンメガネ』Vol,5(2024年2月6日発行)

2024-02-06 09:26:39 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

毎週火曜日にご機嫌よう!

『今週のハウリンメガネ』!

極寒の今週も『私の一口コラム』と『その週のライブインフォ』をお届け!

 

早速『今週のハウリンメガネ』なのだが……寒い!
いや、私がステージで口走るギャグのことじゃない。気温!気候!寒い!
私の住む関西地方でもいきなりの冷え込みに襲われ、ぷるぷると震えながら職場から帰ってきた私である。
ましてこれを書いている2/5夜の時点で関東では大雪のせいで交通網が大幅に乱れているそうではないか。どうか皆様移動の際はくれぐれもお気をつけ願いたい(私も数年前に雪が降った朝、アイスバーン状になった坂で危うく車道まで滑りそうになり血の気が引いたことを思い出す)。

さて、こう寒暖差が激しくなると注意してほしいのが「ヒートショック現象」(ヒートテックじゃないよ)。
何年か前に同僚の御母堂がこれで亡くなられており、それ以来、機会があれば注意喚起するようにしているのだ。

ヒートショックというのは簡単にいえば暖かい場所と寒い場所を急に行き来することで血圧が乱高下してしまい、血管や心臓にダメージを与えてしまうことを指す。
特に多いのは冬場の浴室での事故!(あと冬場のトイレも!)
暖房の効いた部屋から寒い脱衣所へ。寒い脱衣所からさらに寒い浴室へ。そんな寒い浴室から今度は熱いお湯が張られた浴槽へ!
もうこれを読んだだけでも血圧がアップダウンしそうだが、実際本当に危ないのである。
血管や心臓に疾患を持っている人やお年を召したご老人方は勿論危険だが、健康な人でも血圧の乱高下で一種の失神状態になり、浴槽で溺れてしまうという事故もある……

これを防止するには
・脱衣所やトイレなど冷える場所には暖房を置く(速暖性のある電気ヒーターがベター)

・入浴前にシャワーなどで浴室を暖めておく(特に床。足裏が冷えると血圧が上がってしまう。トイレだったらマットを敷くなど、直接体温を奪われないようにすれば対策になる)

・湯船に入る前にはシャワーなどで体を暖めておく

・湯船の湯温は熱くしすぎないこと(体温に近い36℃から40℃未満がベターだが、それではぬるいと感じる人はせめて湯船に入ってから追い焚きするなど、急に熱い湯に入るのを避けてほしい)

寒い季節の熱い風呂は御馳走だが、それで命を落としては元も子もない。
冷え込みの厳しい日こそどうかご安全に!

 

それでは『今週のハウリンメガネLiveインフォ』!寒さに気をつけたうえで是非ご来場のほどを!

 

【日時】
2024年2月10日(土)
OPEN12:00/START13:00

【会場】
深江橋Ks(大阪市東成区神路1-5-12GALAXYビル7F。大阪メトロ中央線深江橋駅より徒歩3分)

【チャージ】
¥2,000(1ドリンク込み)

【出演(※出演順とは異なります)】

大声やの
みさえさん
石垣島みーくん
スロウモウ
ヨッシー
Yu-Ki
大塚真一
茶戌
Nobu-hey!
sacchan
ハウリンメガネ

ではまた来週!

<ハウリンメガネ筆>

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毎週火曜日は『今週のハウリンメガネ』Vol,4(2024年1月30日発行)

2024-01-30 13:00:01 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

毎週火曜日にご機嫌よう!『今週のハウリンメガネ』

今週も『私の一口コラム』『その週のライブインフォ』をお届け!

 

さて、『今週のハウリンメガネ』は先週読んだ新刊文庫本をご紹介。

浪人上さま織田信長 覇王、江戸に参上!(中岡潤一郎著・コスミック出版)

……ええ、タイトルを読んだ時点で気になるでしょ?私もタイトルが気になって買ったクチ。
何を調べて出てきたのかは忘れたが、スマホで何かを検索した時にサジェストにこのタイトルが出てきたのだ。

最初は〈昔の小説か何かかしらん?〉と思ったのだが、タイトルで再検索をかけると何と今年1月の出たてホヤホヤの新刊。

何をとち狂ってこんな出落ち感満載(失礼!)のタイトルを……とその場は記憶から流したのだが、どうにも頭にタイトルがチラつく。


今までの読書歴から、この手の出落ち感のあるタイトルの作品は結構面白い事が多いのだ。

近所の書店の在庫を確認すると(最近はネットで実店舗の在庫が確認できて便利ですな)、おお、ちゃんと入荷されているではないか!
仕事帰りにいそいそと書店に立ち寄り、冒頭数ページをぺらぺらと捲る。人にもよるだろうが、私は文体が肌に合わないとどうにも読み進めるのが面倒になるクチで、未読の作者の作品は絶対に軽く試読してからでないと買えないのだ。
……うん、悪くない。読んでいて嫌になる文体ではない。よし、購入!

舞台は関ヶ原天下分け目の合戦から6年後の慶長11年、徳川幕府の城下町として都市開発真っ只中の江戸。開発中の都市特有の荒々しさを孕んだ江戸の町を悠々と歩く老人がひとり。
町民に理不尽な喧嘩をふっかける傾奇者をしばき倒し、飯屋の女丈夫な女将と軽口を叩きあうその老人こそあの本能寺の変を落ち延びた第六天魔王、織田信長その人であった!

織田信長は実は生きていた!……はっきり言えば手垢の付きまくった題材であり、ゆえに書き手の力量如何で駄作にも傑作にもなり得る題材でもある。
で、本作だが……悪くない!

ネタバレになってしまうかもしれないのでネタバレはイヤ!という方はこの先のライブインフォまで読み飛ばして頂きたい。

本作の織田信長は本能寺の変を生き延び、江戸の町に居を構えているのだが、彼にはなんの目的もない。
好き勝手に生きてみるか、と思った結果、江戸に居を構えただけなのである。
豊臣にも徳川にも因果を含むところはなく、それどころか本能寺の変の首謀者、明智光秀(本作では南光坊天海として生き延びた設定となっている)とも悪友の如く付き合う。
好き勝手に生きると決めた信長は気に食わないならず者には戦国の流儀で仕置をし、気に入った人間には心赴くままに好意を示す。時には平和に牙を抜かれたようになった嘗ての配下の顔を張り「徳川は甘い男ではない」と活を入れ、時には縁あった幼子の為に体を張る。
こう書くと信長を善人として描いたヒーロー物に思われるかもしれないが、そこは否。第六天魔王織田信長としての負の面も踏まえたうえで、怨みを晴らすでもなく、いたずらに過去を悔やむでもない。第六天魔王であり、尾張の悪童であった織田信長が本能寺の変で「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」の境地に至ってから生き延びたとすればこういう老人になったのではないか、と思わせてくれる描き方がよい。

著者の中岡潤一郎氏については詳しくは知らないのだが、どうやら時代物をシリーズで書いておられる様子。本作も売れ行きが良ければシリーズになりそうな気がするし、どちらかといえば本作はシリーズ向けな作風だと感じる。回を重ねるほど人物描写もストーリーも面白くなっていく気配がちゃんとある。
興味の湧いた方は書店に並んでいるうちに買ってみて頂きたい(売れればそれだけシリーズ化の可能性が増す。買って応援!)。

 

では一区切りついたところで

『今週のハウリンメガネLiveインフォ』
是非ご来場のほどを!

【日時】
2024年2月4日(日)
OPEN12:00/START13:00

【会場】
京都四条大宮Ks(京都市下京区四条大宮町27-4 KODOビル2F。阪急京都線・大宮駅、京福嵐山線・四条大宮駅より徒歩1分)

【チャージ】
¥2,000(1ドリンク込み)

【出演】(※出演順とは異なります)
月岡翔
ATSUSHI
まこにぃ
内田了治
きっちー(マスきち)
ハウリンメガネ

ではまた来週!

<ハウリンメガネ筆>

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毎週火曜日は『今週のハウリンメガネ』Vol,3(2024年1月23日発行)

2024-01-23 10:12:30 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

毎週火曜日にご機嫌よう!『今週のハウリンメガネ』

今週も『私の一口コラム』『その週のライブインフォ』をお届け!

 

早速だが『今週のハウリンメガネ』。

どうやら先日の土曜コラム『メガネの遠吠え』に多数のアクセスを頂けたようで嬉しい限り。やはり皆さん楽器の話がお好きなのかしらん。
かくいう私も結局のところアホほどの楽器好き。ライブの時も人様の手元や足下を盗み見ては、おお、あのギターは!
やら、ややっ、あのペダルは!やらとひとりニヤニヤしては周りに訝しまれる(同類の人とはニヤリと笑い合うけれど)のが常。

そんな機材好きの祭典、NAMMショウ(世界最大の音楽関係機材の見本市)今週末からアメリカで開催される。
ここ数年はコロナの影響で規模を縮小して開催されていたのだが、ついに今年は過去と同様の規模で開催されるようで、国内外の楽器系ニュースサイトも早々とNAMMショウ一色と化している。

毎年各メーカーが新製品を投入するNAMMショウだが、今年はコルグが面白そうなものを出している。
ここ数年、プラモ感覚で自分で組み立てるエフェクターやシンセ(面白いところではオシロスコープなんかも)をリリースしてきたコルグだが、とうとうあの歴史的面白ガジェット、カオスパッドの組み立てキット版が登場!https://www.korg.com/jp/products/dj/nts_3/

このカオスパッドという機材、簡単にいえばCDやレコードなどからの入力音声にタッチパッド操作によるエフェクトをリアルタイムでかけられる機材で、これ一つあるだけでDJごっこが可能になるというガジェット好きにはたまらないおもちゃ(勿論本気で使えばちゃんとしたDJツールとして機能する)なのである。
昔、カオスパッドミニというのが出ており(本家のカオスパッドはそれなりのお値段だったが、ミニは1万ぐらいで買えたのだ)、当時友人と適当な音源を繋げて「おっ!今のはダブっぽかったぞ!」だの「おお、これはえらくアンビエントなミックスになるなぁ」だの遊んでいた記憶が懐かしく思い出される……

まだ価格が公表されていないが、組み立てキットなのでおそらくそこまで高くはならないはず。
買っちゃおっかなぁ……でもアナログ盤を回してる時は聴くのに集中しちゃうしなぁ……うーん、悩ましい……(エフェクターに興味がある人には真面目にオススメする。これ1台でDJが使うようなエフェクトは全部試せる。聴き慣れた盤もエフェクトをかけると違う一面が見えたりするのだ)

あ!こんな事書いてたら編集長に「てめえ先に盤のツケを払えこのヤロウ!」(ビート師匠風に読んでね)と怒られてしまうかも!?


というわけで『今週のハウリンメガネ・Liveインフォ』

今週はイベンターのおやっさん肝いりのイベントとなっており、私も普段以上に気合ををいれてかかるので乞うご期待!是非ご来場を!

【ライブタイトル】
『束になってかかってこい』

【日時】
2024年1月27日(土)
OPEN18:00/START18:30

【会場】
小さな夜の食堂 かつおの遊び場
(大阪市中央区宗右衛門町4-5宗右衛門センター2階。心斎橋駅・なんば駅・日本橋駅、各駅より徒歩10〜15分)

【チャージ】
¥2,500(1ドリンク込み)

【出演】(※出演順とは異なります)

尹ROCK嘆(ゆんろっくらめんと)
谷田一心
かず
ハウリンメガネ

ではまた来週!

<ハウリンメガネ筆>

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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える「メガネの遠吠え!」(第23回) ギターを弾く!その為には『エフェクターを知る!』

2024-01-20 11:27:31 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

読者諸賢、ご機嫌よう。ハウリンメガネである。

エフェクターが好きだ。

突然何を言い出すんだお前は、と思われたであろうが、御放念頂きたい。

好きなのである。エフェクターが。

私のライブを見た方や、友人、知人は「いや、お前ライブでエフェクター使わないじゃん!」とツッコむであろうが、それはそれ、これはこれ。

好きなのである。
エフェクトペダルが!
(大事なことなので三回言いました)

メーカーごとの設計思想が見え隠れするメカメカしい見た目。これを通すとどういうことが起きるのか?と心を騒がせるデザイン。ギターやアンプほどの大きさもないため家に転がっていても邪魔にならないサイズ感。トドメにプロのステージに並ぶ色とりどりのペダルのカッコよさ!と、男子の好きなコレクタブル要素山盛りの素敵アイテム!それがエフェクトペダル!

……とまあそんな諸々の理由でエフェクトペダルが好きなのだけど、実際のところ、私が敬愛するギタリストの多くがアンプ直結の人、かつ、うちの編集長からの「ギタリストはギターとアンプとシールドだけあればいいんだよ!」という長年の教えの影響で私も基本的にはアンプ直結派
そう、直結派ではあるのだが、時にはアンディ・サマーズやビル・フリゼールのようにディレイやリバーブを活かしたイカしたフレーズを弾きたい!という欲望が魍魎の如く湧き出す夜もあるのだ……
そういえばアンプ直結の人でもリバーブだけは……という人も多い。うちの編集長は「エフェクター?要らねえよ!あ、アンプのリバーブは別。アレは音が美しくなるから」と言っていたし、日本が誇るべきブルースマン、吾妻光良氏は「リバーブがないアンプで弾くとパンツを履いてないみたいで落ち着かない」との名言を残しておられる(同感!))

そんな私の最近のペダルセットがこれ。

(写真)

アンディ・サマーズみたいな音が出るエレハモのフランジャーに、これまたビル・フリゼールの影響丸出しのエレハモのフリーズ(ホールド・サスティナー)とLINE6・DL4(ディレイ)の組み合わせ、そして最長23秒の超ロングディレイでフリップ先生のフリッパートロニクスごっこが可能となるBOSS・DD-20(ディレイ)という、筆者の憧れ丸出しのペダルセットである。

音を出して……おお!これよ!クリーントーンをスペーシーなモジュレーションが彩り、そこに絡みつくディレイサウンド!これぞニュー・ウェイヴ・ギター・サウンドよ!ワッハッハ!ワッハッハ!……

……というように散々欲望を満たした後でいつも「でもアンプ直の方が弾きやすいし音もいいよな」と我に返ってしまう私。

さあ、ここからが本題だ。(前置きが長いというツッコみは捨て置け!)

なにゆえペダルを通した音はアンプ直結時と変わってしまうのか。

すべてのペダルをオフしたとしても、ペダルボードのど頭にバッファアンプを置いたとしても、ギターとアンプを直結させた時の音とはやはり何かが変わる(音が鈍るというか、弾いた時の感触に一枚膜がかかったような感覚になる。なにで読んだかは忘れたが鮎川誠さんが「エフェクター使ってもいい音出す人はたくさんおるけど、僕はエフェクター使うと音が潰れてしまってよう出んのよ」と仰っており、言葉は違うが、そうそう!と頷いた覚えがある)。

これらの問題の根っこが「インピーダンス」である。

インピーダンス。
近年の楽器弾きなら一度は聞いたことがあるのではなかろうか。
「このボリュームペダルはローインピーダンスだからギターから直で挿しちゃダメだよ。直で挿すならハイインピーダンスのやつを使わないと……」
「ギターをミキサーに繋ぐときはダイレクトボックスやバッファ入りのエフェクターでローインピーダンスに変換して……」
「ファズフェイスはハイインピーダンスで繋がないと手元でクリーンにできないから……」

はい、この時点で何を言っているのかチンプンカンプンという方。致し方なし。
私もこのハイインピーダンス・ローインピーダンスというのがどういう事を指し示しているのか理解するのにかなりの時間を要した。

思いっきり省略して説明すると、パッシブピックアップのギターから直接出ている信号は「ハイインピーダンス」アクティヴピックアップのギターから出ている信号や、オン状態のエフェクター(BOSSのように常時バッファ回路を通るペダルの場合はオフ状態も含む)を通った信号が「ローインピーダンス」である(思いっきり省略しているので齟齬があるケースも多々あるのだが、とりあえずはこの理解で読み進めて頂きたい)

ハイインピーダンス信号は微弱な信号の為、長いシールドやトゥルーバイパススイッチのようなパッシブ回路を多く通ると信号のロスが多くハイ落ち(音がこもる)し、外乱ノイズにも弱いのだが、その信号の微弱さは繊細であることの裏返しであり、プレイヤーの弾き方をダイレクトに反映してくれる。

ローインピーダンス信号はハイインピーダンスの逆で、長いシールドを使おうが信号ロスし難く、外乱ノイズにも強い。だが、ハイインピーダンスのような繊細な表現は反映しづらい。

ここまで読んだ方は「じゃあアンプ直結とエフェクターを通した音を比較して音が鈍って聴こえるのはローインピーダンスだからって理解でいいのかな」と思われたであろう……半分正解!

これ、私自身もいろいろ試行錯誤してようやく掴めてきたところなのだが、音が鈍るか否かの最大のポイントは最終的にアンプへ入力する信号がハイインピーダンスなのか、ローインピーダンスなのかということと、アンプのインプットがどちらの信号に対応しているのかが重要なのではないかと思う。

ギター弾きの方ならアンプのインプットに「ハイ」と書かれている差込口と「ロー」と書かれた差込口が並んでいるのを見たことがあるだろう。
これ、そのものズバリ、ハイインピーダンス向けの差込口とローインピーダンス向けの差込口なのである。
つまり、パッシブのギターを直接挿すなら「ハイ」。アクティヴのギターやエフェクターを通して挿すなら「ロー」に挿せば信号の整合性が取れることになる。

「え?じゃあインプットが一つしかないギターアンプの場合は?」
はい、これも音が鈍る原因。インプットが一つの場合、それは大概ハイインピーダンス入力なのである。

電子楽器の鉄則として「ハイ受けロー出し」というのがある。入力はハイインピーダンスにし、出力はローインピーダンスにするということだ。

ちょっとバケツの水をペットボトルに入れることを想像してほしい。きっと水の大半はペットボトルには入らず、こぼれてしまうだろう。これがハイインピーダンス信号をローインピーダンス入力に送るということなのである。つまり、出力された信号を入力側が受けきれないのだ(結果、ものすごくこもった音になる)

逆にペットボトルの水をバケツに入れることを想像してほしい。きっとペットボトルの水は残らずバケツに入るだろう。これがローインピーダンス信号をハイインピーダンス入力に送るということ。つまり、ハイ受けロー出しなら、大抵の出力された信号をすべて受けきれることになるのだが、バケツをひっくり返した場合の水の出方とペットボトルからの水の出方は違う……これが、ペダルを通した時に音が鈍って聴こえる原因だ。

バケツからバケツへ水を移すのなら一気に大量の水を流し込める。だが、ペットボトルからバケツへ水を移すなら流せる量はペットボトルの口径が限界となる。この「水」を弾き手がプレイに込めたニュアンスだと読み替えて頂きたい。

バケツからバケツへ、つまりハイインピーダンス出力をハイインピーダンス入力へ送る場合、弾き手の込めたニュアンスは全て一気に注ぎ込める、つまりニュアンスが全て出せることになるが、ペットボトルからバケツへ、つまりローインピーダンス出力からハイインピーダンス入力へ信号を送る場合、弾き手の込めたニュアンスには制限がかかるということになる。

理想的なのは出力インピーダンスと入力インピーダンスの完全なマッチングなのだが、エフェクターやアンプがマスプロ製品である以上、完全なマッチングというのは不可能に近い(オーダーでカスタムすれば別だろうが)。であれば、多少の訛りは諦めて使いたいエフェクターの効果を優先するか、可能な限り訛りのない、アンプ直結でのプレイという二択を我々アマチュアギタリストは迫られるのである…………

なんてなことを書いてはみたが、我ながら洒落くせぇ!
いいんだよ!使いたかったらなんぼでもペダルを繋げ!要らねえと思ったらアンプに直で挿せ!
出したい音を出したいように出す!そのために研究はするが基本中の基本は『やりたいようにやれ!』だ!

さあ、同志諸君!今年もやりたいようにやろう!好きな様に好きな音を出して世界と対峙してやろう!

また次回!ハウリンメガネでした!御粗末!

<ハウリンメガネ筆>

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毎週火曜日は『今週のハウリンメガネ』Vol,2(2024年1月16日発行)

2024-01-16 13:12:12 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

毎週火曜日にご機嫌よう!
『今週のハウリンメガネ』!

毎週火曜日『私の一口コラム』『その週のライブインフォ』をお届けする本コーナー。

先週のスタート早々、多くの読者諸賢にご覧頂けたようで誠にありがたい限り。
ライブの方も私が出入りしてる店は敷居も低いので初見の方もどうぞお気軽にお越し頂ければ幸い。

しかし今週は火曜掲載の当コラムに加え、土曜掲載コラムの『メガネの遠吠え』、そして日曜にはまたライブと我ながら八面六臂の忙しさ(自画自賛)

流石に編集長にスケジュール調整を依頼しようかとも思ったのだが、考えてみれば『今月も来月もほぼ全てライブで週末が埋まっている為、どこに〆切をずらしてもらおうがどこかで必ず同じ状態になる』のである。
おお!自縄自縛!

ま、ありがたいことに色々な方々からご要望頂けていることの表れ、ということで己を納得させよう。

さて、『今週のハウリンメガネ』は先週の続き。

先週書いた通り愛用のピックギター、『エピフォン・ブラックストーン』ネックバインディングが一部剥がれていることに気づいた私。

D.I.Y.精神をモットーにしている私はホームセンターで接着剤と固定用のマスキングテープを購入し、修繕に取り掛かったのだが……いやぁ難しい!
(本当は修繕作業中の写真を残そうと思っていたのだが、撮っているヒマなんかありゃしない!)

瞬間接着剤ってやつはものにもよるが粘度が低いので油断するとすぐに液が垂れ、接着面以外のところを汚してしまう。
今回は実際の修理に取り掛かる前に端材で練習したからうまくいったが、いきなり試していたらどうなっていたやら……あー怖っ!

というわけで楽器弾きの皆様も自力で修繕する時は必ず練習を!
(そう考えるとプロのリペアマンは本当に凄いなぁ)

まあ、そんな感じで編集長に話をしたところ

「何?瞬間接着剤を使ったって?下手したらバインディングも硬くなり反ったり、割れるところだったぞ!ヴィンテージならなおさらだ。まあ、上手く付いたのなら今回は結果オーライだったが、次回からは必ずプラと木材が接着可能なボンドを使うこと!」

とお叱りとも受け取れるアドバイスを受けてしまった・・・。

読者諸君!
「プラと木材用のボンドでお願いします!」

 

それでは『今週のハウリンメガネLiveインフォ』を!

【日時】
2024年1月21日(日)

※2部制
1部・OPEN12:00/START13:00
2部・START16:30

【会場】
守口Ks
(大阪府守口市八雲中町1-2-13。地下鉄谷町線守口駅より徒歩7分)

【チャージ】
1部2部とも¥2,000(1ドリンク込み)

【出演(※出演順とは異なります)】

1部: 葛野雅之/安本テルオ/ハウリンメガネ

2部: 美和/コウノエツコ/masumi

ではまた来週!

<ハウリンメガネ筆>

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毎週火曜日は『今週のハウリンメガネ』 VOL,1(2024年1月9日発行)

2024-01-09 10:43:42 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

火曜日にご機嫌よう!

『今週のハウリンメガネ』がスタートだ!

毎週火曜日に『私の一口コラム』と『その週のライブインフォ』をお届けする本コーナー、本日より開始!

『コロナの5類移行』もあり、昨年からライブの本数が増えてきた為、編集長と協議の結果、
このような形で『毎週のライブインフォ』を掲載させて頂く事に相成ったのである。

【編集長】
2024年の毎日発行に向けて週1でもう1本書かない?

【ハウリンメガネ】
えっ、週1なんて無理ですって!

【編集長】
バカ野朗!俺に毎日書かすつもりか!そう言えば文筆作業に焦点が当たって読者たちは君がミュージシャンだという事をすっかり忘れているぞ!

【ハウリンメガネ】
うっ。そりゃぁ本末転倒じゃないですか!

【編集長】
そうだろ?そこで、ミュージシャン活動を前面に押し出したコラムなんてどうだい? じゃ、よろしく!膀胱に違和感が!
(そう言い残し、トイレのため席を立つ編集長)

【ハウリンメガネ】
あっ、ちょっと・・・・

というわけで(苦笑)
土曜掲載コラム『メガネの遠吠え』共々、よろしくご愛顧頂きたい。

 

では『今週のハウリンメガネ』

愛用のピックギター、『エピフォン・ブラックストーン』のネックバインディングが一部剥がれていることに気づき愕然。

リペアに出すことも考えたが、D.I.Y.精神をモットーにしている私。

ホームセンターで接着剤と固定用にマスキングテープを購入し、これから修繕を試みるところ。

あまりバインディング剥がれに遭遇することがなかったのだが、やはり日本の冬の寒さと乾燥はギターに厳しい季節。
楽器弾きの皆様も楽器のコンディションにはお気をつけを!

 

それでは『今週のライブインフォ』をご紹介!

【日時】
2024年1月14日(日)
OPEN12:00/START13:00

【会場】
京都四条大宮Ks
(京都市下京区四条大宮町27-4 KODOビル2F。阪急京都線・大宮駅、京福嵐山線・四条大宮駅、どちらからも徒歩1分)

【チャージ】
¥2,000(1ドリンク込み)

【出演(※出演順とは異なります)】

マスきち/Mayuco//茶戌/指名手配/中島浩光/シーゲル/牢名主/みどりのカピバラ/ハウリンメガネ

ではまた来週!


<ハウリンメガネ筆>

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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える「メガネの遠吠え!」(第22回) 早速、編集部はRock談義!Led Zeppelin『In through the out door』編!

2024-01-07 10:24:40 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

読者諸賢、ご機嫌よう。ハウリンメガネである。

本来ならば「明けまして!」といきたいところなのだが、新年早々、痛ましいニュースが立て続けに耳に入ってくる以上、呑気に祝いの挨拶をする気分にはなかなかなれない。

今は現地の方々の無事を祈りつつ、今後の復興にどういうアクションが出来得るかを考えるしかあるまい。

とはいえ、私がここでその話を続けてもなにができるわけでもない。せめていつもの話で皆様の気が紛れることを願いつつ話を変えよう。

年明け。
実家からの帰阪前に『編集長』『スターマン☆アルチ』と待ち合わせ、年始の挨拶・編集会議がてらファミレスで鼎談としゃれこんだ我々。どういう流れだったかは忘れたが、確かテクノとはなんぞやという話からシンセの話となり、事もあろうにツェッペリンの話に雪崩れ込んだのだった。その場では以下こんな会話が繰り広げられた。

編集長
『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』ってジョンジーが当時出たヤマハのシンセにハマってしまい曲もバンバン作って、スタジオでも凄え楽しそうに弾いていたらしくてさぁ!
ペイジが「あ、これは邪魔しないほうがいいな……」って思い、あーいうアルバムになったみたいよ!」

メガネ
「ヤマハのDX7でしたっけ?」

編集長
「DXだっけ?某先生によるペイジの雑誌インタビューでペイジがこう言ってるんだよ。
「僕が体調不良だったとか君は言うけれど、僕の冴えたギタープレイはちゃんと聴いてくれているのかい?」
って逆に凄まれちゃっててさぁ・・・先生が誌面上とは言え、タジタジになっていたのを覚えてるよ(笑)しかし、シンセも色々あるよねぇ!」

メガネ
「FMとアナログだと発音原理からして違いますからねぇ」

スターマン
「あ、そうなんですか?」

メガネ
「そうそう、FMはモジュール回路は一種類なんだけれど、それが複数あって接続順と役割を変えることで音を変えてて、あーでこーで……」

スターマン
「(まーた始まったよこの人、という顔)」


そしてあっと言う間に時は過ぎ、場面は変わり帰宅の新幹線車内。

(あれ?自分で言っといてアレだけど、あのアルバムってDX7みたいにキラキラした音入ってたっけ?)

と独り自問自答しだしてしまった私。

帰宅後、旅の疲れを無理やり押し込み、レコード棚から『イン・スルー~』を掘り出して聴き直してみたところ、やはりシンセの音こそ全面的に使われているものの、DX7つまりFMシンセの音はしない。
調べてみたらこのアルバムで使われているのはヤマハはヤマハでもDX7じゃなくてGX-1。
アナログシンセなんですな!
(FMシンセとアナログシンセはその発音の仕組み的に得意な音が異なる。FMはアタックの強いキラキラした音が、アナログはボトムの効いた図太い音が得意。ちなみにDX7はブライアン・イーノも好んで使っていた名機)。

さて、自分の記憶を確かめる為に引っ張り出した『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』だが、改めて聴くとやはりいい。

元々ツェッペリンの中では鍵盤の音が多い分、ギターの派手さはない印象だが、リフで引っ張るプレイがない分、ペイジのフィルインや、他の音に対するコール&レスポンス的なアプローチがとても良く、ペイジがカントリーブルースをバックボーンにしていたギタリストであることがよく分かる好サンプルといえる(先述のインタビューのとおり" 冴えた"プレイがよく聴こえる)。

そしてなによりボンゾの音がいい。
ボンゾといえばヘヴィなグルーヴというのが代名詞になりがちだが、『フール・イン・ザ・レイン』のハーフシャッフルを聴くとボンゾが "スウィング" できるドラマーであることがよく分かる、というか、ボンゾのあのヘヴィなグルーヴは根っこにスウィングがきちんとあるから成立するのであって、それ故に未だ越えられない壁として多くのドラマーが彼をリスペクトしているのである。

うーむ、やはり今年も温故知新。
聴き直すことで得る発見は多い。
(勿論今の音も聴くけど)

皆も是非!オールドスクールと呼ばれようが、なんと呼ばれようが、己の耳の赴くまま好き勝手に聴きまくり、己の感じたままに感想を述べまくれ!

本年からは月2回連載+昨日発表済みだが毎週ミニコラム付きの『ハウリンメガネ・ライブインフォ(今週のハウリンメガネ)』を掲載していくので本年もどうぞよろしく。


最後に少しだけ。
能登半島地震の被害にあった方々の安全を祈ると同時に、ここから復興する為にも、今年こそ緊縮財政論が打ち破られることを願う。

確実に政府は復興増税を言い出すと予想しているのだが、税とは民間から資本を回収する装置であり、復興時に必要なのは増税ではなく減税と国債発行だ。ゆめゆめ騙されるなかれ。
そしてできる事なら、できる人は当地の準備が整ってから寄付やボランティアなど、できることで寄与してみてほしい。

災害大国のこの国ではいつ自身が災害に合うかわからない。遠方の地であっても助け合いの精神を。できる範囲で。

ではまた!

<ハウリンメガネ筆>

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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える「メガネの遠吠え!」(第21回)チバユウスケ逝く・・・

2023-12-09 11:20:40 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

読者諸賢、体の調子はどうだい?ハウリンメガネである。


先に謝っておく。
今回は気持ちの整理がついていないままこのコラムを書いている。

とりとめのない話になるがご容赦願いたい。

チバユウスケが逝った。

thee michelle gun elephant
ROSSO
the birthday
のフロントマンとしてロックシーンの最前線を走り続けたチバユウスケが逝った。


正直、逝ったという言葉を書きたくない。

確かに癌の治療のため療養するという公式アナウンスはあった。

それでもあまりにこの訃報は突然過ぎた。


だってチバだぜ?
ステージに立ったら無敵にしか見えないあのチバだぜ?


絶対にステージに戻ってきて、またあの凄え音を聴かせてくれると思っていた。


だけどそれは叶わなくなった。
そりゃいつかは誰でも死ぬけどさ。
55って早すぎるだろうよ。

 

忘れもしない。あれは中学生の頃だ。

深夜にAMラジオを聴いていた私の耳に突然ブッ刺さったのは、
ざらついたギターリフにのって、
歪んだギターみたいな声が歌う「ねえルーシー 聞かせてよ そこの世界の音」という不思議な歌詞。


ミッシェル・ガン・エレファントの「ゲット・アップ・ルーシー」だった。


ラッキーなことに寝落ちした時のためにテープを回していた私は
翌日から「ゲット・アップ・ルーシー」の部分だけ繰り返しリピートしていた……


ラッキーは続く。


当時テレビ神奈川にミュートマJAPANという、邦楽のPVやライブ映像を流す番組があり、
そこでミッシェルがよく流れていたのである。

当時の私はビデオに番組を録画し、そこからカセットテープに音声だけダビングするという、
今思えば涙ぐましい努力でミッシェルの音源を聴き倒していたのである。
(ミッシェル以外にもこの番組経由で好きになった日本のバンドは私の中でかなりの比重を占めている。それこそチバがゲストボーカルで参加したピールアウトもこの番組で知ったんだ。思い出した)

 

ウエノコウジの極太ベースにクハラカズユキのタイトなドラム、
アベフトシのマシンガンギターにチバユウスケのナチュラルに歪んだハスキーボイスが見事に噛み合った
thee michelle gun elephantは例えるなら高速で爆進するロッキン重戦車であり、
まだFのコードも満足に鳴らせない中学生だった筆者の心を鷲掴みにし、
今に至るまで、心の底の原体験かつ影響源として在るのである
(ギターの弾き方はアベさんからだし、最初にかっこいいと思ったブルースハープはチバのブルースハープだ)

 

チバがボーカルだけでなくボーカル&ギターとしての彼を打ち出したROSSOの1stも好きだ。(ミッシェルでもギターは弾いているが録音では弾かず、ライブでも外音(客席に出す音)には出していなかった)

最初に聴いたときには「えっ!チバ、ギター上手いんじゃん!」と驚き、結構熱を入れてコピーに勤しんだ覚えがある
(ROSSOの「シャロン」は今でも手が覚えてるぐらい好きだ)

 

the birthdayのアルバムだと「I'm just a dog」が好きだ。
「なぜか今日は」の歌詞が好きだ。


『なぜか今日は殺人なんて起こらない気がする
 だけど裏側には何かがある気もする
 でも なんか今日は
 でも きっと今日は』

(「なぜか今日は」)

 

チバの歌はぶつ切りにされた言葉の羅列の中にセンチメントと優しい眼差しが混ざっている。

「なにかになりたい想い」だけがあって
鬱屈していた中学生だった筆者の背中をロックの世界に押し出してくれたのは、
やっぱりチバの歌だ。

 

嗚呼、だけどやっぱり早すぎるよ。

ショックとか悲しいとかじゃなくて、なにか自分の底が抜けたような気分だ。

去年、フェスでthe birthdayを観て「さすがチバ!白髪が増えてもカッケー!」とか思ってたのに。


ああ、どうしてもあなたのあの歌詞が頭に浮かんじまうよ。


『骨になってもハートは残るぜ』(「ターキー」)

バイバイ、ジェニー。
バイバイ、ダニー。


バイバイ、チバ。

R.I.P

<ハウリンメガネ 筆>

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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え!」(第20回) ローリングストーンズの新作に物申す!

2023-11-18 11:50:22 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

やあやあやあ、読者諸賢ご機嫌よう。ハウリンメガネである。

「聴いた?」
「何を?」
「やだなぁ、『ハックニー・ダイヤモンド』!ストーンズの新譜!』
「いや。」
「えっ、なに?聴いてない?えぇぇぇ~」(露骨に嫌な顔)

上記は読者への問いかけではない。
うちの編集長と交わした会話である!

「ラジオで今回のシングル聴いたけど別にそうでもないしさぁ」やら「今すぐ聴く必要性も感じないしさぁ」やら「まだ聴き直してないストーンズのいい未発表音源も山ほどあるしさぁ(これはまあ正論)」やら・・・・
「そりゃあんたはベテランですから、そう云うでしょうというけども!」というやりとりがあったのがつい先日のこと。

(編集長視点での会話はこちらのバックナンバーを参照 ↓ )
https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/589bfbd6e909fc2043606ea607943005

こちらとしては「どう聴いた?」という会話を楽しもうとしていただけに、肩透かしを食った形となり、つい、「いや、こうでああでこういう話で……ええい、お買いなさい!」と説教にも似た熱弁をしてしまったのだが、別に私も新譜の出来に期待していた訳ではない。出来がどうであれ最初から御布施のつもりで買うのは決めていたから買ったまでだ。

家でアルバムに針を落とすまで先行シングルも一切聴かなかったし、「これでダメな出来ならそれもまたストーンズの歴史の1ページまでよ・・・」というつもりで買い、「さあて、どんなものかね。」という程度の気分で針を落としたのだが……良かったんだなぁ、これが。

というわけで、そんな気分で本作を聴いた私が何故本盤を編集長に熱弁するに至ったのか、一曲一曲紐解いてみようではないか。

A1.Angry
今回の冒頭の会話の原因となったリードトラック。
編集長がラジオで聴いたというのがこれだと思うが、そりゃ確かにこれだけ聴いたら「うーん、別に急いでアルバムを聴く必要もないなぁ」と思っても仕方がないとは思う。
別に悪い曲ではない。寧ろストーンズのパブリックイメージからいえば「らしい」曲だ。「アンダー・カバー・オブ・ザ・ナイト」を思い起こさせるベースの入りやギターのカッティングも悪くない。が、そういう曲ならもう彼らにはいくらでもある。つまり、レッドオーシャンでの戦いを強いられるわけだ。となると過去の名曲に軍配が上がるのは致し方あるまいよ。
だが私は何度も盤を回しているうちにこの曲のある種の「ユルさ」が癖になってきた。う〜ん、嫌いじゃない。

A2.Get Close
これ。この曲で一気にこの盤の印象が変わる。
ドラムが刻むスクエアなビートに乗って、ギターが物憂げなコードを鳴らした瞬間に私はダイナソーjr(筆者の好きなアメリカのオルタナロックバンド)を思い出していた。
そう、音像がアメリカンロックなのだ。
後述するがA面はある意味でストーンズらしいサウンドプロダクトから外れた音になっている。これは今回プロデューサーとして参加したアンドリュー・ワット(弱冠33歳!オジーやイギーポップ、パール・ジャムのエディ・ヴェダーのソロのプロデューサーとして活躍し、ポール・マッカートニー師匠の新作にも関わっている様子)の手腕だろう。そうそう、中間のサックスソロもボビー・キーズを思い出すエモーショナルなブロウで素晴らしい。

A3.Depending On You
カントリーフレーバー溢れつつ、泣きのメロディがグッとくるロックバラード。
後ろで鳴るロニーと思わしきスライドギターが効いている。
ストーンズのバラードってあまり泣きのメロディのイメージがない(カラッとしているイメージ)のだが、この曲のメロディは日本人なら好きな人、多いんじゃなかろうか。

A4.Bite My Head Off
ポール・マッカートニー師匠がベースで参加している疾走感溢れるパワフルなロックチューン。
「ピストルズですか?」といいたくなるような勢いでガツガツと鳴らされるギターとスティーヴ・ジョーダンのパワフルなドラムがベストマッチ!
途中から入るオクターバーがかかったギターのようなシンプルかつ印象的過ぎる低音のソロはポール?ポールなの!?このフレーズだけで一気に曲が締まって聴こえるんだよ!ちょっと「ヘルター・スケルター」っぽさも感じる1曲。

A5.Whole Wide World
「ワン・ヒット(トゥ・ザ・ボディ)」を思わせるダーティーなリフが支配するヴァースから開放感に溢れたサビへの移行が気持ち良すぎるご機嫌なロックチューン。
途中のブレイクでリズムが少し崩れて聴こえる(実際は崩れてない)アレンジがライブでのストーンズを想起させてこれまたグッド。
個人的に3度登場するモジュレーションのかかったギターソロが大変エモーショナルで良い!これぞエモーショナル・レスキュー♪って感じ(笑)

A6.Dreamy Skies
アコギのスライドが心地よい、A面を〆るストーンジーなフォークブルース。ミックのハープもミシシッピフレーバーに満ちていてよい。
そういえば今作、アナログは最近多い2枚組ではなく1枚組(1枚の場合、組っていうのか?)なのだが、やはりストーンズはこのあたりをよく分かってらっしゃる。2枚組のほうが音質は上がるが、この1枚のA面、B面で区切られるのがちょうどいい塩梅なんだよな。こういう曲をA面の〆にちゃんと入れるセンスに拍手!

盤同様、一旦ここで区切ろう。
ここまで回した時点で私は「これは予想外にいいぞ!?」と思った。いい意味でストーンズらしくない音になっているのだ。正確にいえばストーンズらしさはきちんとあるのだけど、音像がアメリカ寄りというか、今までのストーンズの音とはどこか違って聴こえるのである。

これは先述の通り、プロデューサーのアンドリュー・ワットの手腕にもあろう、それと同時にチャーリーの不在も大きく関係していると思う。

「ストーンズの番長であるチャーリーの不在をどうすればマイナスに聴こえないようにできるか」そこにトライしているのがA面のように思う(故にストーンズというより、ジャガー・リチャーズ・アンド・ウッド的に聴こえるようにも思う。あ、今回ミックの歌がとても良い。今まで以上に伸び伸び歌っているように聴こえる)
が、私はこの音、好きだ。とても好きだ。ストーンズの新しい一面が見えていると思う。齢80を超えて、まだ新しい一面が見えるってのはすごい事だぜ?

よし、盤をひっくり返せ。B面、行ってみよう!

B1.Mess It Up
「女たち」の頃のストーンズを彷彿とさせるダンサブルなナンバー。
チャーリーが生前に残したドラムトラックが使われており、本作中一番アッパー感のあるナンバーに仕上がっている。個人的にこっちをシングルカットしたほうがよかったのでは?と思うぐらいイイ仕上がりなのだが何故・・・?
どうやらクラブ向けにリミックスバージョンが出ている模様(実際、「そうだろうね!」といいたくなるぐらいダンサブル)。

B2.Live by the Sword
これもチャーリーが残したドラムトラックが使われているのだが、そこにビル・ワイマンがベース、エルトン・ジョンがピアノで参加という贅沢なナンバー。ちょっとレゲエのダウンビート感が混ざったリズムがいい。
これとB1.を聴くとやはり「ストーンズをストーンズらしくしていたのはチャーリーのドラムなんだなぁ」と思わざるを得ない。ストーンズらしいんだ、やっぱり。フィルの入るタイミングとかキースとのコンビネーションとか。

B3.Driving Me Too Hard
これはジョーダンがドラムを叩いているはずなのだが、不思議とB1.から続けて聴くと不思議とチャーリーのドラムのように聴こえる瞬間があるから面白い(もちろんよく聴けば違うんだけど)。
明るい曲調に混ざるセンチメントなギターのリードフレーズが涙を誘う。

B4.Tell Me Straight
キースのボーカル曲!これは嬉しい!
キースの歌う曲は大好きだ。寂しげで美しい、どこかフワフワと着地点の見えない揺蕩うようなメロディがキースの声にはよく似合う。
そんな歌メロに呼応するような儚げなギターソロも短いながら美しい。

B5.Sweet Sounds of Heaven
鍵盤にスティーヴィー・ワンダー御大コーラスにレディー・ガガを招いた本作中最長7分超えのソウルバラード(コーラスはリサ・フィッシャーの姐御を呼べばよかったのでは?という疑問が浮かんだりもするが、それはそれ、これはこれ。リサ姐さんもストーンズから離れて久しいしねぇ)。
ジョーダンの叩くソウルフル&パワフルなドラムの上でワンダー御大の鍵盤と戯れるようなミックの歌とガガのレスポンスはこれはこれで好し・・・なんだけど、どうしても頭の中でリサ姐さんの歌が聴こえてくるんだよなぁ・・・あ、いかんいかん。ないものねだりはよくないネ~。

B6.Rolling Stone Blues
これです。これで決定的にヤられました。ローリング・ストーンズというバンド名の由来であるマディ・ウォーターズ御大の「ローリング・ストーン」でございます。
これは絶対キースだろ!と思われるズブッ、ズブッと泥沼に足を突っ込むようなアコースティックブルースギター(これはアコギと呼んじゃいかんでしょ)にミックの歌とハープが絡みつく名演です(多分ミックとキースだけで録ってる)。
正直この曲のためだけにこの盤を買ってもいい。最後にこれが聴こえた時点で「ああ、買ってよかった」と思ったもの。
最後の最後はやっぱりこれなんだ。ストーンズはロックバンドじゃない。ブルースをやろうとしてロックに「なってしまった」のがストーンズなんだ。でも、ついに「やった」んだ。この人たちは「ブルースをやった」んだ。

以上12曲、ちゃんと良かったのである。

いや、確かにベテラン(編集長に限らずベテランの音楽ファンのことね)の言いたいことはわかる。

チャーリーもいなくなった今のストーンズはストーンズではないという意見もそれはそれでわかる。

昔のストーンズの音を掘り下げるほうが発見が多いというのもそれはそれで正しい。

ではこの盤は不要なのか?ストーンズの最新盤はただの過去の焼き直しなのか?
否である。

なぜならミックもキースもロニーも未だにストーンズたらんと走り続けているからである。
その足跡として今回の『ハックニー・ダイヤモンズ』は見事なまでに輝いている。

痛々しさも悲壮感も全くない痛快なロックアルバムをこの人たちはきちんと作った。
バンドの重心を失ったことを寧ろ武器に変え、未だに走り続けようとしているこのバンドの最新作を聴かない理由があるか?

さあ買え!いま買え!すぐに買え!これぞ秋の味覚だ!(もちろんアナログ盤でな!)
そして、偉大なるローリング・ストーン達に盛大な拍手を!

・・・はよ来日してくれんかなぁ・・・
ハウリンメガネでした!じゃ、また!

《ハウリンメガネ筆》


ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え」(第18回) ハーモニカが欲しかったんだよぉ〜 (即席ブルースハープ講座)

2023-09-02 08:43:13 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

ハーモニカ、ブルースハープ愛好家の読者諸賢!
ごきげんよう。ハウリンメガネである。
ん?ハーモニカなんか吹いてない?
……吹くって言え!(冗談です)

私ことハウリンメガネ、ここ最近
「ハウちゃ〜ん!あんたのハープをもっと聴かせてくれよ!」
と友人に発破をかけられ、
ハーモニカプレイの幅を広げるべく、
ハーモニカについて研究する日々が続いていたのである。

あれこれ調べてみたり、偉大なるブルースハーピスト(冒頭写真のリトル・ウォルターのように!)の盤を聴き直してみたりという紆余曲折の末、何とか自分なりにわかってきたここ最近。そして分かってきたら誰かに言いたいのが人の性。

ということで、今回は私自身の備忘録の意も込め、私同様ハーモニカ、ブルースハープの使い方に悩んでいる方の手助けになればラッキーという、簡単ハーモニカ講座である(ここでいうハーモニカとは10ホールズ、ブルースハープと呼ばれるもののこと)。

10ホールズハーモニカにも色々あるが、基本的にフォークやブルース、ロックで使われるのはメジャーキーのものである。
CのハーモニカならCDEFGAB、つまりドレミファソラシドが演奏できるわけだ。

楽器をやる人なら分かると思うが、このドレミファソラシドという音階は『Cメジャースケール』と呼ばれる。ところがこれをラ(A)から、ラシドレミファソラという順に弾くと『Aナチュラルマイナースケール』という音階になるのである。

つまりCのハーモニカであれば、「CメジャースケールとAナチュラルマイナースケール」が吹き吸いできることになり、Cのハーモニカは《Cメジャーキーの曲とAマイナーキーの曲』で使える、ということになる。

ここまではいい。「そーかそーか、じゃあCのブルース進行でCのハーモニカを使って……ん〜?なんか違わねぇかぁ?フォークっぽくはなるけど……」

はい!おそらくここで皆さん引っかかるはず!
Cメジャーのブルース、AマイナーのブルースでCのハーモニカを使ってもどうにもブルースらしくならない。

このCメジャーにCハーモニカ、AマイナーにCハーモニカの組み合わせ、一般的に前者を1stポジション、後者を4thポジションと呼ぶのだが、これ、どちらかといえばフォーク的なアプローチとなるのである(なお、分かりやすい例を出すと、ボブの風に吹かれてのハーモニカは1stポジション。ニール・ヤング「孤独の旅路」のハーモニカは4thポジションとなる)。

「ふーん、なるほどねぇ。じゃリトル・ウォルターみたいなブルースハープはどうしたらいいのよ?」

はい。ここで先程のCメジャースケールをAから始めるとAナチュラルマイナースケールになる、という話を思い出して頂きたい。
これ、要するにCメジャースケールをC以外の音から始めると別のスケールになる、という話なのだが、これはAだけでなく、Cハーモニカで鳴らせる全ての音、つまり、ド(C)、レ(D)、ミ(E)、ファ(F)、ソ(G)、ラ(A)、シ(B)の全てに当てはまるのである。

メジャーキーで使えるのは、以下。
・Cから始めるCメジャースケール
・Gから始めるGミクソリディアンスケール
・Fから始めるFリディアンスケール

マイナーキーで使えるのは、以下となる。
・Aから始めるAナチュラルマイナースケール
・Dから始めるDドリアンスケール
・Eから始めるEフリジアンスケール
・Bから始めるBロクリアンスケール(これ、マイナーキーで使える……っぽいんだけど私もまだ研究中。ホントはディミニッシュコードに相当するはずなんだけど)。

ここで出てきたGミクソリディアンとDドリアン。
これがブルージーにハーモニカを鳴らす為のポイントであります!
この2つのスケール、ブルースの中では頻出する音階で、この2つのスケールを使うだけでブルージーなプレイが可能となるのです!

Gメジャーの上でCハーモニカの吸いをメインにプレイすると途端にデルタブルースのいなたいニュアンスになり、Dマイナーの上でCハーモニカをこれまた吸いをメインにプレイすると一気にシティブルースのセンチメントが薫りだす!

つまり、曲のキーと表現したいフレーバーに応じてハーモニカのキーを変えることで10ホールズハーモニカという楽器は大幅に表現力を増すのである。
故に様々なキーのハーモニカを揃える必要がある訳なんですなぁ(ホントはベンドとか色んなテクがあるのだけど、長くなるので割愛。この回が好評だっからまた書きます)。

ハーモニカは面白いぞぉ。しかも3,000円ぐらいで始められる!
なにか楽器を始めたいなぁと思っている方は是非ハーモニカを買ってみてほしい。
「キラキラ星」や「ふるさと」ぐらいならすぐ吹けるようになるから!

以上、大阪の楽器屋をハシゴしたのにブルースマン御用達のハーモニカ、マリンバンドが売っておらず途方に暮れたハウリンメガネでした。
また次回!

《ハウリンメガネ筆》


ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え」(第17回) ギターkidsに衝撃が!プレイヤー誌が休刊

2023-07-01 13:27:13 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

やあ読者諸賢、御機嫌如何?
ハウリンメガネである……
今回は残念なニュースの話題。

プレイヤー誌……休刊である!
(ホントは最終号を手に入れてから書きたかったのだが、6/30発売予定が7/5に延期……人手が足りてないんだろうなぁ)

私にとってプレイヤー誌は大変思い出深い。
もはや二十数年前の話ではあるが、高校生だった筆者は毎月プレイヤー誌を買っては毎日毎日飽きもせず、掲載されていたギターの広告にうっとりしていた。
(今でこそデジマートやJ-guitarなどでギターの画像など見たい放題だが、当時の音楽雑誌で最も楽器の広告が多かったのがプレイヤー誌であった。イケベやイシバシが載せてた特売広告を見て己の財布の中を睨んで頭を悩ませていたのが懐かしい)

メーカーの新製品や、通販会社の安物、大手のイケベやイシバシ、今も健在のヴィンテージ専門ショップの広告、ギター、ベースにエフェクターまで、どれもこれも垂涎ものの写真がズラリ!
(水着のおねーちゃんのグラビアより刺激的!)

当時、金もなく(今もないけど)、楽器屋に行ってはギターや機材を眺めていた筆者にとってプレイヤー誌はまさに下手なポルノ雑誌よりも興奮度の高い雑誌だった訳である。

もちろん広告が全てではない。
その時その時の話題のミュージシャンへのインタビューは勿論、連載も素晴らしかった。
ミュージシャンが自分の愛機達を写真付きでズラリと紹介する「DEAR MY PARTNERS」。

海外レジェンドミュージシャンの使用機材を写真付きで振り返る「WHOSE GEAR?」。
(これは資料的価値も高く、このコーナーだけまとめた愛蔵版ムックも出ている。私も当然持っている。冒頭写真参考)

他にもパテントからギターの歴史を読み解くコラムや、ソロギターに特化した譜面連載、海外ミュージシャンのゴシップ記事……

そんな中でも忘れちゃいけない、個人的にプレイヤー誌の連載といえば、日本が誇るジャンプ&ジャイヴ・ブルースマン、吾妻光良御大のコラム、「ぶるーすギター高座」!
まだブルースのブの字も分かっていない小僧に笑いとサラリーマンの悲哀をごちゃ混ぜにしつつ数多のブルース情報を教えてくれたのはまさしくこのコラム!
(私の様にこのコラムからブルースを掘り始めた人も多いのでは?)

ご自身のライブや、ブルースの音源についての話の合間合間に、奥様のご機嫌を窺いつつギターを購入する術に頭を悩ませたり、海外旅行に持ち出すギターの選定条件に、万が一紛失したり壊れたりしても一晩泣けば済むものを、というのを最優先事項にしたりという生々しい社会人ブルースマンの毎月のコラムを読んでは「ああ、俺もこういう笑いとペーソスに溢れるオッサンになりたいものだ」と独りごちたあの頃の俺よ、今も俺は近づこうと努力中だ。

そんな我が青春のプレイヤー誌だが、先述の通り、次号で休刊と相成ってしまった。
公式リリースとしては近年の制作コストの上昇と、広告収入の下落が主な原因とのこと。

何年か前に元々月刊だったものが季刊となって値段が2,000円超となった時点で経営が苦しいのは予想できていたが、この「広告収入の下落」というのがおそらく最大の原因であろう。

雑誌、というか紙媒体不遇の時代に突入してからもう何年もの時が過ぎ、音楽雑誌も淘汰されているが、そんな中でも生き残っている雑誌にはそれぞれ強みがある。

例えばギターマガジンやサウンド&レコーディングマガジンの様に、特定の楽器や技術に特化したものは専門誌、業界紙的な立ち位置にあり、この手の雑誌はパイの母数こそ少ないが資料的な意味もあり、絶対的な読者を抱えている(私もその一人)。
若しくはロッキンオンの様にインタビューに特化した音楽誌はリスナーに寄ったもので、こちらはリスナー側の観点を主体としている分、読者の母数が多い。

ではプレイヤー誌の強みは?
……広告だったのである。

確かに先述の通り、魅力的なコラムや掲載記事は多くあった。が、プレイヤー誌の最大の魅力は広告数の多さにあった。
今の様にネットが普及していない時代。雑誌が情報源だった時代。あの頃の雑誌は云うならば商品情報を売る媒体でもあったのだ。
欲しいギターがどこに売っているのか、アンプに強いショップはどこなのか、機材を高く買い取ってくれる店はどこなのか、その全てがプレイヤー誌に載っていた。

時代は流れ、現代。
インターネットによるリアルタイムでの情報更新が当たり前になった今では雑誌の速度は余りにも遅い。
欲しい物が今買える状態なのか、それとも売り切れになっているのか、ネットであれば即座に分かってしまう。
二十年前なら有効だった広告誌というフォーマットは技術の革新と共に滅びる定めにあったのは残念ながら致し方ないことではあろう。

栄枯盛衰、諸行無常。どんなものにも必ず滅びは訪れる。
が!
あの頃。
まだ音楽の事なんかな〜んにも分かっちゃいなかった小僧にギターという夢を与え、ブルースを教え、ギターという楽器の成り立ちを教え、様々なミュージシャンの知識を教えてくれたのは間違いなくプレイヤー誌でした。
本当にありがとうございました。

感謝の念といつかの復刊の願いを込めて。

《ハウリンメガネ筆》


ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え!」(第16回) 「今こそバーズを語る(その4:最終回)」

2023-06-10 12:45:02 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

ハロー、読者諸賢。ハウリンメガネである。

数か月にわたる連載となったデヴィッド・クロスビー追悼、バーズの歴史振り返る。今回で最終回になる。

率直に言って、今回はどう書くべきか、かなり悩んだ。

ビートルズに憧れたアメリカン・ルーツ・ミュージシャンであるバーズ。
ビートルズへの憧れとアメリカン・ミュージックの素養が見事にミックスされた初期(ミスター・タンブリンマン)。

ラバーソウル、リボルバーを出したビートルズに呼応するように出されたサイケデリック時代(霧の五次元、昨日より若く)。

大幅なメンバーチェンジを繰り返し生み出されたカントリーロック期(イージーライダー、アンタイトルド)。

そしてこれらに付随する、各メンバーのソロアルバム、そして関連バンドの作品……どれも良作な上に、数が多い!

正直、どれをピックアップしても「これがバーズである」というまとめには相応しいような相応しくないような、バリエーションに富んだ作品群がバーズ関連作なのである(それこそクロスビー追悼という意味ではCSN(&Y)は外せないし、それを言い出すとバーズの枠を外れて、ニール・ヤングにまで話が及んでしまう)。

ではそんな多様性に富んだバーズの歴史を締めくくるのに相応しいアルバムはあるのか……ある。

バーズの最終章を語るに相応しいアルバムはやはりこれでしょう。

「オリジナル・バーズ(73年作:メインフォト)」

2ndアルバム、「ターン!ターン!ターン!」以来、8年ぶりにオリジナルラインナップ(ジーン・クラーク(vo)、ロジャー・マッギン(g,vo)、デヴィッド・クロスビー(g,vo)、クリス・ヒルマン(b,vo)、マイケル・クラーク(dr,per))揃い踏みで制作されたバーズの最終作、それがこの「オリジナル・バーズ」なのである。

一般的にバーズらしくないという評価を下されている本作だが、個人的にはバーズの最後を語るのに最もふさわしい作品はこれ以外にない。

「ターン!ターン!ターン!」以降、幾度ものメンバーチェンジを繰り返してきたバーズだが、実際には離散集合とでもいうようなコラボレーション作品が多数あり、表層にこそ現れなかったものの、実際にはメンバー間の交流は続いていた。

クロスビーのCSN(&Y)、ヒルマン、マイケル・クラーク(とグラム・パーソンズ)擁するフライング・ブリトー・ブラザーズ、ジーン・クラークのソロ、そして一人、バーズの看板を守り続けたロジャー・マッギン。

その内実がどうだったのか本人達以外知る余地はないのだが、彼らはバーズから離れた後も、互いに影響しあい、カントリー・ロック・シーンを形成していたのである。

そんな彼ら、オリジナル・バーズが残した「オリジナル・バーズ」。
先述の通り「バーズらしくない」というのが一般的な評価らしいが、はっきりと書いておこう。

これはバーズがバーズとして到達した、彼ららしさに満ちたラストアルバムである。

確かに初期のビートリーなニュアンスは、はっきりとは表に出ていない。
だが、メロディやハーモニーの感覚、コーラスワークにはっきりとビートルズの香りがする。

サイケデリック時代のアグレッシヴなサウンドアプローチはない。
だが、コードワークや音使いにサイケの匂いがたっぷりと残っている。

「イージー・ライダー」に代表されるカントリーロックバンドとしてのバーズらしさでいえばこれも控え目である。
だが、ロジャーのプレイするバンジョーやクロスビー達の弾くギターからはきちんとカントリーを消化した音が出ている。

そして、バーズを離れてからの各自の経験値がこの盤には表れている。
初期の透き通ったコーラスは聴けないが、代わりにクロスビーがCNSで学んだであろう重厚感のあるコーラスワークを聴くことができる。
マイケル・クラークのドラムは軽やかさを失った代わりに、ヒルマンのベースと入り混じって土の匂いのするグルーヴに満ちている。
ロジャーは12弦ギターを使わなくなったが、それでも彼のプレイは「あのバーズ」の気配が溢れている。

いうならばザ・バンドの「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」に近い、アメリカンミュージックのアーシーな美しさにビートリーなセンスが見え隠れする傑作、それが「オリジナル・バーズ」だ。

ビートルズに憧れ、サイケデリックムーブメントを真っ只中で経験し、ルーツであるカントリーミュージックに立ち返った、そんな彼らの歴史が作り出したのが「オリジナル・バーズ」だ。

ただのビートルズフォロワーではなく、ただのサイケデリックロックバンドではなく、ただのカントリーロックバンドでもない、それら全てを経由した「バーズ」にしか作れなかった最高のスルメ盤、それが「オリジナル・バーズ」だ!

(正直、この原稿を書きだす前にバーズ絡みのアルバムを回していたのだが、結局最後に「オリジナル・バーズ」を回してしまっていた。
派手過ぎず、たるくもない、レイドバックしたグルーヴに乗って、重厚なコーラスでグッドメロディが流れていく心地よい時間……誠に良いスルメ盤である)

ビートルズに憧れたアメリカン・ルーツ・ミュージシャンの集まり、ザ・バーズ。
そんな彼らの歴史、そして彼らが最後にたどり着いた境地に思いをはせ、当連載は幕引きとしよう。

じゃ、また次回!ハウリンメガネでした。


ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え!」(第15回) 「今こそバーズを語る(その3)」

2023-05-13 14:09:01 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

読者諸賢、ごきげんよう。
ハウリンメガネである。

今回も先月に引き続き、
デヴィッド・クロスビー追悼の意を込めた、
ザ・バーズ史振り返りの続きである……のだが、
今回はバーズ崩壊後の話であり、
クロスビーとは少し離れた話となる旨、ご了承頂きたい。

さて、前回はバーズ、サイケデリック時代の傑作、

「霧の五次元」
「昨日よりも若く」

を取り上げた訳だが、
この後、バーズ内の軋轢は高まっていき、
「昨日より若く」の次作、
「名うてのバード兄弟」
のレコーディングでその軋轢は頂点に達し、とうとう
デヴィッド・クロスビー(g、vo)、
マイケル・クラーク(dr)
の2名がバンドから去ることと相なった。

以降、バーズは主柱であるロジャー・マッギン以外、幾度もメンバーチェンジを繰り返していくことになるのだが、その最初のアルバムとなったのが名盤として名高い「ロデオの恋人」。
ギターにグラム・パーソンズを迎え、現在に至るもカントリーロックの名盤として名高い「ロデオの恋人」……なのだが、個人的には正直好みではない。良作であることは否定しないが……どうにも中途半端な気がするのである。

バーズらしいアルバムか、と問われるとバーズらしさは一番低いように思うし、カントリーロックの名盤としてイの一番に名前を挙げるか、と問われると、いや、それなら「ロデオの恋人」同様グラム・パーソンズとクリス・ヒルマンがやっていたフライング・ブリトー・ブラザーズの「黄金の城」の方が……となってしまう。はっきり言えば、「ロデオの恋人」がバーズの代表作として扱われること自体がズレていると思っているのだ、私は。

そういう立場からいうと、この時期のバーズのアルバムであれば、やはり、グラム・パーソンズ以降、つまり、ギタリストにクラレンス・ホワイトが参加してからのアルバムを推したいのが人情というもの。
その中でも私的にベストと思っているのが、冒頭写真の2枚組アルバム、「アンタイトルド」(70年作)なのである。

この「アンタイトルド」、1枚目に当時のライブ録音を、2枚目にスタジオ録音を収録しているのだが、どちらも大変よろしい。

1枚目はこの時期のメンバー、ロジャー・マッギン(g、vo)、クラレンス・ホワイト(g、vo)、スキップ・バッティン(b、vo)、ジーン・パーソンズ(dr、vo)による充実したライブパフォーマンスをしっかり収録している。

ロジャーのボブを彷彿とさせる吐き捨てるような歌い方は堂に入っているし、クラレンス・ホワイトのギターもカントリーフレーバーとバーズらしいビートリーさを場面場面で差し引きし、エモーショナル、かつ、クールにキメてくる。
バッティンとパーソンズのリズム隊も太い音でグイグイと全体を牽引。特にB1、霧の8マイルでのリズム隊のみでのセッションパートではベースとドラムだけで一切退屈のない素晴らしいグルーヴを聴かせてくれる。

2枚目のスタジオ録音もロジャー、バッティング、パーソンズの3人による味の異なるそれぞれの曲と、ホワイトのアーシーかつロッキンなギターがいい塩梅で融合しており、バーズ=ビートルズに憧れたアメリカのルーツミュージシャン、という構図がきちんと成立しているのである(さらにいうならばこの2枚目の曲はAOR的なクールネスがあり、個人的にはバーズらしく、かつアーバンなトーンをもった傑作だと思うのだが如何だろうか)。

繰り返しになるが、「ロデオの恋人」はバーズの代表作というより、グラム・パーソンズのアルバムである。
後期バーズの代表作としてはやはりこちらの「アンタイトルド」の方が、バーズというバンドの"らしさ"が伝わりやすいように思うのだが、なぜかこっちは見逃されがちだ。
これはやはり音楽雑誌等で繰り返し「バーズ=ロデオの恋人」という構図が刷り込まれてきたことの弊害だと筆者は考える。
読者諸賢、どうか一度頭の刷り込みを排除して「アンタイトルド」を聴いてみてほしい。絶対にこっちの方がバーズらしい名盤だから。

ということで次回、ザ・バーズ、その終焉ということで彼らのラストアルバムとソロ周辺を洗ってみようと思う。乞うご期待!

じゃまた!


ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え!」(第14回) ボブ・ディラン来日記念!「今こそ、バーズを語る(その2)」

2023-04-01 10:31:14 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

ハイ!読者諸賢、ごきげんよう!
もはや来週にはボブの日本ツアーも始まるという4月の気配に浮足立つハウリンメガネである。

前回に引き続き今回はクロスビー追悼、バーズの歴史振り返りと称し、ビートルズになろうとしたバーズがどのような変遷を辿ってビートルズの二番煎じではなく、バーズとしてその名を残すこととなったのかを紐解いていく。
今回のテーマは中期前半の名盤二作である。

前回紹介した『ミスター・タンブリンマン』、『ターン・ターン・ターン』(共に65年作)発表後、バーズはジーン・クラークの脱退という危機を迎える。

フロントマンであり、メインソングライターでもあったクラークの脱退は大きな痛手である。なにせ、バーズというバンドの武器であるビートリーなコーラスワークに制限がかかるのだ。
残ったメンバーで成立する方法を模索しなくては——
このトラブルがロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビーという才能に奮起を促し、結果生まれた最初の作品が66年作『霧の5次元』である。


これ、個人的にかなり好きなアルバムなのだ。単純にクラークの脱退でコーラスワークが困難になったというのもあるだろうが、曲やアレンジ、演奏にも荒々しいパワーがあり、それまでのビートリーな美しさを主題としていたバーズとは趣きを異とする、荒削りな魅力に満ちたアルバムになっている。

地を這うようなベースから始まるB1「霧の8マイル」での間奏部。オルガンの奏でる怪しいコードにのって繰り広げられる、エレクトリックマイルスのような不穏さに満ちたプレイがたまらない。

A4「I See You」でのスイングするリズムにノッて繰り広げられる、クリーンなギターでのパンキッシュかつフリーキーな演奏は今の時代にこそマッチする音像だし、そこにサイモン&ガーファンクルのようなハーモニーで切なさを倍加させた歌メロが乗るさまは涙がちょちょぎれんばかりに心の琴線を揺さぶる(今風に言うなら"エモい"というやつであろうか)。

B5「2-4-2・フォックス・トロット」はビートルズのカム・トゥゲザーの元ネタになったようなギターリフがダーティーかつアーシーに響く、サザンロックのような趣きの曲にジェット機のエンジン音とモールス信号の音を混ぜ込んだ、以降のアートロックの先触れともいえるサウンド。

どの曲も荒削りながら、演奏に緊張感があり(ある種キング・クリムゾンに通ずるものすら感じさせる)、アメリカンサイケの良作に共通する、アーシーさと実験的なアプローチのバランスの取れた良いアルバムなのである。

この作品でアプローチの幅を大きく広げた彼らがこの翌年、67年に出したのが次の『昨日よりも若く』。


こちらは4人体制に慣れたのか、ビートリーなアレンジも復活しており、初期の美しさを彷彿とさせる面もあるのだが、それと同時に前作同様、実験的なアプローチとアーシーな音も多い(時期的にビートルズもサイケ真っ只中なので間違いなくビートルズの影響があるだろうが)。

A3「C.T.A.-102」のエンディングではバンドの演奏から急にラジオショウに変わったような演劇的な表現を試し、B1「Thoughts and Words」、B2「マインドガーデンズ」ではテープの逆回転を効果的に取り入れ、A6「エブリバディ・ビーン・バーンド」でのインド音階を使ったギターソロなどなど、この時代のサイケあるあるなアプローチが盛りだくさん。
だが、ここでも重要なのはバーズのバランス感覚。

前回、バーズとはビートルズとアメリカンフォークを最高のバランスで融合させたバンドであると書いたが、この時期のバーズを表すなら、サイケ時代のビートルズとアメリカンルーツロックの融合体。

詰まるところ、彼らの良さとは自分達の好きなものを自分達が得意とするもので表現するそのバランス感覚が生み出しているのである(だからこの盤もただサイケな作品ではなく、ビートリーな美しさと、サイケデリックの面白さ、そしてアーシーな良さがバランスよく織り込まれており、故に時代が変わっても廃れずに盤が残っているのである)。

さて、『昨日よりも若く』の重要なポイントとしてカントリーテイストのA4「タイム・ビトウィーン」とB4「ザ・ガール・ウィズ・ノー・ネーム」が収録されていることを挙げておかねばなるまい。
両曲ともベースのクリス・ヒルマンが作曲した曲だが、この2曲、後にバーズに正式メンバーとして加入するクラレンス・ホワイトがセッションマンとして参加しているのである。

そう、カントリーロック期のバーズを支えた名ギタリストであるクラレンス・ホワイトが初めてバーズの歴史に登場するのがこのアルバムなのである。

このアルバムの後、バーズはマッギンと他のメンバーの軋轢によって徐々に崩壊していき、その姿をビートリーなアメリカンロックバンドからカントリーロックの大御所へと変化させていく。

なぜ彼らはその姿を変えていったのか、そしてバーズとしての終焉とその後の彼らが残したものについてはまた次回のお話。

んじゃ、また次回!