永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(144)

2008年08月29日 | Weblog
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【絵合(えあわせ)の巻】  その(1)

 源氏    (内大臣、大殿)  31歳
 斎宮女御  (前斎宮、梅壺の御方、宮、六條御息所の御娘) 22歳
 朱雀院   (母違いの源氏の兄君、冷泉帝に譲位)33歳~34歳
 冷泉帝   (藤壺と源氏の密事の御子、本人は知らない)13歳
 弘徴殿女御 (権中納言の姫君、先に入内) 13歳
 
(この巻の絵合わせは、960年をモデルにしたのでは?と言われています)

 前斎宮のご入内の事を、藤壺の中宮が熱心に催促されます。源氏は朱雀院がお聞きになってはとご遠慮されて、結局二條の院には前斎宮をお連れしませんでした。けれども親代わりの一般のご用意をされます。

「院はいと口惜しく思し召せど、人わろければ、御消息など絶えにたるを、その日になりて、……心ことに整へさせ給へり。大臣見給ひもせむにとかねてよりや思し設けけむ、いとわざとがましかめり」
――朱雀院は前斎宮を御自分のほうに得られないことを、口惜しく思っておられますが、人聞きが悪いので、お文などもご遠慮されておりましたが、ご入内(ごじゅだい)のその日になって(素晴らしいご装束なども、御櫛の箱、うちみだりの箱、香壺の箱ども、世に二つと無いものばかり、また、幾種類もの御薫物、薫衣香(くのえこう)など、心を込めてお整えなさいます。これは源氏もご覧になろうからと、予定されてか、実にことさらめいたご様子でした――

 丁度源氏も来合わせて居られるときでしたので、女別当がご覧にいれます。櫛の箱の片端に、朱雀院の御文、

「わかれぢに添へしをぐしをかごとにてはるけき中と神やいさめし」
――伊勢下向の際、再び帰るなと別れの小櫛を差し上げましたが、あれを口実にして、あなたと私との間はご縁のないものと神はお定めになったのでしょうか――

 源氏は、御自分の無理な恋に突き進むご性分から、身につまされて、朱雀院に申し訳なく思うのでした。伊勢に下る時の斎宮を、朱雀院が密かに愛しておられたことを知りながら、どうしてこのような無謀なことをして、院をお苦しませ申すのか。かつての退居のときはお恨み申したこともあるものの、また懐かしく、情け深いご気性の院であられるものよ、と思い乱れてご覧になっておられます。

◆伊勢の斎宮に下るとき、再び帰るな=在世期間中、帝の代理として伊勢に仕えるので、帝の在世が長からんことを願って、こう言う。

◆写真:打乱筥(うちみだりのはこ)=木製で作られた理髪具を入れる筥。蓋裏は蒔絵、内側は錦を貼る。風俗博物館より


源氏物語を読んできて(源氏物語絵巻・紙作り・2)

2008年08月29日 | Weblog
源氏物語絵巻・紙作り(2)

 復元プロジェクトの模写に際しても、全く同じく良質の紙を見つけることから始まった。
研究グループが、初めてハイビジョン顕微鏡カメラでとらえた、剥がれた絵の具の隙間から、平安時代の紙の繊維が見えた。900年前のものとは思えない、艶やかな輝きを保っている。(前述)
 
 繊維の太さや形などから、紙の原料は「楮(こうぞ)」と考えられた。

 楮はクワ科の落葉低木で、繊維作物として各地で栽培されている。この木の樹皮が和紙の原料となる。

 復元模写の紙作りを任されたのは、京都の岡墨光堂社長・岡岩太郎氏で、紙の材質について詳しい方である。

 現在、われわれの周りにあふれている紙は、繊維加工の工程で化学薬品を使ってつくられているものが多く、900年もの年月に絶えることはできない。岡氏の研究室で、
「国宝・源氏物語絵巻」の紙の質に近づける研究が進められた。

◆写真 楮(こうぞ)の木
◆参考 NHK出版

源氏物語を読んできて(絵巻の詞書き)

2008年08月29日 | Weblog
◆写真 コンピューター・グラフィックで復元された「源氏物語絵巻」の詞書き。

 さまざまな意匠を凝らした料紙が用いられている。料紙の装飾は一枚一枚異なり、それ自体が芸術品といえる。(料紙=紙に装飾を加えたもの。)

◆参考 NHK出版