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【澪標(みおつくし】の巻 その(18)
源氏は、
「かうかうの事をなむ思う給へわづらふに、……」
――このような次第で、思案に余っております。(故御息所には、私の好色心(すきごころ)にまかせて、よしない浮き名を流してしまい、つれない男と思われたまま逝かれてしましました。けれども亡くなられる間際に、斎宮の御事を頼まれましたのは、私を一番の依頼者とさすがに見抜いてくださってのことと、何とか償いもしたいのです。今上帝(冷泉帝)は、まだ幼なさの残っているお年頃ですから、少しはものの分別のつく年上の女御がお側においでになるのは、良いことだと…)――
藤壺も同じように、
「……かの御遺言をかこちて知らず顔に参らせ奉り給へかし。」
――(院へは畏れ多いことではございますが)御息所の御遺言ですと、気づかぬ顔で前斎宮を入内おさせ申すのが良いでしょう――
源氏は、朱雀院のお気持ちはご存じ無かった風にして、前斎宮を二條院にお迎えし、冷泉院への入内をお考えです。
冷泉院への入内には、兵部卿宮(藤壺の御兄)も中の君を入内させようと大騒ぎしてお世話しておられますが、年齢も権中納言の御娘の弘徴殿女御と変わらぬ年齢の十二歳ですので、雛遊びのようだと源氏はお思いで、この後はぬかりなく冷泉帝の補佐として政はもちろんのこと、日常の細かなことまでも、お心遣いをされます。藤壺は源氏と御兄の間にあって、お心が痛むのでしたが。
二條院では紫の上が喜んで前斎宮をお迎えします。
藤壺はこの頃、どことなくご病気がちで、参内されても冷泉帝のお側に居られることが難しいので、是非ともしっかりした年上のお側役が必要なのでした。
◆前斎宮を二條院へお迎えし=源氏の養女として迎えるということ。
◆朱雀院と前斎宮はいとこにあたる。この時代、近親結婚がとても多い。
◆年上のお側役=年上の女御・妃
【澪標(みおつくし】の巻 終わり。
ではまた。
【澪標(みおつくし】の巻 その(18)
源氏は、
「かうかうの事をなむ思う給へわづらふに、……」
――このような次第で、思案に余っております。(故御息所には、私の好色心(すきごころ)にまかせて、よしない浮き名を流してしまい、つれない男と思われたまま逝かれてしましました。けれども亡くなられる間際に、斎宮の御事を頼まれましたのは、私を一番の依頼者とさすがに見抜いてくださってのことと、何とか償いもしたいのです。今上帝(冷泉帝)は、まだ幼なさの残っているお年頃ですから、少しはものの分別のつく年上の女御がお側においでになるのは、良いことだと…)――
藤壺も同じように、
「……かの御遺言をかこちて知らず顔に参らせ奉り給へかし。」
――(院へは畏れ多いことではございますが)御息所の御遺言ですと、気づかぬ顔で前斎宮を入内おさせ申すのが良いでしょう――
源氏は、朱雀院のお気持ちはご存じ無かった風にして、前斎宮を二條院にお迎えし、冷泉院への入内をお考えです。
冷泉院への入内には、兵部卿宮(藤壺の御兄)も中の君を入内させようと大騒ぎしてお世話しておられますが、年齢も権中納言の御娘の弘徴殿女御と変わらぬ年齢の十二歳ですので、雛遊びのようだと源氏はお思いで、この後はぬかりなく冷泉帝の補佐として政はもちろんのこと、日常の細かなことまでも、お心遣いをされます。藤壺は源氏と御兄の間にあって、お心が痛むのでしたが。
二條院では紫の上が喜んで前斎宮をお迎えします。
藤壺はこの頃、どことなくご病気がちで、参内されても冷泉帝のお側に居られることが難しいので、是非ともしっかりした年上のお側役が必要なのでした。
◆前斎宮を二條院へお迎えし=源氏の養女として迎えるということ。
◆朱雀院と前斎宮はいとこにあたる。この時代、近親結婚がとても多い。
◆年上のお側役=年上の女御・妃
【澪標(みおつくし】の巻 終わり。
ではまた。