落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ツンデレ乞食VSヘタレ王子

2008年07月22日 | movie
『後悔なんてしない』

孤児院を出てソウルの工場で働きながら予備校に通い始めたスミン(イ・ヨンフン)は、ある夜、運転代行のアルバイトで裕福な御曹子ジェミン(イ・ハン)に出会う。ジェミンはひと目でスミンに惹かれるが、堅く心を閉ざしたスミンはジェミンの前から姿を消す。諦めきれないジェミンの熱愛にスミンが折れる形でついにふたりは結ばれるのだが、ジェミンには挙式間近な婚約者がいた。

孤児と御曹子、つまり王子と乞食。なぜかぶたれ放題ぶたれまくる王子と、純朴な子犬キャラに見えて逆ギレしたらめちゃコワイ乞食。
ぶっちゃけぐり、この映画全然期待もなんにもしてませんでした。設定が“王子と乞食”だもん。どーせまた腐女子ターゲットな激甘ボーイズラブ映画でしょ〜韓流だしい〜とか思ってました。
すいません。
まことに、申し訳ありません。
全然違かった。おもしろかったよ。かなり。
観ようかどうしようか考え中のそこのあなた、買いですこれは。とりあえず話のネタにはなります。

もうねえ、激甘どころじゃないのよ。いやむしろ激辛やね。
とりあえずストーリーが暴力的なの。いちいち何かっちゅーと「え?」「はっ??」「なんでっ???」な、常識的には思いつかないような超イレギュラーなストーリー展開なの。これを意外性ととるか見当違いととるかはビミョーなところだけど、ぐりはおもしろいと思った。
たとえばスミンは最初からクローゼット・ゲイという設定なんだけど、序盤、代行で送っていったジェミンに色目をつかわれてあっさり拒絶する。なんで?背が高くてハンサムでみるからにお金持ちそーなジェミンになら、女性だったら声をかけられて悪い気はしない。相手を探すのにも不自由なゲイならなおのことでは?なーんて思うのはアサハカなんだよね。たぶん。
でもこんなのは序の口で、その後スミンとジェミンが再会と別れを繰り返すたび、観客が想像するのとはまったく違う方向に物語はどんどん加速していって、最後にはもうさっぱりついていけないところまでいってしまう。これがまた確信犯なんだよね。ついてこれるもんならついて来てみろ!的な挑発なんだろうと思う。これぞ激愛っす。負けました。堪忍してください。くはー。
ってかぐり、最後の方は笑い堪えるので必死でした。隣の席の人、ゴメンナサイ。けどあの畳みかけっぷりはあんまりですよ。笑うしかないよ。

主演のイ・ヨンフンとイ・ハンの熱演にもビビる。
イ・ヨンフンはアレですねー。エッロい顔ですよねこの人(爆)。色白タレ目で唇ぽっちゃり、でもって小柄でマッチョ。ヤバい。イ・ハンはまったく逆のタイプで、スラッと長身・小顔でスッキリした顔だち、見た目はゲイにモテそうなタイプではない。
このふたりがものすごいタイミングでぽろっと泣いたり、白目真っ赤に血走らせてフルフル黙って怒ってたり、完璧に役の感情になりきってゲイを演じてる。あまりにもディープに演じちゃってるから、話がワケわからんくなってても文句のいいようがない。
ただ熱演させるにもシナリオに完成度がなければ無理な話で、このシナリオがまたよーできとりますわー。台詞が少ないんだよね。主役ふたりはほとんど喋らない。状況説明は脇役が専門で、主役はじいっと雰囲気出してるだけ。こういう“引き算”的なシナリオって韓国映画だからできるんだろーなー。邦画とかハリウッド映画じゃちょっと難しい。
ひとつだけ注釈をつけるとするなら、儒教思想に基づく厳格な家父長制に支配された韓国社会における、帰る家を持たないスミンと跡継ぎとしての義務を背負うジェミンの立場の対比を認識できないと、もしかすると物語の世界観にちょっと入り込みにくいやも。

ラブシーンはお約束の如く激しいです。もうこれは今となっちゃー韓国映画の専売特許みたいなもんなんで、ぐり的には好きも嫌いもないです。やりたければやりたいだけやっちゃってくれて構いません。ええ。
あとこの映画たぶんDV撮影なんだよね?思いっきり画面飛んでたりツブレてたり圧縮ノイズかかってたり、あまりに画質悪くて何がどーなってんのかわからん箇所もちょこちょこあり。正直いってこんな大画面で上映するのには相当無理あると思う。せいぜい新宿武蔵野館レベルのプチスクリーンにしとけばよかったのに。
それと1ヶ所、前半と後半にまったく同じフッテージが1カットだけ出て来たけど、アレはなんか意味あんの?ぐりはわからんかったっす。わかった人いたらおせーて。
いやしかしキョーレツな映画でした。ビックリしました。ハイ。