落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

どこ行くねん

2008年07月14日 | diary
開催中の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭について思ったことつれづれ。

*今年は例年サブ会場だった東京ウィメンズプラザに代って新宿バルト9で前半3日間を開催。このシネコン、とことん映画祭には向いてない。
まず上層階にあるので現地に着いてから会場にアクセスするまで時間がかかりすぎる。エレベーターは常に激混みなうえ、9階で下ろされてから上映館の13階までまたエスカレーターに乗らなくてはならない。映画祭では観客は1日何本も連続して出品作を観る。もっと気楽に出入りできる環境でなくては不便である。
このシネコンにはロビーなど館外に座って休めるスペースがない。終映後、ロビーで映画館スタッフが大声で「立ち止まらずに退場してください!」などとヒステリックに連呼するのだが(しかしその場にいるのはほとんど外国人、来日ゲストも含む)、映画祭に来る観客はその場所でしか出会えない人々が多く、上映作品も観るだけでなく議論してナンボな内容のものばかりである。20〜30分後には次の上映も始まるし、退場してもどこへ行くあても時間もない。KYなんて言葉はここのスペースでは通用しない。
休めるスペースなら10階にカフェがあるじゃんかといわれるかもしれないが、ここは料金が異様に高く(カフェラテ¥450〜)席数も限られている。8階のレストランフロアにもちょっと入って一休みというレベルの店はない。上映の合間にパパッと食事と思っても、9階の不味い売店に並ぶかはるばるエレベーターに乗って地上に出なくてはならない。戻るのにもエレベーターに並ぶ。うんざり。ぐりはこれを見越して軽食と飲料水を持参したが、この映画館自体来たことない人にはこういうことはできないし、持ってきたものを食べる場所は自分の座席以外になく、開場して上映が始まるまでのほんの数分間という短時間しかない。祭りじゃないなコレ。
映画を鑑賞する設備としては、冷房ガンガンで真冬のように寒いうえに硬くて座りにくいパイプ椅子というスパイラルよりはマシだけど、映画祭の意義はそこだけじゃないからねえ。
この新宿バルト9とゆーシネコン、ググると酷評悪評がボロボロとヒットしまくるんだけど、標的となっているのは主に発券処理能力。確かにものすごく遅い。酷いときは1時間待ちなんてこともあるらしい。よそのシネコンと比べても発券カウンターの数は多いくらいなので、なにゆえこれほどとろいのかはまったくもって謎です。
ここでこの映画祭をやる根拠はひとえに二丁目に近いという立地だけのような気がするけど、来年以降は歌舞伎町にも再開発でシネコンができるらしいので、どーせならそっちでも試してみては。とりあえずバルト9はもうナシでお願いしますよ。

*上映中くらいスタッフに会場にいてほしい。
昨日『彷徨う花たち』の上映も観たのだが、3部構成のうち1部のラスト〜2部の大半で字幕が出ないというトラブルがあった。
2部が始まってすぐに会場を出てスタッフを探したのだが、13階ロビーには映画祭スタッフどころか映画館スタッフもセキュリティも、人っ子ひとりいやしねえ。結局11階まで探しに行った。いったいどーなってんだ?これが字幕トラブルだからまだよかったようなものの、暴力沙汰や火災なんかが起きたらどう対応するつもりなんだか。
字幕にしても毎年のことなのでいいかげん認識不足は解消してほしい。映画祭スタッフは「字幕用に事前に送られてきた映像と、上映用に送られてきた映像とで編集が違っていた」と説明していたが、未完成の作品を出品する場合はこういう改編はつきものとしてリスクヘッジすべきだろう。国際映画祭なのに英語字幕が付かないのもなんだかな。17回も続いてて映画業界から独立した映画祭としては老舗の領域にさしかかろうというのに、こういう最低限の部分すらさっぱりこなれて来ないのはちょっと問題では。
今回は払戻しもしくはスパイラルでのプログラムへの振替えという措置になったが、日程の都合をつけて貴重な機会を楽しみに来場した観客に対しても、出品者に対しても失礼すぎる。この払戻し・振替えに関して会場で口頭での告知はあったが、HPではまだ告知がない。会場には聴覚障碍をもつ観客や外国人も当然いたのでこれは不親切だろう。文書での告知もさっさとやるべき。
『彷徨う花たち』については次回上映の日に別のプログラムのチケットをとってあるので、その日に観れたらレビューします。

*今回は今までのところ9本観たが、コメディからシリアスなドキュメンタリーまで一見バラエティに見える出品作にもはっきりとした偏りがある。
一言でいえば地味。選考基準が真面目過ぎるのか、それとも会場の問題なのか(場所によっては上映内容が限定される場合がある)、毎年「意外と地味」な印象の映画祭になっている。派手なのは初日のオープニングセレモニーと同日の『後悔なんてしない』の韓流スターの来日のみ(ぐりは行ってない)。その他には目玉らしき作品もイベントも見当たらない。
せっかくマイノリティが集まる主張の場なのに、結局何をどうしたいのかがイマイチすっきりしない雰囲気。いつからかスパイラルでパーティが行われなくなってから、年々地味になってってるよーな気がする。それとも前半の会場がふつうのシネコンだからゲイゲイしい空気を抑えておとなしく偽装しているのか?
別に会場で酒飲ませろとか、ドラアグショーが観たいとかいうつもりはないけど、もっとなんかないのかねえ〜。たとえば今回は世相を反映してか同性婚やパートナーシップ、ゲイカップルの子育てなど家族関係にまつわるモチーフを扱った出品作が目立ってるから、それをテーマにしたシンポジウムなんかもあってもいいと思うんだけど。セクシュアル・マイノリティを支えるNPOだっていくつもあるんだし、うまく連携できないものか。
今年は特に毎夏催されていた東京プライドが中止になってしまって貴重な機会が失われている。アジア最大の同性愛映画祭としての自覚をしっかりもって、もっと明確なスタイルを主張するイベントづくりを心がけてほしい。


新宿バルト9、13階の誰も使ってないパウダールームにて。