落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

白馬に乗ったブラピ

2008年07月13日 | movie
『シェルター』

海辺の田舎町サンペドロのダイナーで働くザック(Trevor Wright)は、サーフィンとアートを愛する優しい少年。シングルマザーの姉ジーナ(Tina Holmes)と5歳の甥のコーディ(Jackson Wurth)、怪我で働けない父(Don Margolin)の面倒を見るために一旦進学を諦めたが、親友ゲイブ(Ross Thomas)の兄で小説家のショーン(Brad Rowe)に再会したことから、恋に将来に心が揺れ始める。

青少年の自立のお話。青春映画ですな。
題材としてはものすごくオーソドックスだし全体としてかなりおとなしめな作品にまとまってはいるけど、シナリオがとにかく丁寧に練りこまれていて観ていてまったく飽きるということがない。ザックの心の迷い、彼の迷いに翻弄される家族やガールフレンドなど周囲の人たちの迷いがそれぞれしっかり、それもしつこくならない程度に綺麗に描かれている。
そこにサーフィンのダイナミックな映像と、ザックの描くグラフィティアートの映像が効果的に挿入される。ヴィジュアル的にも非常にバランスのとれた映画ともいえる。そういうところもホントに知的というか、頭の良さを感じさせる作品だと思う。

ただまあハリウッド映画なのでやっぱり設定にご都合主義的なところはいろいろある。女性陣がやたらにものわかりが良過ぎてなにかっちゅーと「前から知ってたわ」なんていってヤな感じだし、大体ショーンの設定がモロ“白馬に乗った王子様”状態なのもねえ。ショーン役の俳優さんはBrad Roweとゆーのだが、顔が笑っちゃうくらいブラピ(@双子出産おめでとう)そっくり。背は高くなくて年齢もブラロ(笑)の方が7歳若いけど、この顔でこの名前、狙ってるにしてもサムいなあ〜。

そういううんちくは置いといて、ただ普通に観るぶんには充分楽しい、甘酸っぱくて爽やかな娯楽映画。映像もステキだし、ぐりは結構好きですよ。

クマと鬼ババア

2008年07月13日 | movie
『チュエカタウン』

2005年に同性婚が合法化されたスペイン・マドリードのゲイタウン、チュエカ。
レオ(ペポン・ニエト)とレイ(カルロス・フエンテス)はクマ系のゲイカップル。住んでいたアパートの大家が亡くなり、身寄りのない彼女の遺産として建物を相続したレイは母親のアントニア(コンチャ・ベラスコ)を呼んで同居することにしたのだが、息子に“玉の輿”を期待していた彼女はしがない自動車教官のレオが気に入らず、何かというとふたりのジャマばかりする。
そんな折り、再開発がブームのチュエカでは不動産を所有する老女が殺害される事件が連続していた。犯人は不動産屋のビクトル(パブロ・プジョル)。やがて彼の魔手はレイたちにも迫り・・・。

もー、サ・イ・コー!!おもしろかったあ。
今までに観たゲイが主役の娯楽映画としてはベスト3に入る大傑作です。
まずとりあえずキャラクターが全員おもしろすぎ。レオは良い人なんだけどすぐ頭に血が上っちゃう単細胞。レイは絵に描いたように天真爛漫とした底抜けのお人好し。アントニアは超自己中で劇薬並みの毒舌ババア。ビクトルはサイコなシリアルキラーを気取ってるけど実はかなりマヌケ。女刑事ミラ(ロサ・マリア・サルダ)は頭はきれるけど虫やら人ごみやら何やらいろんな“恐怖症”にとりつかれてる。
こんなムチャクチャなキャラがわんさと出て来て、画面中をグッチャグッチャにかきまわしまくる。台詞のひとことひとことすらいちいちおかしくて、会話だけでも大爆笑の連続です。

しかしそれにしても、ゲイタウンとゲイのカップルという設定が、ここまでコメディ映画の二大要素としてしっくり来てる映画ってひさしぶりに観たかも。
雰囲気としてはペドロ・アルモドバルの映画にも似てる。キョーレツなママキャラなんかはもろに共通してる。
登場人物が全員で力いっぱいボケまくるノリって、スペイン映画独特な気がする。一見するとこんなんでどーやって話収拾するんやろ?なんて不安になっちゃうんだけど、意外にちゃんと収拾するからまたおかしい。
この映画は機会があればまた観たい。てゆーか一般公開してもウケると思うんだけど・・・無理かなあ?


愛の神アッラー

2008年07月13日 | movie
『愛のジハード』

コーランによって同性愛が禁じられているとされるイスラム教。だがイスラム圏にも同性愛者はもちろん存在する(『サラーム・パックス バグダッドからの日記』 サラーム・パックス著)。
信仰が政治経済から地域社会や家族のあり方など生活すべてに深く浸透したイスラム社会で暮す同性愛者たちは、周囲の差別や偏見に加え、神を裏切っているという内なる罪悪感にも苛まれる。そんな自己葛藤=ジハード(元の意味は「聖戦」ではないそうだ)を闘い続ける世界12ヶ国のムスリム同性愛者を6年に渡って取材したドキュメンタリー。

ぐりは宗教にはまったく詳しくないんだけど、コーランで「同性愛を禁じている」とされるソドムとゴモラのくだりって、旧約聖書に書かれてる内容とほぼ同じなんだよね。ロトもコーランにも出てくるらしー。
ただキリスト教における聖書もそうなんだけど、もともとの原著が書かれたのが古語だったりして、現代にいたるまでに翻訳もかなり入ってるし、解釈も何通りもある。キリスト教でもイスラム教でも、聖典にはこう書いてある、こういう意味だ、って決めつけはよくないと教えている。つまり教義そのものに議論の余地が保証されている。この本は絶対じゃないですよ、絶対っていっちゃダメですよ、ってのが基本ルールになっている。それって究極的にはすごく自由なことなんじゃないだろうか。

日本には宗教や法律で「同性愛者を差別せよ」とはっきり謳ったルールは基本的にはない。でも同性愛者を含むセクシュアル・マイノリティへの差別や偏見は厳然として存在する。要は理由がなくても差別や偏見が許される社会なのだ。暴力的な差別がないからいいなんて単純なものじゃない。
それを思えば、信仰を媒介にして差別を議論することの出来るムスリムの社会の方が、あるいは日本よりもオープンだといえるのかもしれない。
なんてのは極論なんだろーけど。