落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

愛の神アッラー

2008年07月13日 | movie
『愛のジハード』

コーランによって同性愛が禁じられているとされるイスラム教。だがイスラム圏にも同性愛者はもちろん存在する(『サラーム・パックス バグダッドからの日記』 サラーム・パックス著)。
信仰が政治経済から地域社会や家族のあり方など生活すべてに深く浸透したイスラム社会で暮す同性愛者たちは、周囲の差別や偏見に加え、神を裏切っているという内なる罪悪感にも苛まれる。そんな自己葛藤=ジハード(元の意味は「聖戦」ではないそうだ)を闘い続ける世界12ヶ国のムスリム同性愛者を6年に渡って取材したドキュメンタリー。

ぐりは宗教にはまったく詳しくないんだけど、コーランで「同性愛を禁じている」とされるソドムとゴモラのくだりって、旧約聖書に書かれてる内容とほぼ同じなんだよね。ロトもコーランにも出てくるらしー。
ただキリスト教における聖書もそうなんだけど、もともとの原著が書かれたのが古語だったりして、現代にいたるまでに翻訳もかなり入ってるし、解釈も何通りもある。キリスト教でもイスラム教でも、聖典にはこう書いてある、こういう意味だ、って決めつけはよくないと教えている。つまり教義そのものに議論の余地が保証されている。この本は絶対じゃないですよ、絶対っていっちゃダメですよ、ってのが基本ルールになっている。それって究極的にはすごく自由なことなんじゃないだろうか。

日本には宗教や法律で「同性愛者を差別せよ」とはっきり謳ったルールは基本的にはない。でも同性愛者を含むセクシュアル・マイノリティへの差別や偏見は厳然として存在する。要は理由がなくても差別や偏見が許される社会なのだ。暴力的な差別がないからいいなんて単純なものじゃない。
それを思えば、信仰を媒介にして差別を議論することの出来るムスリムの社会の方が、あるいは日本よりもオープンだといえるのかもしれない。
なんてのは極論なんだろーけど。

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