ドキュメント 岩手競馬廃止問題

毎日新聞に興味深い話が掲載されている。（記事はいずれもＹａｈｏｏ地方公営ギャンブル経営より）

馬蹄の消える日：岩手競馬廃止へ

3月17日13時2分配信 毎日新聞

１５日の県議会で県競馬組合への融資案が否決され、管理者の増田寛也知事が廃止方針を打ち出した岩手競馬。否決の背景とその余波を探った。 　１５日午後１０時５０分過ぎ。１３３の傍聴席を埋めた競馬関係者らがかたずをのんで、賛否ごとに二つに分かれた投票用紙の山を見つめていた。競馬組合への２９７億円の融資を懸けた記名投票が行われた県議会本会議場。賛否同数の結果、伊藤勢至議長が「否決と裁決」と告げると、傍聴席にはため息が広がった。 　午前１０時過ぎに始まり１２時間以上をかけたマラソン審議。その大半は休憩中に会派控室で行われる会派内意見統一や他会派の説得という水面下の工作に費やされた。ある民主県議は「あっちが自主投票とか反対でまとまったとか、状況がめまぐるしく変わり最後まで読めなかった」と話す。 　「県民負担が最小になる」と融資案を説明した県側に対し、反対県議は「知事の管理者責任を明確にすべきだ」「金融機関の貸し手責任を問わないのか」と迫った。だが明確な反対派は限られていた。多くは「融資は認めがたいが、競馬はつぶしたくない」。ことあるごとに「提案したのが最も県民負担の少ないベストの案」と繰り返した増田知事だったが、反対票を投じた議員の中には「否決後、融資額を減らすなどした議案を再提出」のシナリオへの期待がにじんだ。知事に比較的近い政和・社民クラブを中心に賛成派は「知事は本気だ」と打ち消しに走ったが、期待感は最後まで消えなかった。否決となった約１時間半後、増田知事は会見で落ち着いた表情で「既定路線」の廃止を打ち出した。 　反対票を投じた県議が「議会は融資ノーを決めたが、競馬廃止を言ったのは管理者である知事。だいたい選挙前に冷静な判断なんてできない」と不満を漏らせば、賛成県議は「反対派の見通しの甘さが廃止を招いた」と批判する。深い溝と戸惑いを残して競馬廃止の第一歩が刻まれた。【林哲平】

まだ続編があるみたい。

3月18日11時2分配信 毎日新聞

１６日午前１１時５０分、奥州市の各課職員はテレビ画面に見入った。相原正明市長が臨時のテレビ訓示を行うのだ。「仮に廃止となれば市の財政は相当厳しくなるが、財政再建団体になることはありえない」。相原市長が強調しなければならない裏には、市財政と経済への影響の大きさがある。

　競馬組合は「廃止した場合、県と盛岡市、奥州市の構成３団体は約３７２億円の債務を負担しなければならない」と説明してきた。仮に廃止となり資産売却が全く進まず利益配分割合通りに奥州市が負担するという最悪の想定をすると奥州市の負担は９３億円。奥州市は負担に耐えられるのか。

　菊地隆一財政課長は「まず４４億～４５億円は基金の取り崩しか、基金から一般会計に貸し出す繰り替え運用でしのげる」と説明する。残り約５０億円はどうか。「５０億円の返済が一気に来る可能性はゼロではないがかなり低い。その場合は優先順位を考慮し、予算措置せざるを得ない事業を最優先し、次に新市建設計画に掲げた事業、最後がその他の事業となる」と話す。具体的には道路の補修、下水道建設、学校の補修などが後回しになることがありうるという。

　一方、雇用への影響も大きい。競馬従事関係者のうち水沢競馬場分は６７４人（０６年３月現在）。十数人がすでに水沢公共職業安定所に訪れている。最悪の事態に備え同職安も調査に着手したが、仮に廃止された場合（１）雇用関係が複雑（２）離職時期がバラバラ（３）雇用保険加入者が少ない（４）行政の責任が免れない――という特殊ケースとなると指摘する。市企業立地推進室の担当者は「もし廃止となったら、離職者への低利の生活安定資金の貸し付け、市営住宅のあっせん、就職あっせんの手伝いなどに力を尽くさなければならないだろう」と硬い表情で話した。

　打撃の大きさに脅える１３万奥州市民の多くは存続への明かりがともることを祈っている。【石川宏】