Reading:道路舗装各社 入札前に「談合しない」誓約書 NHKニュース
1月20日 17時41分
東日本大震災で被災した東北地方の高速道路の復旧工事を巡り、談合が繰り返されていた疑いがあるとして、東京地検特捜部と公正取引委員会は、独占禁止法違反の疑いで、工事を受注した道路舗装各社を捜索しました。関係者によりますと、各社は入札前に「談合はしない」とする誓約書を発注者側に提出していたということで、特捜部が実態解明を進めています。
捜索を受けたのは、大手道路舗装会社の前田道路と日本道路、それに大成ロテックや東亜道路工業で、関係者によりますと、道路舗装各社は、東日本高速道路東北支社が発注し、震災後の平成23年8月から翌月にかけて入札が行われた、東北自動車道など合わせて12件の復旧舗装工事で談合を繰り返していた疑いがあるということです。
関係者によりますと、東日本高速道路は、平成23年7月に工事の入札を公告しましたが、その後、「業者が談合している」という匿名の情報が寄せられたため、入札に参加する予定だった道路舗装各社から事実関係を確認したということです。各社はいずれも談合を否定し、入札前に「談合はしない」とする誓約書を提出していたということです。
関係者によりますと、実際には前田道路や日本道路など大手4社の東北支店の担当者が調整役となって談合が行われた疑いがあり、工事はほぼ事前の割りふりどおりの形で12の会社がそれぞれ1件ずつ落札していたということです。
特捜部は、国の巨額の復興予算を財源にした震災の復旧工事をきっかけに談合を本格化させていたとみて実態解明を進めるものとみられます。
主要な会社のほとんどが関わった疑い
談合の疑いがある12件の復旧舗装工事の入札に参加していたのは、業界最大手のNIPPOやそれに次ぐ前田道路のほか、スーパーゼネコン系列の日本道路、鹿島道路、大林道路、大成ロテック、それに東亜道路工業や世紀東急工業などで、主要な道路舗装会社のほとんどが談合に関わっていた疑いがあるということです。
「赤字出してまで工事やれない」
東北地方の高速道路の舗装工事の落札率は震災後に急激に上昇しています。東日本高速道路東北支社が震災前の平成22年度に発注した高速道路の舗装工事は合わせて13件で、予定価格に対する平均の落札率は80.9%でした。しかし、震災後の平成23年8月から翌月にかけて入札が行われた12件の舗装復旧工事では、平均の落札率が94.7%と、震災前より10ポイント以上も高くなっていました。
NHKの取材に対し入札に参加した道路舗装会社の関係者は、「震災後はアスファルトなどの資材費や作業員の人件費がそれぞれ20%から30%値上がりしたほか、ダンプカーなどの機材費も1.5倍ほどに高騰していたのである程度落札率を上げなければ赤字になり仕事が成り立たないという認識があった」と説明しました。そのうえで、「一刻も早く復旧しなければならない状況だったが、業者の間には赤字を出してまではやれないという認識があった。ある程度交通整理をしなければ事態が収まらなかったのではないか」と話していました。
仮設住宅の住民から残念の声
東日本大震災で被災した高速道路の復旧工事を巡る談合の疑いで道路舗装各社に強制捜査が行われたことについて、宮城県気仙沼市の仮設住宅に暮らす人たちからは、「残念だ」という声が聞かれました。
気仙沼市赤岩牧沢の仮設住宅で暮らす58歳の女性は、「残念だなと感じましたし、多くの被災者が同じ思いだと思います。予算には限りがあると思うので、落札価格をつり上げるのはよくないと思います」と話していました。また、77歳の男性は、「私たちの気付かないところで不正が常に行われているのではないかという印象を受けました。自分たちが得することだけを考え、国民一人一人のことを考えていないように思います」と話していました。
「談合正当化する空気の可能性」
独占禁止法に詳しい上智大学法科大学院の楠茂樹教授は、「工事の落札率が99%を超えるなど露骨に高いものがあり、談合があったのではないかという印象を受ける。中には1社だけ落札率が突出して高く、残りの業者が入札を辞退しているケースもあり、最初から落札業者を決めていたという印象だ」と話しています。そのうえで楠教授は、震災後に資材費や人件費が高騰したため、復旧工事などの受注を希望する業者が集まらず、入札が不調になるケースが相次いでいたことを指摘し、「入札不調で復旧工事が進まなくなれば結果として国民のためにならないという意識がどこかにあったのではないか。震災をきっかけに業者の間で談合を正当化するような空気が広がっていた可能性がある」と話しています。
過去の談合事件
道路舗装各社を巡っては、平成11年に名古屋市が発注した舗装工事を巡る談合事件でNIPPOや日本道路など合わせて61社が、平成16年には北海道岩見沢市が発注した舗装工事を巡る官製談合事件で三井住建道路や大成ロテックなど16社が、それぞれ公正取引委員会から課徴金の支払いを命じられました。
その後、道路舗装会社の系列のスーパーゼネコン各社は平成17年12月に談合との決別を宣言していましたが、特捜部や公正取引委員会は、震災後、国の復興予算を財源に復旧工事が集中して行われるなかで、各社が談合を再び本格化させていたとみています。
1月20日 17時41分
東日本大震災で被災した東北地方の高速道路の復旧工事を巡り、談合が繰り返されていた疑いがあるとして、東京地検特捜部と公正取引委員会は、独占禁止法違反の疑いで、工事を受注した道路舗装各社を捜索しました。関係者によりますと、各社は入札前に「談合はしない」とする誓約書を発注者側に提出していたということで、特捜部が実態解明を進めています。
捜索を受けたのは、大手道路舗装会社の前田道路と日本道路、それに大成ロテックや東亜道路工業で、関係者によりますと、道路舗装各社は、東日本高速道路東北支社が発注し、震災後の平成23年8月から翌月にかけて入札が行われた、東北自動車道など合わせて12件の復旧舗装工事で談合を繰り返していた疑いがあるということです。
関係者によりますと、東日本高速道路は、平成23年7月に工事の入札を公告しましたが、その後、「業者が談合している」という匿名の情報が寄せられたため、入札に参加する予定だった道路舗装各社から事実関係を確認したということです。各社はいずれも談合を否定し、入札前に「談合はしない」とする誓約書を提出していたということです。
関係者によりますと、実際には前田道路や日本道路など大手4社の東北支店の担当者が調整役となって談合が行われた疑いがあり、工事はほぼ事前の割りふりどおりの形で12の会社がそれぞれ1件ずつ落札していたということです。
特捜部は、国の巨額の復興予算を財源にした震災の復旧工事をきっかけに談合を本格化させていたとみて実態解明を進めるものとみられます。
主要な会社のほとんどが関わった疑い
談合の疑いがある12件の復旧舗装工事の入札に参加していたのは、業界最大手のNIPPOやそれに次ぐ前田道路のほか、スーパーゼネコン系列の日本道路、鹿島道路、大林道路、大成ロテック、それに東亜道路工業や世紀東急工業などで、主要な道路舗装会社のほとんどが談合に関わっていた疑いがあるということです。
「赤字出してまで工事やれない」
東北地方の高速道路の舗装工事の落札率は震災後に急激に上昇しています。東日本高速道路東北支社が震災前の平成22年度に発注した高速道路の舗装工事は合わせて13件で、予定価格に対する平均の落札率は80.9%でした。しかし、震災後の平成23年8月から翌月にかけて入札が行われた12件の舗装復旧工事では、平均の落札率が94.7%と、震災前より10ポイント以上も高くなっていました。
NHKの取材に対し入札に参加した道路舗装会社の関係者は、「震災後はアスファルトなどの資材費や作業員の人件費がそれぞれ20%から30%値上がりしたほか、ダンプカーなどの機材費も1.5倍ほどに高騰していたのである程度落札率を上げなければ赤字になり仕事が成り立たないという認識があった」と説明しました。そのうえで、「一刻も早く復旧しなければならない状況だったが、業者の間には赤字を出してまではやれないという認識があった。ある程度交通整理をしなければ事態が収まらなかったのではないか」と話していました。
仮設住宅の住民から残念の声
東日本大震災で被災した高速道路の復旧工事を巡る談合の疑いで道路舗装各社に強制捜査が行われたことについて、宮城県気仙沼市の仮設住宅に暮らす人たちからは、「残念だ」という声が聞かれました。
気仙沼市赤岩牧沢の仮設住宅で暮らす58歳の女性は、「残念だなと感じましたし、多くの被災者が同じ思いだと思います。予算には限りがあると思うので、落札価格をつり上げるのはよくないと思います」と話していました。また、77歳の男性は、「私たちの気付かないところで不正が常に行われているのではないかという印象を受けました。自分たちが得することだけを考え、国民一人一人のことを考えていないように思います」と話していました。
「談合正当化する空気の可能性」
独占禁止法に詳しい上智大学法科大学院の楠茂樹教授は、「工事の落札率が99%を超えるなど露骨に高いものがあり、談合があったのではないかという印象を受ける。中には1社だけ落札率が突出して高く、残りの業者が入札を辞退しているケースもあり、最初から落札業者を決めていたという印象だ」と話しています。そのうえで楠教授は、震災後に資材費や人件費が高騰したため、復旧工事などの受注を希望する業者が集まらず、入札が不調になるケースが相次いでいたことを指摘し、「入札不調で復旧工事が進まなくなれば結果として国民のためにならないという意識がどこかにあったのではないか。震災をきっかけに業者の間で談合を正当化するような空気が広がっていた可能性がある」と話しています。
過去の談合事件
道路舗装各社を巡っては、平成11年に名古屋市が発注した舗装工事を巡る談合事件でNIPPOや日本道路など合わせて61社が、平成16年には北海道岩見沢市が発注した舗装工事を巡る官製談合事件で三井住建道路や大成ロテックなど16社が、それぞれ公正取引委員会から課徴金の支払いを命じられました。
その後、道路舗装会社の系列のスーパーゼネコン各社は平成17年12月に談合との決別を宣言していましたが、特捜部や公正取引委員会は、震災後、国の復興予算を財源に復旧工事が集中して行われるなかで、各社が談合を再び本格化させていたとみています。