映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦

2007年08月19日 | 本(SF・ファンタジー)

「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦 角川書店

2007年 本屋大賞2位の作品。
超ユニークな登場人物たちと、彼と彼女のファンタスティックなラブストーリー。

ファンタスティック???
そのような言葉には何か違和感があるけれど、いってみればやはりそうとしか言いようがない、といいましょうか・・・。
古都京都が舞台ということもありそうですが、森見登美彦が織り成す不思議な感覚の世界です。
何か懐かしくて、あやしい。
たとえば、宮崎アニメの「千と千尋の神隠し」に出てくるお風呂屋さん。李白翁の3階建電車にはそんな雰囲気がある・・・。

ここに登場する大学生の「彼女」は、かわいくキュート。
しかし、時にとても大胆。
女の目から見ても、相当魅力的です。
しかも、とてつもなくお酒に強い!!

第一章では、とにかく飲み歩く。京の夜をひたすら飲み歩くお話。
それにしてもよく飲むねえ、といわれて彼女が返す言葉は、
「のんびり飲んでいたら醒めてしまいます。」
お~、頼もしい。
そんな彼女が最期にたどり着くのは李白翁の3階建電車。
一階は書斎。
二階が宴会場。
三階が銭湯で屋上は竹林があり池があるという代物です。
その2階の宴会場で、彼女は李白翁と飲み比べをします。
そのお酒が偽電気ブラン。
「口に含むたびに花が咲き、それはなんら余計な味を残さずにお腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。
それが実にかわいらしく、まるでお腹の中が花畑になっていくようなのです。
飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくるのです。」
こんな表現をされるお酒がほんとにあったらいいんですけどね・・・。
見事勝利した彼女は、かすかに夜明けの気配を感じる頃に、
「乙女の慎みとして、夜明け前には寝床に戻らねばなりません。」
と、一人静かに帰宅。
いや~、酒飲みとあるものはかくあるべし!

え、どこがラブストーリーかと?
実はこの彼女を見初め、ぜひ近づきたいと、ひそかに彼女を追い求める、彼女のクラブの先輩男子がおりまして・・・。
つまりは、この本は彼が彼女に想いを告げるまでの悶々としたストーリーでもあるのです。
それは、彼が友人に「外堀埋め過ぎだろ?いつまで埋める気だ。林檎の木を植えて、小屋でも立てて住むつもりか?」と言わしめるほど。
情けなくもじれったい彼ではありますが、そのアクションに感動するほどがんばったりもして、なかなかこれも楽しめる趣向でございます。

他に、古本市や学園祭を舞台にした話、すさまじい強力な風邪が巻きおこす話、どれも、楽しいストーリー。
このような本にめぐり合えるとは何たるしあわせ。
願わくば、また、同じときめきを我に。なむなむ。

満足度 ★★★★★

・・・・え~、夏のスペシャル、「怒涛の毎日更新」は本日で一応ストップです。
お疲れ様でしたっ



最新の画像もっと見る

コメントを投稿