映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「私たちの特別な一日 冠婚葬祭アンソロジー」

2024年03月01日 | 本(その他)

各々の人生の節目

 

 

* * * * * * * * * * * *

また会えたひと、もう会えないひと。
成人式 結婚式 葬式 祭礼
人生の節目に訪れる出会いと別れを書く
文庫オリジナル・アンソロジー

人生の節目に催される冠婚葬祭
――冠は成年として認められる成人式を、
婚は婚姻の誓約を結ぶ結婚式を、
葬は死者の霊を弔う葬式を、
祭は先祖の霊を祀る祭事を指します。
四つの行事は人生の始まりと終わり、そしてその先も縁を繋いでいきます。
現在の、あるいはこれからの私たちと冠婚葬祭をテーマに、
現代文芸で活躍する六人の作家があなたに贈る文庫オリジナル・アンソロジー。

* * * * * * * * * * * *

私のお気に入り、創元文芸文庫オリジナルのアンソロジーです。
テーマは、冠婚葬祭。

成人式や結婚式、お葬式など。
確かにこうした人生の節目にはその人個人個人のドラマがあるわけです。

 

冒頭「もうすぐ18歳」では、主人公・智佳が
もうすぐ18歳なのではなくて、36歳。
彼女は18歳の時に妊娠して東京に出てきて結婚、出産をしたのでした。
ところが18歳での出産ということが、
あたかもだらしないヤンキーママのような先入観をもたれてしまって、
人物関係や就職がうまくいかない。
唯一、夫の母親にだけは歓迎され、やさしくしてもらったのが救いではありますが。
そんな智佳がこの度、成人年齢が18歳なるというニュースを聞いて思うのです。
あの時、成人年齢が18歳であったなら、
自分も偏見の目で見られることもなかったのかな、と。
とは言え、今の智佳は良き家族と仕事に恵まれて
まずまずの幸福を得ているようです。
暖かで穏やかな日常を祝福したくなります。

 

さて、このように身の回りの日常の物語ばかりかと思いきや、
「二人という旅」では少し戸惑わされてしまいました。
舞台はおそらく、かなり未来の宇宙のどこかの星。
「家読み」のシガと、その助手のナガノが旅をしているのです。
お~っと、SFもアリだったのか!!
気を取り直して読んでいくと、思いのほか叙情的な世界が広がっていました。
男女の関係ではなく、同性愛とも少し違う。
けれど、「結婚」ということの本質を突くような作品。
ロマンティックです。

 

本巻の著者は、
飛鳥井千砂、寺地はるな、雪船えま、
嶋津輝、高山羽根子、町田そのこ(敬称略)。
私には初めての作家さんも多いのですが、出会えて良かったです。

 

「私たちの特別な一日 冠婚葬祭アンソロジー」創元文芸文庫

満足度★★★★☆