映画と本の『たんぽぽ館』

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「ガン病棟のピーターラビット」中島梓

2008年09月08日 | 本(エッセイ)
ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫)
中島 梓
ポプラ社

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「ガン病棟のピーターラビット」中島梓 ポプラ文庫
ポプラ文庫・・・、いつの間にかまた新しい文庫ですね。
文庫ファンにはうれしいですが、各社の新刊を並べるだけでも書店さんは大変だろうなあ・・・と思ったりします。

さて、問題のこの本。
「中島梓」は、私の生涯の愛読書「グイン・サーガ」著者、栗本薫さんの別名であります。
彼女が評論などを書くときに使うもう一つの名前。
それで、危うく見逃すところだったんですね。
先日ふと、書店で目についたのです。
「ガン病棟」・・・。
彼女がガンを患い、手術のため入院していたことは、
「グイン・サーガ」の後書きの中で読んでいたので知っていましたが、
これはその時の体験記なんですね。

ひどい黄疸が出て、病院へ行ったら即入院。
「グイン・サーガ」後書きの中では、なかなか気丈な書き方をしていましたが、
この本を読むとかなり大変な手術だったことがよく分かります。
ICUでのこと、その後の経過、病院での日常・・・等など。
入院しながらも原稿を書き続けていた、というあたりは、さすが・・・というしかありません。
とにかく、無事退院にこぎつけ、徐々に平常の生活に戻りつつある・・・と、
本文では一応そんな終わり方だったのですが・・・。

あとがきでまた驚かせられました。
その後ガンの転移が発見され、現在抗ガン剤治療を受けているというのです。
ちょっと、言葉を失います。
それにしても、ここまでオープンに書いてしまうとは。
なんて勇気のある方なのでしょう。
この時点で今年の6月26日。
今も、栗本氏(失礼、私の中では、やはり中島氏でなく、栗本氏なので)は
ガンと闘っているはず。

励ましなんて、おこがましいですが・・・。
私のようにこれまでファンレターの一通も書いたことがなくても、
毎巻欠かさずグインを買って、ハラハラ・ドキドキ一喜一憂しながら、
また次の巻を心待ちにしている、
そういうファンがすご~くたくさんいる、
ということを力の一つとしてもらいたいと切に思います。

栗本さんはストーリーテーラーとして、まさに天才だと思うのです。
100巻を超えるグインの物語は、ちっとも飽きることがない。
まもなく連載30年というこんな長さなのに、
ストーリーははじめの方を忘れてしまうなどということもなく、
ほとんど頭に残っている。
これはすごいことです。
なんだか、夕鶴のおつうみたいですね。
彼女は自分の身を削ってこの壮大な物語を書いているのではないでしょうか・・・。

満足度★★★★